- Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120041686
作品紹介・あらすじ
「どうか私だけの神様になって」ファインダーを通して見ていたのは誰の秘密なのか。デビュー10周年記念書き下ろし作品。
感想・レビュー・書評
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島本理生はひとりの人に伝わればいいって熱を感じる。だから好き。このままで。
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この作家さんの
不器用に生きる女の子
実際にいたら絶対友達になんかならない
けど
小説の中では凄い魅力的。 -
2022.1.19読了
3.5
最初は、黒江の不器用さや不用意な行動に違和感を感じていたけど、過去が明らかになり腑に落ちた。
漫画的展開が少々気になるところではあるけど、現実にありえないからこそ、安心して読めるのかも。人物描写が魅力的で飽きずに読み進められた。
ラストは様々なイベントがたたみかけるように。
それにしても、現実に搾取されてきた人達はこの本を読めるのでしょうか。 -
辛いこともあったけど、最後は幸せになれたね…と、いうストーリーではなかった。
最後まで、どうしてこんなに不幸ばかりが覆いかぶさるのかと…強姦、幼児性的虐待、新興宗教、精神障害と読んでいるのが辛くなるストーリーであった。
羽場先輩と別れ、賢治と付き合うことになったが、それは賢治の羽場先輩に対する対抗意識からで、そんな罠にはめられた黒江。そのために賢治の友人たちから強姦される。
不気味な写真が送られてきた日に強姦にあう。未遂に終わったものの、多感な思春期の少女にとっては忘れることのできない恐怖であった。それなのに…
信頼していた彼からの仕打ち。「なぜ?彼が…」、「なぜ?私だけが…」黒江の頭の中は整理しきれないほどの感情の波に押しつぶされてしまう。
そして、そのおぞましい体験から逃れるように、カメラマン・浦賀仁の住む東京に転がり込むが、唯一救われたと思ったことは、黒江が師と仰ぐカメラマンは、黒江の気持ちを理解し、接したことである。カメラマンという職業がらレンズを通して、被写体の心の内を読み取り、理解している彼だからこそ、黒江の心を読み取れたのであろうと理解した。
仁の家で住み込みで弟子として、いつかカメラマンとして独り立ちを夢見る黒江。本来であれば、それは身内の特に黒江の場合は母親であるはずなのに、どうして彼女の母親は、東京に来ることもなく、全く見ず知らずの他人に娘を預けることができるのか。それほど仕事が大事なのだろうか?と、「なぜ?」という言葉がつい口から飛び出してしまう。
下巻は、黒江が自分と自分以外の人間の間に感じている隔たりが見えた。過去の体験が無意識のうちに彼女を自分の殻に閉じ込めて、他人との隔たりを作っているのが、読んでいるだけで感じる。もし、自分だったらと、考えると確かに『こう思われているのではないか?』、『こう見られているのではないか?』と、黒江が殻に閉じこもるのも納得してしまう。
そんな黒江に追い討ちをかける出来事がある。それは母親が新興宗教にのめり込んでいたことであった。
一神教は、人間は神によって創られたので、神に対して絶対服従である。
宗教に入るということは、神への服従である。
人間は誰しもなんらかの悩みをかかえ、その悩みと多かれ少なかれ闘っていると思う。そんな心の悩みと日常とのバランスを古来から人間はキリスト教、イスラム教、仏教などの宗教を信仰することで埋めてきたのだと思う。そんな人間の心理をついて繁栄していく新興宗教。悩める人を宗教を信仰するという行為に酔わせ、陶酔させて、あたかも悩みが軽減したかのように思わせて依存させる。そして、その宗教に服従させる。懺悔しその罪を金銭に換える。私の中では、新興宗教はそんなイメージがある。
黒江の母親が、家族を捨てて身を投じたその信仰が、冷静な立場から見るとおかしいものであっても、悩みを抱えている立場からではそうではないのであろう。結局はさらに悩みを積み重ねてしまう行動へと導き、宗教による娘の幼児性的虐待、そして離婚、最終的には、娘をも巻き込んでしまう。
中学の時に黒江の自宅に送られてきた裸の自分の上にのる男性の写真の意味がわかった時の黒江の心中を思うと、私なら母を恨むような気がする。
最初から最後まで、暗く、辛い描写ばかりで、その心の描写は、丁寧であるがために読み手には重く感じる。
暗いけれど、読み応えのある心理小説で、丁寧な描写であるからこそもう一度読みたいと思えるものであった。
追伸: カバーは上下が同じで表紙が逆になっていて、好みである。 -
悪い方へ悪い方へ行く主人公黒江にイライラするけど、黒江の壮絶な過去に納得した
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手紙ってやっぱりいい。
後半はだいぶ予想外だった。
上巻よりちょっとだけ、黒江に対するイメージがましになった。
やっぱり仁さんは好き。
「僕には人は救えない」 -
やっぱり好きじゃない。ただ上巻より下巻の方がマシ。
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上巻では普通の女の子に見えたけどまさかこんなことが、という急展開の下巻だった。
この本が暗く重たい気持ちにさせるのは黒江の身に起こった不幸な出来事よりも、一貫して付きまとっている不安感のせいかなと思う。
わけもなく不安で、自分でも説明がつかないけれどもとにかく誰かになんとかしてもらいたい。でも誰といても不安は消えない。
こんな気持ちに支配されたら人生辛いだろうなと思った。
写真で成功したら黒江は自分を他人に委ねずに済むのかな。
辛かった。
辛い暗い気持ちの逃がしどころは登場する男の人が生々しくてかっこいいこと。仁さんも羽場先輩もどこかにいそうなんだけどちょっとだけかっこいい。このちょっとだけが、絶妙。
しかし密かに期待していた、彌生くんが再開したらかっこよくなっているという超展開はやはりなかった。 -
でも聞けないことは、聞いてはいけないことか、聞きたくないことのどちらかだ。いつだって。
どうか私だけの神様になって。私を許して。
テーマが重くて、そちらに対して思うところ考えるところはもちろんあるのだけど、印象に残るのは登場人物の細かい心の動きとか日常の一部のほうだった。島本理生さんは本当うまいな〜。