人質の朗読会

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著者 : 小川洋子
  • 中央公論新社 (2011年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041952

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人質の朗読会の感想・レビュー・書評

  • 日本人の人質は皆、今日を精一杯大切に生きる事が遠い未来に繋がると願い、信じていたのだろうと思いたい。何気ない日常こそが幸せで、そしてまたそんな日が戻って来るのだと希望を抱いて。

    「槍投げの青年」は共感出来て好き。

  • 不思議な感覚の本だった。
    大前提として、ここで語る人質たちは、亡くなっていて、でもその声は、いま、語られてるものであり、同時に、すでに亡くなっていてもうどこにもいない人たちの語りで、その場で面と向かって聞こえてくる言葉であって、機械を通して同時に、あるいは、ずいぶんあとに流れてきた言葉であって、感想を言葉にするのが難しい。
    不思議な感覚にさせられた本だった。
    また、どれもが淡々としてるから、なおさらだったのだと思う。

  • 最初の設定を読まなかったら、どういうシーンで語られたのかわからないくらい、淡々と語られる物語。
    人質となった場面で語られる物語とは到底思えない物語が綴られていきます。
    ちょっと不思議な感じを抱く話もありましたが、押しなべて平穏な日々が凝縮されていると思いました。

  • 最後まで読まずにはいられない感じで、読みました。

  • 小川洋子さんの作品では『博士の愛した数式』の次くらいに好きな本になりました。

  • とある国で反政府ゲリラに拉致された日本人ツアー客8人。犯人グループとの長期間に及ぶ交渉も実を結ばず拉致現場に特殊部隊が突入するものの、人質たちは犯人の仕掛けたダイナマイトの爆発で命を失ってしまう。その後、実は人質たちが監禁されている間に自分たちの書いた話を一人ずつ語り合う朗読会を開いていたことが判明。そのときの音源がラジオで公開されることになった……

    こんな感じのオープニングから一人ひとりの話が始まっていくのですが、間近に迫っている死を覚悟しているのか、それぞれに淡々とした語り口にも関わらず不思議と胸を打つ内容でした。

    自分が全く知らない国で拉致監禁されたら、果たしてこうまで精神を保っていられるだろうか。

  • なんて真摯な物語。
    *
    世界の出来事は、自分の心が生み出していること。
    世界とつなぎ目なく一つにつながりあっていること。
    *
    槍投げの青年の静謐さ。
    *
    ハキリアリの作り出す緑の小川。
    当然の役目を粛々と全うすること。
    *
    久々に読み返したい本を見つけた。

  • 自分の物語を語り合った8人の人質と、1人の通信使。
    一人目、杖
    二人目、やまびこビスケット
    三人目、B談話室
    四人目、冬眠中のヤマメ
    五人目、コンソメスープ名人
    六人目、槍投げ名人
    七人目、死んだおばあさん
    八人目、花束

    これと言った「結末」はなく、淡々と語られる九人の物語。
    いずれも、ある日突然会った年上の人とのお話。
    それも、結構な年上。それは自分にとっては未知の世界。
    家族や友達とは違う、まったく違う環境や境遇を持った人たち。
    しかし、詳しいことは語られないし、想像もされない。
    あくまで、語り手とその人との間であったこと。
    語り手の心に残ったことを徒然に述べられている。
    何というか、どれも本来は会合するはずのなかった人たちが、
    何かのきっかけで会うことになっているように思えた。
    それは偶然でいて、必要だったのだろう。
    ぎりぎりのところで拾ってもらえて、同じように拾う仕事をしながら、
    はみだし者の老婦人と心を通わせた話など。
    空っぽだった心に、槍投げの青年を宿した主婦。
    しっくりこない花束と自分の心に、納得できる場所をみつける青年。
    噛み合わない歯車の間にぴったり挟まるというか、
    中々埋まらない穴にかちっとはまるピースというか、
    そんな話たちで、不安な未来に対して、
    変わらない過去を支えにするというのが印象的。

    不安で崩れそうになる心を支える、確かな芯。
    それが、この物語たちなのだと思う。
    さながら大黒柱のように、グラグラと揺れる心が倒れないように支える。
    それまで、不安定だった心に収まった、確かな芯。
    私にも、そんな物語があるのだろうか?
    あると思う。
    散々揺れて、崩れて、それでも立て直して今がある。
    その過程で、何か芯が入ったのではないか。
    一本だけじゃないかもしれない。
    小さいものが、いくつも合わさって出来ているのかもしれない。
    きっと、その大きさや形は人それぞれ。
    それまでズレていたり、欠けていたりしたものが、収まる感覚。

  • 初めの数ページの設定を読んだだけで、小川洋子さんの世界だ、とわくわくする。とある国の山岳地帯で人質となった8人の日本人が、囚われた中で自分の物語を書き朗読し合う。〈自分の中にしまわれている過去をそっと取り出し、掌で温め、言葉の舟にのせる。その舟が立てる水音に耳を澄ませる〉一番好きなのはB談話室。〈ああ、そうか、彼が死ぬと一つの言葉が死ぬのか、だからこれは言葉の死に向けられた祈りなのだ、そうして皆洞窟に染み込んだ響きの名残に耳を澄ませているのだ〉ただ、どの語り手も小川洋子さんっぽくて、人質っぽさがなかった。

  • 小川洋子さんの本初めて読んだ。派手さはないけどじんわりしみる感じだった。優しくて丁寧な書き口。

  • 近年読んだ「ことり」「猫を抱いて象と泳ぐ」がとても良かったので、期待して読んだ。
    期待以上。
    挙げた2作と共通して、とてもシビアなのだけど、柔らかな手で心臓を包んでくれるような温かな読後感。
    特別でない人生は一つもない。
    何度も読み返したい作品。

  •  死が目前にやってきたとき、人はどんなことを思い出すのでしょうか。遠い外国で襲われ、人質になった人々による厳かな朗読会の話です。静かで不思議な雰囲気を味わってください。短編集としても楽しめます。
    (YA担当/ぽんこ)

  • 人が違うのにみんな似たような文体やストーリーというのはあったが、もともと小川洋子作品が好きということもあって、どれも私の好きな感じの話だった。どこか村上春樹の文章に似てる気がするのは気のせいか。
    しかしどうして朗読会をさせられていたのだろう。

  • 物語それぞれは静かで日常なのに不思議な世界の話のようで、
    とてもよかったです。
    多分みな今まで誰にも語ったことはないであろう、
    心の奥深く静かに眠らせていた思い出話は、
    すーっと心に染み渡りせつなくも安らぎを感じさせてくれる話ばかりです。

    ただなぜこれらをこういう設定で作ったのかというのには、
    ものすごく疑問を感じます。

    そもそもいつ死ぬかわからない状態でする話とはとても思えません。
    例えば家族に思いを馳せた話とか、過去を悔いた話など、
    そういう話であればまだ理解も出来たと思うのです。

    どれをとってもとても良質な話なだけに、
    なぜこういう残虐な設定と結び付けないといけなかったのか
    さっぱりわからず、そこにものすごく違和感を感じます。
    いい話なだけに残念・・・。
    普通の短編集で出されたほうが、印象がよかったです。

    ほんとは星は3つにしたいところですが、、
    それでもそれぞれの話がとてもよかったので星4つです(笑)

  • (2011より転載)
    久々に「良質の本」という感じがしました。
    短編になってるので、長編のドキドキ感は得られないけれど、コンセプトは素敵でした。
    最後の第九夜はなくてもよかったんじゃないかな、というのが正直なところです。
    2011/5/9読了

  • ひっそりとその言葉の舟は出航する

    遠い国で反政府ゲリラに拉致されたツアー参加者七人と添乗員。百日以上にもおよぶ監禁生活で、人質のそれぞれの思い出を話す朗読会が行われる。
    表紙とタイトルに引かれて手にとってみた。反政府ゲリラに拉致と聞くと、緊迫した雰囲気や激しい銃撃戦が描かれるような気がするが、ここで語られる内容は、普通に生きてきた人たちの心に残る何気ない出来事ばかり。ただ、一人の話(一章)読み終えると、目を閉じて祈りたくなるような静謐な雰囲気に満ちている。
    普段意識しないでいるけど、道ですれ違う人たち一人ひとりも「生きている」のだと、大切なことを思い出させてくれた。

  • 短編集のように読めるけど、お話の全てがゆっくりと死を予期させるような印象を感じさせるのは、冒頭での衝撃的な事件の設定があってこそ生まれているのだろうなと思いました。
    自分がこの状況に置かれたとして、生まれてくる物語は一体何だろう...と思わず思考を巡らされます。

    冬眠中のヤマネが好きでした。

  • 静かに進んで行く「誰かの人生」を追体験していくうち、読書会に参加しているような気分になった。夜寝る前に一章ずつ読んでいきたい、「噛みしめる」本。

  • テロリストに拘束された8人の人質が、1人ずつ自分の話を朗読する、という形式で語られる連作短編集。
    何とも特殊でうまい設定だ。

    人質は、今すぐにでも殺されることを覚悟した上で、自分の人生の中のひとコマを選ぶ。しかも、いったん文章として書いたものを朗読して聞かせるため、過剰な感情の高ぶりは排除され、客観的で静かな語り口調となる。
    さらに、冒頭で人質は全員命を落としたことが明かされている。そのため、どの話もひっそりと死に近づいていることを前提に、遺言として厳かな気持ちで読み進めることになるのだ。

    つまり、読み手は8人の話を読む以前に、すでに気持ちを一定の方向へと導かれているというわけ。だからこの設定は、作品になくてはならない、作者の巧みな仕掛けと言えるのでは。
    もちろん、それぞれの話もどれも印象深く、作者の魅力がふんだんに盛り込まれている。個人的には、ビスケットとヤマネが好き。

    表紙も、これしかないでしょうと言うくらいマッチしている。無垢とはかなさ、さらには思慮深さまで感じられる小鹿は、静謐をたたえ、どこか人質の姿にも重なる。作品の実物も見てみたいな。

  • プロローグが衝撃的過ぎて、その後どう読んだらいいのか戸惑った。
    プロローグでは以下のことが語られる。
    「日本から見ると地球の反対側のある国で、ツアー旅行に訪れていた7人の日本人と添乗員がテロ組織の人質となった。
    人質になった日本人の男女は拘束されているものの穏やかに過ごしており、夜な夜な自分たちで作った話の朗読会を繰り広げた」
    こうした説明が淡々とされ、あとは章ごとにその人質の語った話が連なっている。
    ただしプロローグの最後で、人質たちは軍隊の突入で全員死亡したことが判明する。
    つまりプロローグの後に綴られている話は、その後死んでいった者たちの最後の言葉と言うこと。

    人質たちが語る話は、どこからどこまでが創作でどこからが実体験なのかとか、詳しいことが書かれていたりはしない。
    このあと全員死ぬことになるんだけど、穏やかに暮らしていたせいもあってか、語る内容はあくまで淡々としている。ただし、その中にどこか、遠くて近い死の香りがする。
    身近な人の死を語っていたり、やり投げの選手が放つ槍を「魂」と表現して、地面に刺さった槍に死を描いていたりする。
    「死んだおばあさんに似ている」と誰もから言われる女性などは、もう死の世界に片足を突っ込んでいる存在そのものではないかな、と思う。

    人質たちの話の最後に、人質たちの様子を伺っていた「ある国」の兵士の話が入る(ちなみにこの兵士も、「死んだおばあさんに似ている」と言われていた女性の声だけを聞き、何を言ってるかわからないが死んだ祖母の声に似てた、と言っていて唸った)。
    兵士が、人質たちの朗読会を聞いて「ハキリアリのように粛々としていた」と感じているけど、読んた私も全く同じような思いに浸った。
    静かにひとが死んでいく話である。

  • タイトルと冒頭から得られたワクワク。報われることは無かった。

  • 自分が死んでいくと感じたときに思い出す過去のお話は、どれも特別大きな事ではないんだけど、その人にとっては心の中に小さく残っていた、宝物のような体験なんだろうなと思った。私の場合は何だろう。

  • 2016/2/16
    読みやすい。

  • 人質となった人々が自分の人生を語る短編集。
    明日をも知れずの極限の状況で振り返る出来事はやはりどれも独特の切り口。
    人生半ばで断ち切られた命と
    物語がぷつりと切れて終わるところがリンクするのだろうか。

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人質の朗読会の作品紹介

遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと見張り役の犯人、そして…しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。

人質の朗読会のKindle版

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