ヴォイド・シェイパ

著者 :
  • 中央公論新社
3.89
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120042270

感想・レビュー・書評

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  • とても静かに進む物語だった。
    彼はこれから生きる意味を見つけ幸せになれるのかなー?

  • 「ゼン」
    「ゼン? 何ゼン?」
    「氏のこと?」
    「そう。お侍さんなんだから、上の名前があるでしょう?」
    「氏というのは、生まれるまえからあるもの。そういうものは、つまりは、ないのと同じ」

    「死は、誰にでもある。まことに不思議なことだ ー ただの一度だけしかない。生きることがただの一度であるのと同じ。つまりは、この一生の長さと一瞬の死が、対になっているということだ。わかるか?」
    「はい」
    「両者は同じ価値なのだ」

    「死を悲しむことはない。今ここにものが、明日はなくなるだけのこと。煙も同じ、花も同じ、ここにあったかと覚えても、たちまちどこかへ消えてしまう」

    「似ていることを嫌い、慣れ親しんだものを捨てなければ、自分に囚われる。そうではない新しい自分を常に求めるのだ」

    『考えるな、というのは、考えている暇があったら動けという意味で、つまりは、迷うなというとこなのだろう。』

    「ようは、金でなんでも買えるようになってしまった。これこそが諸悪の根源。売っているものだけではない。人の心まで買えるようになった。否、人が心を売るようになった、というべきか」

    「教えてくれ。礼儀って何だ?」
    「人を不愉快にさせないための決まり事だ。礼儀に従っていれば、相手もちゃんと応えてくれる」

    「人と人との関係は、その場その場で必ず釣り合っている。貸し借りというものはない。世話になったと感じていても、世話をした方も満足して世話をしている。勝負でも同じこと。負けたと感じていても、勝った方も必ず同様に悔いている。だから、あとになって返そうなどと考えるものではない」

    「何故泣いているのだ?」
    「こんなに飯を沢山食ったことはねえ。こんなに暖かいところで寝たこともねえよ」
    「嬉しいから泣いているのか?」
    「違う ー 嬉しくて泣くなんてあるものか」
    「では、何が悲しい?」
    「これまでが悲しいとわかったんだ ー 昨日の俺が可哀相だ」

    「いやいや、此奴も不満はないだろう。一生を全うしたのだ。多少の長い短いはあれ、生きたことには変わりない」
    「そういうものでしょうか」
    「わからんなあ。どういうものかの。しかし、そのときどきで、都合の良いように思う以外にあるまい」

    『運命を知ったうえで、それでも、やはり逃げる道はあるのではないか、と自分は考える。今の自分にはそれが正しいと思えた。だが、僅かな正しさ。弱い正しさだ。その程度の正しさではヤエジを救えないのか。
    正しさが常に人を救うわけではないのだ。』

    『是非とも、 自分の内に取り入れたいものだ。そう考えるだけで、心が躍る思いがした。
    カシュウが死んで以来、初めての嬉しい気持ちのように感じた。生きていれば、こういったものに出会うのではないか。これが生きる価値なのではないか。』

    『人間は生きているかぎり、別人になれる。
    生きている人間に価値があるのではない。その変化にこそ、価値があるのだ。死んだ者は、もう変わらない。土に戻る道しかない。』

  •  このシリーズ、最初の話を読まずにいました。
     淡々としています。ゼンさん世間知らずですが、相手が剣術家なのでまだ話がかみ合ってます。
     ここから読んでいたら続き読んでたかな?このシリーズ先に行くほど面白いです。ゼンさんのオトボケぶりがかわいい。

  • 作者の作品を読むのがこれがはじめて。みずみずしい本の装丁に惹かれて、どうしても単行本で読みたかった。
    うつくしい。
    全編に配置された余白が、物語にしみこんでくるみたいです。余白。無。たしかに、何も無いということに対するストーリーだなと思います。おはなし、というよりは、やわらかい詩集を読んでいるような具合。そのくらい、隙のないやさしい言葉。うつくしい後味です。続編を読んでみようと思います。

  • 18 マインドクアンチャが素晴らしくて再読。

  • 森氏が描く剣客の話ってどんなのだろう??
    ミステリのイメージが強かったので、ちょっと興味深々で手に取りました。

    森氏が時代物の話を書くなんて!と思いましたが、これがまたすごく面白い。
    なるほど、主人公の思考とかに森氏らしさがにじみ出ていて哲学的。(笑)
    これは本当に面白かった!
    ぜひ続きも読みたいです。

  • 著者の本は初めて読んだが、読みやすくグッとくる言葉が多い。

    塩味の小説って感じ。後には引かない。

  • 禅・武士道がテーマの小説。幼少期を剣の達人と2人山で過ごしたを出た主人公(若武者)が、旅に出て精神的に成長してゆく話。
    物語の世界観と主人公の心の描写が好き。続編も読みたい。
    初めのうち主人公は相当な剣の実力の持ち主であると思わせておいて、最後にまだまだ未熟だったことが明らかになる構成は面白いと思った。

  • 森博嗣さんが、好きだ。

    落ち着いた雰囲気の文章がとても読んでて気持ちいい。
    スカイ・クロラシリーズを読んだときにも思ったけれど、
    戦う場面の書き方が本当に好き!

  • 『スカイ・クロラ』シリーズ以来の森博嗣さん。
    “剣豪小説”らしいけれど、自分にはどちらかというと“禅問答小説”かと思われた。
    主人公“ゼン”の本名が出てくる前から、漢字では“禅”だろうなと思ってたし。
    「ドラゴンボール」+「バガボンド」と評している書評もあったが、確かに“ゼン”の無垢さは悟空に通じるものがあるかも知れません。
    雑念が無い故に強いのか? 
    『スカイ・クロラ』では結構叙述トリックを仕掛けてきた森さんなので、油断しないように読んだつもりだけど、とりあえずストレートに読んで大丈夫そうです。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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