- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120042270
感想・レビュー・書評
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刀を携えた侍が主人公だとは、意外過ぎてやられた!
時代が時代だからなのか、他の作品よりも登場人物は大分まともな人格が多いので、読み易さは感じられるも、やっぱり森博嗣は森博嗣。
「スカイ・クロラ」シリーズが好きな者には受け入れられる作風であり、装丁の美しさも健在。 -
物心つく前から師匠と二人きりで山に住んでいた若者が、師匠の死をきっかけに山を下り、旅をする話。
話の流れ自体はどこかで見たようなーというものなので、特段の面白さは感じない。
主人公の思考の流れは、まぁ興味深いとは思うけど…これもまた森博嗣作品を読み込んできてると、どこかで見たようなーだな。
戦いの描写は面白いと思う。飾った文章よりずっと臨場感があって好き。
今後このシリーズがどこへ向かうのか分からないけども、序章なのだろうという期待を込めて星三つ。 -
装丁がスカイ・クロラっぽい。
全体的に静かな物語。ゼンは矢張り、良家の出かもしれない。
禅問答や哲学っぽい話。
ゼンが達人であっても、上には上がいる。
殺陣のときの地の文が特徴的だった。
ゼンの物静かな感じが、面白い。
イオカが強引的に見えた。 -
日本の江戸時代あたりの話。
カシュウという武芸者に育てられたゼンという人の話
スカイ・クロラよりもなんというか森氏が目指しているものが書かれている気がした静かな世界観でカバーにもそのイメージがあるサクサク読める割に奥が深い作品だったので2回ぐらい読んでもいいかも。 -
やく二年半ぶりの森博嗣。「スカイ・クロラ」に装丁が似てると思えば、中央公論新社で続編ではないけど、同じシリーズ(あるいは意識したシリーズ)であることは確か。読んだことないひとには分からないたとえだけど、「スカイ・クロラ」武士道版。戦闘機が刀になっただけ。いや、だけ、ってほどでもないんだけど。
ただでも、普段まったくもってそんなつもりはなくても、日本人として生きているならやっぱりどこかしら持ってるような精神を普通に持ち合わせている人なら、たぶん「スカイ・クロラ」よりは読み進めやすいと思う。
山奥で暮らしていた若者が、師を失って旅に出る話。出会った先の人たちを会話をして、刀を合わせて、そして何か掴んだ気になりながら、結局何も掴んでないような、ただ歩いているだけのような、そんなお話。
考え方が面白いというより、武士道や禅の世界、「空」を森が展開したらこうなるのか、と。森色全開。淡々と平坦。無味無色。美味しくもないし不味くもない。
タイトル「The Void Shaper」どう訳したらいいのか。「空なるもの」とか?
これが続編を出すようであれば迷わず買う程度には(つまりかなり)面白かったし気に入りました。ただたぶん、「スカイ・クロラ」と同じで一作目が一番面白い。
抜粋。
「負けるたびに強くなれる。だが、負けたらそれでお終いだ」
11.06.02 -
銀河不動産の次に好きかも知れない。
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剣士は思考する
【内容】主人公ゼンは若き剣士です。
旅を続け、ひたすら考えます。
【感想】まずデヴィッド・キャラダイン主演の米国テレビドラマ「燃えよカンフー」を思い出しました。
やはり青年が旅をしています。
折々に師匠の言葉を思い出しながら。
著者がアレを知らないとは思えない。イメージしてたんではないかと思います。
また、若き剣士ゼンは、もうひとりの草薙水素。
純粋な存在であり、純粋でない世界とのギャップに悩む。しかし、自分のなかにダイブするだけのクサナギと異なり、ゼンの思考は広がり、世界との交わりを拒絶しません。
むしろ、人という存在そのものについて積極的に考えていきます。
おそらくはそれが「強さ」というものに繋がるだろうと?
その果ては?(2012年12月24日読了)
簡単なリスト
【イオカ】サナダの娘。剣の腕もたつ。《自分に余程自信があるのだろう。自信があるから押しつけてくる。》(p.84)
【オーミ】山寺の僧侶。
【会話】剣を交える以上に、言葉を交わすことは勝負事といえる。(p.106)
【カガン】山寺の和尚さん。カシュウを知る人物。
【過去】つまり、自分の過去について知っても価値はない、ということだろう。(p.10)
【数える】数えて、それを覚えておけば、次からはその数を頼りにすることができる。それを頼りにすることによって変化を見逃す(p.11)
【刀】刀というのは、いかなる場合にも捨てていくわけにはいかない。そういう質のものだから、やっかいなのだ。(p.114)
【簪】自分では見えない。
【キグサ】老婆。薬師か?《この頃は、ちっとも覚わらん。忘れるというよりはな、そもそも覚えない。もうたぶん、満杯なのではないかな》(p.190)。《不安な方が生きとる心地がする。》(p.191)
【剣術】刀を持つ者の行動、考え方のすべてであると、ゼンはカシュウに教わった。
【サクラギ・フシン】凶悪な剣士。
【ササゴマ】礼儀を知らない少年剣士。いろいろ修羅場をくぐっているらしい。
【サナダ】里の長。若い頃、カシュウと同門の友だった。
【実戦】「戦いを避けることも実戦のうちである」(p.41)
【スズカ・カシュウ】一流の剣士で若い頃には二刀を使ったこともあるということなのでイメージ的には宮本武蔵でいいか。物語開始時すでに亡くなっている。ゼンを育て剣も教えた。戦わないことが最も強いということだと。
【滑る】滑る方が本来かもしれない。(p.76)
【ゼン】主人公。剣士。《自分は、とにかく迷う。しかし、迷うことが悪いとすれば、それは迷っている時間だけ行動が遅れるからだ。だから、迷うときには速く決断すれば良い。このように理屈を考えてしまうのもまた、自分の癖だと思う。》(p.107)
【正しさ】彼は、けっして嘘はつかない。だから、それは正しい。でも正しいものは、いつまでも正しいわけではない、ともカシュウは言った。であれば、それは今でも正しいとはかぎらない。(p.10)
【チシャ】カシュウとゼンが暮らしていた山の麓の村の娘。小さい頃カシュウのところに来たことがある。若いが髪が白い。
【人間関係】人と人との関係は、その場その場で必ず釣り合っていて貸し借りというものはないとカシュウは語った。
【ノギ】とある宿屋で出会った三味線弾きの女。
【武】武の目的は、明らかに生の維持にある。(p.41)
【フーマ】サナダのとこにいる侍。
【負け】負けるたびに強くなれる。だが、負けたらそれでお終いだ(byカシュウ p.322)
【ミサヤ】刀研ぎ。
【ヤエジ】ある村で暮らしている侍。 -
侍が出てくるだのというフレーズはこの際、無視した方がいい。
侍が出てこようが、お坊さんが出てこようが、森博嗣は森博嗣だ。
カタカナ(英語?)のタイトル、難解な引用、詩的な(私的な?)文章。
主人公が侍で、時代設定が古い以外は、どの部分をを抽出しても森博嗣です。森ファンなら好きだろうな。うん、私も森ファンなので好きです。
そうでない人には決してお勧めできません。
でも、
自分の(人間の)価値観という概念について、ちょっと考えてみたい人は読んでみるといい。個人的にキグサが好きです。 -
各章の扉部分の引用は、新渡戸稲造の武士道.
”ゼン”という若者(侍)の周りで起こる出来事と、ゼンの独白により物語りは進む.強さとは何か、生きるとは何か、生と死の価値とは.