- Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120043260
感想・レビュー・書評
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祝!ノーベル医学・生理学賞 受賞
と書いたものの受賞されるまで知りませんでした。
この本は受賞前の2012年に書かれた本ですが、すでに文中ではノーベル賞を受賞するでしょうという内容がチラホラ。
iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中教授の本も読みましたが、ノーベル賞=ひたすら研究しているというイメージを持ちますが、実はそれだけでは不十分なんだということを教えてくれる。研究した成果をどれだけ世の中にプレゼンテーションできるか?という能力も問われている気がする。
そして、やはり日本で研究を続けるということがどれだけ厳しい環境なのかということも改めて痛感させられる。だから、海外(特にアメリカ)に研究環境を求めて行ってしまうのだろう。でも、大村さんも山中さんもMade in Japanにこだわって日本での研究にこだわる姿勢は本当に素晴らしい。
本著で一番印象的だったのは「研究を経営する」というスタンス。
「経営を研究する」ではなく「研究を経営する」である。つまり、技術をビジネスに転換することではじめて、研究を続ける環境を作ることができる。というより、そうしなければ研究をし続けることができないという裏返しだろう。
久しぶりにワクワクさせられる一冊!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ノーベル賞受賞前、先取り的に出版されていた本。成毛眞本とかでもオススメされていて、存在は以前から知ってて気にもなってたから、ノーベル賞受賞前に読んどけば良かった。感想としては、偉人伝は大なり小なり似てますね、ってこと。たいてい含まれるのは、努力なくして道はなしってことと、人付き合いが成功の秘訣ってこと。読むたびに”分かっちゃいるんだけど”って、なんか情けない気持ちになる。じゃなくて、ちゃんと自分の人生にフィードバック出来る人が勝ちあがっていくんですね、きっと。とかひがみばかりじゃなく、イベルメクチンの開発に止まらず、発見や開発したものの多彩さには純粋に驚嘆。北里柴三郎とか、多少関係のある偉人たちの逸話もまぶされていて、飽きが来ないような構成になっていて、総じて楽しく読みました。
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大村智は2015年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった化学者であり、その主な業績は「オンコセルカ症」の撲滅に大きな貢献をしたことだ。オンコセルカ症は主にアフリカで蔓延していた寄生虫による感染症で、年間数千万人の人々が感染しており、失明者を含めて重篤な症状の人は数百万人にのぼると推定されていた。この病気は蚊より小さなブユが媒体となってミクロフィラリアを感染させるもので、それまで有効な予防や治療の手段が無く、働き手の多くが罹患した集落では貧しい暮らしを余儀なくされていた。このオンコセルカ症に劇的な効果がある治療薬メクザチンの成分イベルメクチンを発見したのが北里研究所の大村智だ。
大村の研究の根幹は微生物が作り出す化学物質の中から有用な物質を探し出すことで、今までに多数の微生物由来の抗生物質を発見してきた。その中のひとつであるイベルメクチンは、抗寄生虫症薬として大変効果があるためWHO(世界保健機構)を通じて2億人に投与され、オンコセルカ症の撲滅に成果を上げつつある。この功績により、大村智は共同研究者のウィリアム・キャンベルと共に2015年ノーベル生理学・医学賞を受賞することが決まった。
大村が研究者として秀でているのはもちろんのことだが、特筆すべきなのは経営者としても優秀だということだ。大村は米国ウェスレーヤン大学での研究生活の経験から「研究者はできるだけ研究費を自分で集めてきて仕事をする」という思想を学び、当時日本ではタブー視されていた「産学連携」という方式で企業から多額の研究資金を取り付けた。先ず大村が創薬につながる化学物質を発見して特許を取り特許の専用実施権を企業に与える。企業はそれをもとに薬を開発してビジネスにする、ビジネスになった場合は特許ロイヤリティを大村に払うという契約だ。その後イベルメクチンの売り上げによって米国の製薬会社から北里研究所に支払われた特許ロイヤリティは250億円にもなり、研究資金の他にも北里研究所の経営の立て直しや新しい病院の設立資金などに充てられた。大村は産学連携活動では草分け的存在であり抜きんでた実績を持っているのだ。
大村が大学を卒業して初めに就いた職業は夜間高校の教員だった。そこで、昼間は働きながら夜間高校で一生懸命に勉強する生徒たちを見て一念発起し、大学院で勉強し直すことにしたのが大村の研究者としての始まりだった。そんな大村は「幸運は強い意志を好む。やり通すという強い意志をもって、失敗を恐れずに一歩前へ進むことが大切だ」と言う。また様々な人脈をもつ大村は「成功するために大事なことは人との出会い」と述べている。更に、人材育成にも積極的に取り組んだ大村は「教育はとても大切なことであり、政府や企業はもっと人的資源を育てることにお金をかけるべきだ」と訴えている。
本書は3年前に「大村智の業績を広く世の中に知ってもらいたい」として書かれた評伝で、大村の生い立ちや研究者としての活躍、美術愛好家としての一面などがつづられている。今年80歳になる大村智の精力的な生き方には尊敬の念を抱かざるを得ない。プロローグにある1枚の印象的な写真、「オンコセルカ症から救われたガーナの子ども達に取り囲まれてピースサインをする大村」の笑顔が彼の人生を物語っているようだ。 -
2015年ノーベル生理学・医学賞受賞の大村智の評伝.
幼少期よりやはり研究生活を始めてからの方がずっと面白い.とにかくたくさんの試料を調べ,その中から有用な微生物由来の化学物質を見つけるという研究なので,やはり大きなグループでの研究になる.その研究室のマネージメントをはじめとする経営の手腕の巧みさがとても印象に残る. -
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非常の良かった、是非埼玉の北里病院に行ってみたくなりましたね。
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ジャンルとしては科学や医療分野となるのでしょうけれども、やはり人物の歩みにクローズしているという点でノンフィクションかなと自分は思いました。
やはりノーベル賞を受賞されるような方はものの考え方やバイタリティーが常人とは異なりますね。科学者としての執念や努力もさることながら、経営者としての尋常ならざる手腕に本当に驚かされました。これは本書を読まなければ知らなかったことだと思いました。
ノーベル賞を受賞された時、大村博士は奥様のことを殊更お話されていましたが、本書を読むと奥様の力の素晴らしさもつくづくと知ることが出来ます。ツマという立場の者としては「内助の功」の大事さを改めて知る一冊ともなりました。
(だからといって実践できるかは全然別の話ですけど 笑)
それにしても奥様の名前を冠された基金を設立されたというのは本当に、奥様に対する博士の一方ならぬ感謝と愛情を感じます。
そして、ノーベル賞受賞という名誉は、決して一人の受賞者の努力や素晴らしさだけではなくそれを支える有名無名の方々の力が本当に大きいのだということを教えられます。
この本がノーベル賞受賞前に書かれたということが、この本が出版された後の今を知る私たちの感動と感慨をより深めてくれるように思います。 -
★科学者であるだけでなく、北里研究所を再建した経営者でもあり美術への造詣も深い。
徹夜で研究をするなど集中力がすごい。それによって一流の研究者との交流が生まれ、いい循環を作っていく。