母の遺産―新聞小説

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著者 : 水村美苗
  • 中央公論新社 (2012年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120043475

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母の遺産―新聞小説の感想・レビュー・書評

  • 親の老後とか介護とか死とか、自分の老後とか、読んでいて身につまされて、めちゃめちゃ暗くなって苦しかったけれど、ものすごく引き込まれて読むのがやめられず、長さもまったく苦にならなかった。もっと続いてもいいくらい(「母」が亡くなってからは読んでるほうもほっとして読むのが少し楽になったし)、この先が知りたいくらい。

    特に後半は、そうそう!と思ったり、ハッと気づいたり、まさに、共感と気づくことの嵐、っていうような感じで。もうすばらしかった。
    人生なにも成せなかった、とか、思い描いていたようにはならなかった、とか、そういうふうに思っても、そういうふうに思う人はいるし、それでもいいのかも、と思えてほっとしたり。年をとってもいつまでも、なにか楽しいことはないか刺激はないか、とか執着するのはやめがほうがいいのかも、とかか考えたり。なんだかこれからの生き方までいろいろ考えさせられたような。
    あまりにいろいろ自分の気持ちに沿うようなものがあって、書ききれないし、うまく言葉にもできないような。
    同年代(40~50代)はみんなそう思うのかしらん。

    文章自体はウエットではなく、どこか客観的で冷静な感じもしてそれもすごく好き。

    でも、読み終わったあとは、なにか少しさわやかというかすがすがしいような気持ちにもなった。

  • 主人公は水村美苗本人なのだろう。老いてもわがままな母の介護に疲れ、夫の浮気にも悩まされる。母の死、離婚の決意、新たな出発にいたるヒロインの心情の変化、新聞連載小説として書いたものだ。特異な母の出自が興味深く、また、母の死後、主人公が芦ノ湖畔のホテルで出会う人びとの話は、それだけで小説になる面白さだ。主人公姉妹と「母」との距離感が私はよくわかる。それでも親だから…。さて、私も親の介護に行くかな…。

  •  激しく面白く、興奮して読み、大満足で読了。大好きです。満点です。
     何より、文章が素敵です。
     どこがどう、と詳しく言うには勉強と分析が必要なので割愛。
     別に普通の現代文章だけど、ほのかに日本語としての美意識や機能性、といったものが根底にあることが香ります。なんていうか、背筋が伸びます。読んでいるだけでわくわくしてくる文章ですね。
     日本語の文章、というものが好きな人にはゼッタイにタマラナイ小説です。
     僕は個人的に夏目漱石の小説は全体的に好きなので、そういう人にはモウ、何が何だかタマラナイ、という読書になるでしょう。
     でも、そうじゃない人でもOKです。うーん、何て言うか、ちょっとは歯ごたえがある、コリコリした、だけど基本的に物語の面白さを味あわせくれる小説。あと、分からないけど、なんとなく知的で、媚びないけど、目だとうともしてない、ツンケンしてもいないような、そういう女性作家の本を読みたい、という場合にも、お勧めです。

     内容は、母の介護に振り回されて心身ともに疲労し、そこに夫の浮気というダブルパンチを食らった50代の主人公女性が、お金やマンションと言った、物凄く切れば血が出る具体的なことに悩みながら離婚して独居を始めるまで、のお話。主人公の設定は、一見、作者そのものを思わせるような、海外留学経験がある、大学非常勤講師とか翻訳とかそういう世界で、不安定な収入で生きている人。でも当たり前のことだし、どうでもいいことだけど、多分別に水村さんの実体験ではないと思う(そのものではないと思う)
     と書くと、「この本はそういう本ではないのだけど」と自分で思ってしまう。この作品は新聞小説だったそうなので、上記したストオリイで一応の娯楽性はある。けれど、主人公の意識の中で、「主人公と姉、そして二人の母、そして祖母」という女三代の歩みや、思いが、合間合間で描かれる。彼女たちの喜びと悲しみの物語でもある。それぞれの時代の、男性との恋愛とか結婚とかについての物語でもある。日本の近代と現代の個人の自我の変遷の物語でもある。昭和~平成の日本を舞台にした、「ボヴァリー夫人」でもあり、「感情教育」でもある。とにかくオモシロイのである。ニンゲンを描いているのであって、ドラマチックな出来事でゴタゴタと繋いでいるのではないのである。
     その癖(その癖っていうのも失礼な話しだが)、十分な娯楽性もあって、サスペンスもあり、最終段階での「2100万円のやりとり」は、不意打ちのようにドラマチックな感動だったりする。

     これはもう、本当に素敵な小説でした。こんな小説を新刊で読めるなんて、嬉しくて滂沱の涙です(泣いてないけど)。水村美苗さんは、以前に「日本語が亡びるとき」を読んで、あれはあれで大名著だと思った。けれど、小説書きとしてここまでスゴイ人と思わず、読んでいなかった。まず、これから、1作でも2作でも、この人の新刊を読める幸せに感謝! それから、慌てずこの人の旧作を読んでいけることに感謝!
     こんな小説を書いてくれるのであれば、実際の水村さんがどれだけイヤな人でも良いです。きっとコンナ本を書ける人はイヤな人に違いあるまい。

     と、言いつつ、これが万人にお勧めかというと、そうでもないんです。
     何しろ、ここに描かれいることは、目を背けたくなる人の老いであり、親の果てしない介護の地獄であり、虚脱と安らぎでしかない親の死であり、遺産を巡るナマナマしくも現実的な金銭の話であり、若くない夫婦の崩壊であり、住居やらローンやら年金やら仕事やらの不安であり、失われた若き日々の、その愚かさへの甘い後悔であり、子供と親とのままならぬ関係であり、不幸であること全般だったりする。
     まあそれでも、最後に「私は幸せだ」と呟かせる。最後には春のちょいとした日差しの... 続きを読む

  • ここ数年,私には新刊に飛びつきたい気持ちにさせる作家がほとんどいなくなってしまっている.そういう中で水村美苗さんは貴重な例外.それにしても,前作「本格小説」からどれだけ待ったことか.しかし待っただけのことはあった.

    前作と違って波瀾万丈な人生を扱っているわけではなくて,親の死,夫婦関係,そして自分自身の老いといった,誰もが多少なりとも経験することがテーマである.自分の意志で一人で生きるという,若いときには当たり前のように考えてしまうことが,親,家族,肉体の衰えといった要因で,歳を重ねるとなかなか難しくなっていくことをこの本は実感させる.それだけに,かなり身につまされ,自分の生き方を考えさせられる.私が主人公の美津紀と同じ女性だったら,たぶんこの衝撃はもっと強かったろう.

    ただ,そうした不幸の中に沈潜せず,自分や母親を客観視するだけの理性,知性が,この本を重さから救っている.また以前の「私小説」を思い出させる姉妹の会話(ほとんどが愚痴だが)にはシニカルなユーモアすら感じられる.

    文中あらゆるところで,ぴったりの表現や比喩が現れ,引用する間がない.昨今の濫造されている本とは格が違う.それでいてこのボリュームだから,書くのに時間がかかるのもよくわかる.でも次作はもう少し早く読みたい.「日本語が亡びるとき」から救うのはこういう優れた小説なのだから,水村さんが小説を書く意義は大きい.

    若者向けの本があふれている中で,この本が大ベストセラーになることはないだろうが,日々生活に追われながら,人生の下り坂を意識せざるをえない私のような世代に,小説を読むことの意義と楽しみを与えてくれる本当に貴重な本.

    星一つ減らしたのはこれを何度も読むのはきついなという気持ちから.この本自体に罪はありません.

  • 寡作ながら質の高い小説を書いている水村美苗の新作。小説には珍しい(だからこそテーマとして選ばれただろう)中年女性の人生について書かれた自伝的小説です。

    素晴らしい小説です。あまりにも生々しく、読んでいて本当に辛く感じることも何度もあり、それでも先を知りたくてページをめくってしまうような作品です。しかし、その生々しさゆえにもう一度読み返すことはとてもできそうにありません。

    例えば、母親の死を看取る描写。わがままに生きた母を看病しつつ、早く死んで欲しいと願い、計算高く遺産の金額を見積もり、憎みつつもやはり血のつながった肉親であるという関係。

    あるいは、夫との離婚に悩み、離婚後の将来設計についてリアルな金額をあげてそろばん勘定をする描写。美津紀の家庭は一般的な基準で言えばかなりの高収入ですが、夫の慰謝料や母からの遺産、自分の所得を計算すると決して裕福な生活ができるわけではない。…そんな風に書かれると美津紀ほど恵まれていない自分の将来なんてもっと絶望的じゃないか!…と思ってしまいます。

    「私小説」で描かれる行くも戻るも決断できない曖昧な葛藤に、年齢による「老い」が加わってますます自縄自縛になっているかのようです。中年女の業とはかくも深いものなのか。

  • 2012年の作品で50代女性が主人公。私にとっては親の世代くらいになり、全く同じに共感というわけではないが、、、女の人生の苦悩の全てがここに…!という感じの辛苦のフルコース(といっても、生きるか死ぬかの生活苦とは無縁の世界の話なのでもっぱら精神的なコトに限られる)。
    同じ女としては心穏やかに読めない「恐怖」小説ですらあるが、どこか細雪的な品のよさがあって、これだけエグいのにエグさで売ってないわよという上質感にひれ伏す思い。ちょっとしたひとこまの表現のうまさにも舌を巻く。そしてこれ自体小説でありながら「小説とはなんたるものか」という批評性まで併せ持つ、なんという視点の高さ。

    何を今さら、、、を承知で言うけれど、すごい作家だ。

  • 女の人が母親を嫌う気持ちというのは、昔ながらのテーマである男が父親を憎む気持ちと、似ているようで全く違うんだな、と感じた。
    ここまで詳細に、母親の表情、言葉、匂い、声、仕草、老醜、娘にとってそのそれぞれがどのように嫌であるか具体的な嫌悪感の有様を示すことができる(そしてそれを小説にすることができる)とは、男と男親の関係からは考えられないのではないか?
    母の死に至る介護小説とも言うべき前半と、母の死後、箱根のホテルで自分のこれからと向かい合う後半に大きく分かれる構成だが、全体を通じて女性の老化と金の話についてはこれでもかというほどの呵責のないリアリティが汪溢する。
    希望が見えるように思えるのはこの長大な小説の最後の数ページである。しかもその救いは直接的には思いがけない多額の収入によって、そして間接的にはこの国を襲った思いがけない巨大な不幸によりもたらされたと読めなくもない。
    恐ろしい小説である。

  • 「早く死んでほしい」
    母親への複雑な感情と確執。
    夫への違和感。

    ああ、わかるなあ。
    綺麗事では片付かない人間の感情。
    特に、他人である夫婦間では、いったん感じた違和感は、ずっと感じ続けながら生活していくもの。少なくとも自分はそう。

    50代の女性である主人公は、夫の浮気の証拠を見つけてしまう。そして「ようやく」死んでくれた母親からは多額の遺産。

    後半、浮世離れした芦ノ湖畔のホテルで、浮世離れした宿泊客に出会い、次第に自分を取り戻していく「私」。離婚を決心し、あれこれと将来設計を考える場面だけがやけに現実的でいじましい。

    しかし3800万の遺産、身体は弱いとはいえ仕事もある。そのうえ慰謝料ももらえて後腐れなく離婚できるなんて恵まれているよなあと、下世話な感想を持ってしまう自分です。親の世話からも解放されるし、そりゃ離婚して1人で生きて行く方がいいに決まっている。

    水村美苗は「私小説」も「本格小説」も読んだけど、好きな作家です。でも、なんとなく男受けはしないような気がする。男で好きな人は珍しいかもしれない。

  • 衝撃的だった。
    母の死を願う中年の姉妹に非難の感情を持つどころか、二人の感情に少しだけ共感してしまっている自分がいることに。
    姉は既婚で病弱、妹はキャリアウーマンで夫との中も冷えきっている。
    自分の生活をこなしていくだけで精一杯な人がほとんどだと思う。
    だけど、生活の半分以上に年老いた親が関わってくる時がいつかは来る。
    そんな時、どれだけの人が順応していけるのだろうか。
    そして、もっと怖ろしいのが、自分が年老いて不自由になった時である。

  • 水村さんは初読み。
    中高年の母娘関係が圧倒的な表現力で描かれている。
    緻密な内容にとにかく引き込まれる。
    そして読後感もなかなかよい…久々のヒット。
    リアリティがないのはフランス語ができるあたり…
    そして結構な遺産が舞い込んでくるあたり…

    装丁もいい。
    『母の遺産』の『産』の字に指輪があしらわれてるのだ♪

  • 引用
    -小さい頃は後回しにされ、放っておかれて育ったというのに、これからは自分の肩に実家の桂家の厄介事がのしかかってくるのではという予感に襲われてならなかった。

    思わず、引用したくなりました
    こう思う人たちがきっとたくさんいるのだろうと思います
    我が家には、間違いなく私の母に残すような遺産はないでしょうが。

    父の入院
    そうだったねぇ
    若者よりも老人に手厚いと言われる最近ですが
    ほんの少し前まで、こういった事が当たり前でしたよね

    目の前に迫る老人介護のことを考えます

  • 家の中は綿埃だらけで、洗濯物も溜まりに溜まり・・・もう疲労で朦朧として生きているのに母は死なない。
    ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?

    衝撃的な帯ではある。親の介護に際してその思いを抱くのは、親の老いがすすんでいくのを見るのが辛いのか。或いは自分自身が老いて体力も気力も失っていくからか。
    けれどもこの本の主題は介護ではないのだろう。母や祖母の生きざま。それに縛られている娘たちの、それぞれの生き方。
    それにしても姉妹が海外留学できるような家庭でありながら、中流というのは?だ。しかも母の遺産は7360万。文中には無いが相続税が発生する金額なのだ。

  • ちょうど半分あたりまでは、母娘の話なんだなと思いながら読んだ。
    母と娘の関係はいつの時代も変わらず、共感と嫉妬と反目と嫌悪と依存と…で、持ちつ持たれつ、どっちもどっち、とも言える。

    中程から、むむ?これはお金の話?それとも、少しずつ老いを感じていかねばならない50女の話?となったあたりから、流れがよどみだし、苦痛と言っていいくらいの感じになってきた。

    母のみならずこの娘もまた、お金のない者に対する目が、常識人のように見えてその実、辛辣である。
    バスで乗り合わせた老夫婦を「それなりの格好をしているが、二人の表情からも身体つきからも、一生お金の苦労をしてきた様子が何となく伝わってくる」と形容し、安マンションを「近代化を始めて150年後の日本の醜さがその狭い空間にこれでもかこれでもかと凝縮されて入っている」と評する。
    残酷と思うほどである。

    ただ、彼女にはその自分の位置がわかっている。自分が贅沢をするように育てられ、恵まれた人生を送ってきたということを自覚している。

    後半は、なんだ、私には関係ない話だな、という印象が強い。
    結局お金のある人の贅沢な悩みでしかない、と思わされたのだけれど、終盤にさしかかった頃、彼女が夫の哲夫に出したメールは、クールで潔く、なかなかよかった。

    主人公もその母や姉も、「みじめじゃない!」と言う悲鳴のような声をあげるほど、お金のない者、貧相な暮しを恐れる。あのね、世の中の結構多くの人がそういう生活の中に幸せを見つけて生きているのよ、と諭してあげたくもなる。

    ただ、主人公が自分が幼い頃の写真を眺めながら、幸せと気づかず幸せだった頃を思い巡らすあたりに救いはあり、お金のある人の贅沢な悩みの話であるだけでなく、幸せについての話、なのだった。たぶん。

  • 母に早く死んでほしいと願うのは不謹慎なのか?これは悲喜劇。分厚い本だけど、面白くて、最後まで飽きなかった。親の介護、夫の裏切りに疲れた主人公に救いはあるのか?百年あまり前の新聞小説、「金色夜叉」と現代の新聞小説の取り合わせが珍妙なようで、意外に効果的。

  • 衝撃的な帯の「ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?」というセリフから年老いた親の介護に疲れた女性の小説・・・と勝手に解釈してしまいましたが、どうしてどうして。

    新聞小説だけあってまさしく読み手を飽きさせず、繰るページごとにそれこそドラマが、情熱が、愕きが潜んでいて主人公のおばあさんに倣って、一ページ一ページ切り取って大事に取っておきたい箇所も数え切れないほど。
    老いを看取るということは自分もいつかは老いる、看取られるのだということに改めて気付かされた思いです。

  • 水村美苗さんの小説は、物語として、小説として、なんというか湿気をおびた濃密さみたいなのがある。ので、読み始めるときにはちょっと重い感じがして、少しづつ読むのだけど、ある程度まで読むと、止まらなくなって、一気に読み切ってしまう。

    どこまでが体験談でどこからがフィクションなのか、分からない。まさに現実からすこしづつフィクションに紛れ込んでしまうスリルがある。

    「母の遺産」の副題は、「新聞小説」で、「私小説」「本格小説」というこれまでの小説と連動している。つまり、物語にどぼっと入り込むと同時に、日本における「小説」というものに対しての、位置づけ、批評性みたいなものも常に持っているんですね。

    というわけで、小説にのめり込む快感と同時に、外側からみる知的な楽しみが同時に味わえる。

    ストーリーについては、読んでの楽しみということで。

    ちなみに、「ボヴァリー夫人」が、物語上、そして小説とはという批評性の観点から、とても大事な役割をもってでてくるのだが、これって、個人的にはすごいシンクロニシティ。

    この本と一緒に買った本が、「ボヴァリー夫人」だったのだ。

    春に出版が予定される蓮實重彦さんのライフワーク「ボヴァリー夫人論」にむけて、徐々に準備が整ってきている。

  • さすが大佛次郎賞。「これに多くの人が共感するんだろうか,だったら辛いな,とか書いて将来わたしも共感することになるのかな」という感想になるかなと思いながら読み進めたけど,最後の展開に脱帽。
    こうやって人を値踏みして見る人がいるんだな,私も値踏みされてるんだろうなと,この歳にして自覚したのも書いておきたい。

  • 介護のところはリアルでよかった。
    ところで、スノッブな前半と比較すると、後半での相続遺産の額が少ないと思えるのは私だけ? どうせなら一桁増やして、盛ってほしかった。

  • 2016.02.17読了。
    今年1冊目。


    読み終わったあと壮大という言葉が浮かんできた。

    金色夜叉の新聞小説から始まった祖母、母、娘姉妹、女三代の物語が娘姉妹の妹、美津紀目線で語られる。
    それぞれの生き方、そして主に母に対する彼女の感情が細かく描かれている。
    それぞれの生きた時代に思いを馳せながら読んだ。

    私は自分の母にあんな気持ちを抱いたことはないしこれからも抱くことはないだろうけど、早く死んでほしいという気持ちがおかしいとは思わなかった。
    彼女の母への感情も、母の老いていく姿も、夫の浮気が発覚してからの感情も、どれも私が味わったことない、経験したことのないことなのにすごくリアルで自分のことのように感じられて不思議な気持ちになった。

    暗い話が続いていたけど最後は希望がある終わり方だったのも良かった。
    単純に遺産をもらえるって羨ましいなと思った笑
    こんなに長い物語だけど、簡単に言ってしまえば母が亡くなり遺産が入ってきたという話で、それがこんなにも壮大な物語になるとは。

    水村美苗さんの本は本格小説とこれで二作品目だけど、とにかくいろいろ細かくて笑
    細かいところがいいところでもあり、まどろっこしいと思うところでもあると思う笑

  • 良かった。心理描写が練れていて、気持ちいい

  •  本作で描かれている娘が持つ母への情と、それと同じくらいの憎悪は身に覚えのあるものなので、物語を正視するのが辛くて何度も読むのを止めようかと思った。母が生きてたって死んだって母のある種の呪縛から解かれることはなくてゾッとするけれど、母との関係や母のことを全否定したいわけでもないのが母娘関係のややこしく複雑なところだなぁと、改めて感じる。美津紀たちや自分だけでなく、世の中にはこうした女がたくさん存在していて、それでもみんな生きているのだと感じられるラストを読んだ時、ちゃんと読破して良かったと思えた。

  • ブッククラブ(Fさん)

  • 他のレビューではそんなに母を嫌いにならないとか娘としてひどすぎるとかいうものがあったが、こんなにリアルに母娘の複雑な関係を書いていて、なおかつ希望をみせてくれる作品はない気がする。夫に対する違和感、世間でいう女ではなくなっていく中年女性の悲しみ、実母に早くいなくなってほしいと願ってしまう罪悪感、どれも胸がずきずき痛むほどだったが、結婚や人生に対する思い込みを取り払い違った一面を見せてくれた本作に私自身は本当に救われた気がする。

  • 女系家族の細やかな描写や些細なニュアンス、やり取りなどは大人になっても続く関係で現実では私自身、子供の頃は女どうしは細かくて面倒くさそうだなあと思っていたが、今ではこの小説でもやはり羨ましく思う。そして主人公も最後は悟ったが恵まれた部類の人だと思う。姉妹、兄弟はどこの家庭でも大なり小なり差別はあり、母の為に我慢をしたのだろうが母が言う“あなたはお利口ちゃんだから”ということ。そして主人公自身がなにより大事にしている体裁を保ってきたんだから本人の性格もあると思う。世間では体裁を一番に重んじる人がほとんどで、この母は女の人生と人としての喜び、世の中というものの核心をしっている賢い女性で主人公には辛い思いは、勿論あっただろうけど、この母に育てられた娘達は羨ましく思います。

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母の遺産―新聞小説の作品紹介

家の中は綿埃だらけで、洗濯物も溜まりに溜まり、生え際に出てきた白髪をヘナで染める時間もなく、もう疲労で朦朧として生きているのに母は死なない。若い女と同棲している夫がいて、その夫とのことを考えねばならないのに、母は死なない。ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?親の介護、姉妹の確執…離婚を迷う女は一人旅へ。『本格小説』『日本語が亡びるとき』の著者が、自身の体験を交えて描く待望の最新長篇。

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