母の遺産―新聞小説

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著者 : 水村美苗
  • 中央公論新社 (2012年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120043475

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母の遺産―新聞小説の感想・レビュー・書評

  • 2012年の作品で50代女性が主人公。私にとっては親の世代くらいになり、全く同じに共感というわけではないが、、、女の人生の苦悩の全てがここに…!という感じの辛苦のフルコース(といっても、生きるか死ぬかの生活苦とは無縁の世界の話なのでもっぱら精神的なコトに限られる)。
    同じ女としては心穏やかに読めない「恐怖」小説ですらあるが、どこか細雪的な品のよさがあって、これだけエグいのにエグさで売ってないわよという上質感にひれ伏す思い。ちょっとしたひとこまの表現のうまさにも舌を巻く。そしてこれ自体小説でありながら「小説とはなんたるものか」という批評性まで併せ持つ、なんという視点の高さ。

    何を今さら、、、を承知で言うけれど、すごい作家だ。

  • 水村美苗さんの小説は、物語として、小説として、なんというか湿気をおびた濃密さみたいなのがある。ので、読み始めるときにはちょっと重い感じがして、少しづつ読むのだけど、ある程度まで読むと、止まらなくなって、一気に読み切ってしまう。

    どこまでが体験談でどこからがフィクションなのか、分からない。まさに現実からすこしづつフィクションに紛れ込んでしまうスリルがある。

    「母の遺産」の副題は、「新聞小説」で、「私小説」「本格小説」というこれまでの小説と連動している。つまり、物語にどぼっと入り込むと同時に、日本における「小説」というものに対しての、位置づけ、批評性みたいなものも常に持っているんですね。

    というわけで、小説にのめり込む快感と同時に、外側からみる知的な楽しみが同時に味わえる。

    ストーリーについては、読んでの楽しみということで。

    ちなみに、「ボヴァリー夫人」が、物語上、そして小説とはという批評性の観点から、とても大事な役割をもってでてくるのだが、これって、個人的にはすごいシンクロニシティ。

    この本と一緒に買った本が、「ボヴァリー夫人」だったのだ。

    春に出版が予定される蓮實重彦さんのライフワーク「ボヴァリー夫人論」にむけて、徐々に準備が整ってきている。

  • さすが大佛次郎賞。「これに多くの人が共感するんだろうか,だったら辛いな,とか書いて将来わたしも共感することになるのかな」という感想になるかなと思いながら読み進めたけど,最後の展開に脱帽。
    こうやって人を値踏みして見る人がいるんだな,私も値踏みされてるんだろうなと,この歳にして自覚したのも書いておきたい。

  • 介護のところはリアルでよかった。
    ところで、スノッブな前半と比較すると、後半での相続遺産の額が少ないと思えるのは私だけ? どうせなら一桁増やして、盛ってほしかった。

  • 女の人が母親を嫌う気持ちというのは、昔ながらのテーマである男が父親を憎む気持ちと、似ているようで全く違うんだな、と感じた。
    ここまで詳細に、母親の表情、言葉、匂い、声、仕草、老醜、娘にとってそのそれぞれがどのように嫌であるか具体的な嫌悪感の有様を示すことができる(そしてそれを小説にすることができる)とは、男と男親の関係からは考えられないのではないか?
    母の死に至る介護小説とも言うべき前半と、母の死後、箱根のホテルで自分のこれからと向かい合う後半に大きく分かれる構成だが、全体を通じて女性の老化と金の話についてはこれでもかというほどの呵責のないリアリティが汪溢する。
    希望が見えるように思えるのはこの長大な小説の最後の数ページである。しかもその救いは直接的には思いがけない多額の収入によって、そして間接的にはこの国を襲った思いがけない巨大な不幸によりもたらされたと読めなくもない。
    恐ろしい小説である。

  • 2016.02.17読了。
    今年1冊目。


    読み終わったあと壮大という言葉が浮かんできた。

    金色夜叉の新聞小説から始まった祖母、母、娘姉妹、女三代の物語が娘姉妹の妹、美津紀目線で語られる。
    それぞれの生き方、そして主に母に対する彼女の感情が細かく描かれている。
    それぞれの生きた時代に思いを馳せながら読んだ。

    私は自分の母にあんな気持ちを抱いたことはないしこれからも抱くことはないだろうけど、早く死んでほしいという気持ちがおかしいとは思わなかった。
    彼女の母への感情も、母の老いていく姿も、夫の浮気が発覚してからの感情も、どれも私が味わったことない、経験したことのないことなのにすごくリアルで自分のことのように感じられて不思議な気持ちになった。

    暗い話が続いていたけど最後は希望がある終わり方だったのも良かった。
    単純に遺産をもらえるって羨ましいなと思った笑
    こんなに長い物語だけど、簡単に言ってしまえば母が亡くなり遺産が入ってきたという話で、それがこんなにも壮大な物語になるとは。

    水村美苗さんの本は本格小説とこれで二作品目だけど、とにかくいろいろ細かくて笑
    細かいところがいいところでもあり、まどろっこしいと思うところでもあると思う笑

  • 良かった。心理描写が練れていて、気持ちいい

  •  本作で描かれている娘が持つ母への情と、それと同じくらいの憎悪は身に覚えのあるものなので、物語を正視するのが辛くて何度も読むのを止めようかと思った。母が生きてたって死んだって母のある種の呪縛から解かれることはなくてゾッとするけれど、母との関係や母のことを全否定したいわけでもないのが母娘関係のややこしく複雑なところだなぁと、改めて感じる。美津紀たちや自分だけでなく、世の中にはこうした女がたくさん存在していて、それでもみんな生きているのだと感じられるラストを読んだ時、ちゃんと読破して良かったと思えた。

  • ブッククラブ(Fさん)

  • 他のレビューではそんなに母を嫌いにならないとか娘としてひどすぎるとかいうものがあったが、こんなにリアルに母娘の複雑な関係を書いていて、なおかつ希望をみせてくれる作品はない気がする。夫に対する違和感、世間でいう女ではなくなっていく中年女性の悲しみ、実母に早くいなくなってほしいと願ってしまう罪悪感、どれも胸がずきずき痛むほどだったが、結婚や人生に対する思い込みを取り払い違った一面を見せてくれた本作に私自身は本当に救われた気がする。

  • 女系家族の細やかな描写や些細なニュアンス、やり取りなどは大人になっても続く関係で現実では私自身、子供の頃は女どうしは細かくて面倒くさそうだなあと思っていたが、今ではこの小説でもやはり羨ましく思う。そして主人公も最後は悟ったが恵まれた部類の人だと思う。姉妹、兄弟はどこの家庭でも大なり小なり差別はあり、母の為に我慢をしたのだろうが母が言う“あなたはお利口ちゃんだから”ということ。そして主人公自身がなにより大事にしている体裁を保ってきたんだから本人の性格もあると思う。世間では体裁を一番に重んじる人がほとんどで、この母は女の人生と人としての喜び、世の中というものの核心をしっている賢い女性で主人公には辛い思いは、勿論あっただろうけど、この母に育てられた娘達は羨ましく思います。

  • 友人のおすすめだったが、私には合わなかった。とにかく暗くて重くて醜くて、読んでいると、どんどん滅入ってくる。申し訳ないけど後半は飛ばし読み。

  • “新聞小説”とタイトルにもあるが、実際に読売新聞の新聞小説だったらしい。
    そのためか、するすると読み易かった。

    引用にも書いたが、この小説中最も衝撃(文字通り衝撃)を受けたのが、次の部分。

    >老いの酷たらしさを近くで目にする苦痛--自分のこれからの姿を鼻先に突きつけられる精神的な苦痛からも自由になりたいのではないか。<

    次々と親を見送り、夫との離婚を考え、一人で暮らしていく算段を整える。
    身軽になることへの渇望というのは、この年ぐらいの女には誰にでもあるのではなかろうか。

    この主人公は幸せである。
    分かり合える姉がいる。
    この姉との距離感がいい。羨ましい。

  • 新聞小説って毎回書くのに苦労するんですね。
    ストーリーに一貫性がないし、場当たり的に書いてつないでるのがよくわかる。
    終わり方も中途半端です。

  • 女系家族の母と娘姉妹の葛藤と相克、祖母からつながる明治は金色夜叉の世界からボヴァリー夫人を通り抜け近代の女性の自律と理性までを、老親の介護と看取り尊厳死、そして遺産の現実的な意味合いを絡めつつ描いた大河。
    同年代より上の女性には勧められません。勧めたら何か底意や願意があると受け取られかねない。

  • 母と娘の確執。もうひとつだなあ。

  • 生々しい。それだけ上手ってことなんだと思います。

  • 後味の悪い作品でした
    妙にリアリティーがあるところが余計に疲れて嫌でした
    主人公の美津紀さんが自分と同年代なので、余計にリアルに感じるのでしょう。

    夫の浮気、不本意な病院で最期を迎えた父に対する同情、自分勝手で早く死んでほしいと願う母のことが、だらだらと500ページ以上にわたり書いてあります
    そして、やたらと金勘定が多い

    母が自分の母にそっくりで、誰もこんなものなんだとちょっと安心もしましたが、不快でした

  • 「早く死んでほしい」
    母親への複雑な感情と確執。
    夫への違和感。

    ああ、わかるなあ。
    綺麗事では片付かない人間の感情。
    特に、他人である夫婦間では、いったん感じた違和感は、ずっと感じ続けながら生活していくもの。少なくとも自分はそう。

    50代の女性である主人公は、夫の浮気の証拠を見つけてしまう。そして「ようやく」死んでくれた母親からは多額の遺産。

    後半、浮世離れした芦ノ湖畔のホテルで、浮世離れした宿泊客に出会い、次第に自分を取り戻していく「私」。離婚を決心し、あれこれと将来設計を考える場面だけがやけに現実的でいじましい。

    しかし3800万の遺産、身体は弱いとはいえ仕事もある。そのうえ慰謝料ももらえて後腐れなく離婚できるなんて恵まれているよなあと、下世話な感想を持ってしまう自分です。親の世話からも解放されるし、そりゃ離婚して1人で生きて行く方がいいに決まっている。

    水村美苗は「私小説」も「本格小説」も読んだけど、好きな作家です。でも、なんとなく男受けはしないような気がする。男で好きな人は珍しいかもしれない。

  • 面白い。一気に読める。けどキライ。主人公と「死んで欲しい」その母は実はそっくりなのだ。

  • 感動ものかと勝手に想像していたら、全然違った。
    あの母が死んだー。見栄っぱりで、我儘で、周囲を翻弄するあの母がー。
    から始まる、姉妹が母親の思い出を回想する話。
    最初は親子について考えさせられ、いびつな関係に驚き、感動を受けながらも、長いせいか後半若干間延びしてしまう。
    でも、人には勧められる作品。

  • 親に財産があるっていいなあ。と思った。
    どんなに付き添いが大変でも、お世話や相談には他の人の手を借りれる余裕があるって、とても恵まれている。

    あ、本の内容からはそれました。
    親の介護&死、本人の離婚、家族の歴史、そういうものが上手に織り込まれたものでした。親に死んで欲しいと願う複雑な気持ちに、なんていうか、そうだよねと寄り添うように読んでいきました。

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母の遺産―新聞小説の作品紹介

家の中は綿埃だらけで、洗濯物も溜まりに溜まり、生え際に出てきた白髪をヘナで染める時間もなく、もう疲労で朦朧として生きているのに母は死なない。若い女と同棲している夫がいて、その夫とのことを考えねばならないのに、母は死なない。ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?親の介護、姉妹の確執…離婚を迷う女は一人旅へ。『本格小説』『日本語が亡びるとき』の著者が、自身の体験を交えて描く待望の最新長篇。

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