国が亡びるということ

制作 : 佐藤 優 
  • 中央公論新社
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120043710

作品紹介・あらすじ

震災復興、TPP、ギリシア危機、中国・ロシア・北朝鮮との付き合い方…、いつからだろう?日本で「当たり前」の思考が「当たり前」と受け取られなくなったのは。

感想・レビュー・書評

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  • 震災復興、TPP、ギリシア危機、中国・ロシア・北朝鮮との付き合い方…小泉政権下ではともに対極の陣営に組みしていた二人が語る『これからの日本と世界』について。僕はこれを読んで竹中氏への認識を改めました。

    はじめにひとつお断りしておかなければならないことがあって、今まで僕は竹中平蔵教授のことを『小泉政権下で新自由主義政策を推し進め、格差社会を生み出した張本人の一人』と思っておりましたが、この対談を読んで、そういった認識は『誤解』であったのだなと思いました。

    本書は竹中平蔵氏と佐藤優氏、小泉政権下では相反する立場であった人間が対談という形式で『現在』の政治や国際社会を語るというものです。竹中氏は経済から、佐藤氏は外交・インテリジェンスからそれぞれ異なった視座から語られる言葉の一つ一つが非常にスリリングな内容となっておりました。

    竹中氏の消費税増税の是非をめぐる発言に始まって、小泉政権の行った政策から喧々諤々となっているTPP参加の意義。これをロシアや中国はどのように見ているのか?さらには世界的に見た日本の官僚の『低学歴』についても衝撃的なことが語られ、過去問を解くことに特化し、指定された時間内で答案に再現する力のみに長けていても、それは『入場券であって十分条件ではない』という話や、中世のスコラ哲学における『悪魔論』を引き合いに出して現在の民主党は『正解を知っているからこそ、「間違い」ばかりを選んでエラーを積み重ねている』というパンチの聞いた皮肉には思わずにやりとさせられました。

    さらには現在世界でもっともホットな話題であろうイランとイスラエルの問題では佐藤氏のインテリジェンス能力の真骨頂が発揮され、裏ではさまざまな国やインテリジェンス機関が動いていることや、ヨーロッパにおけるギリシャ問題も竹中氏は経済の視点から、佐藤氏は地政学、世界史的な立場から解説されてあり、ギリシャは東ローマにルーツを持った国で『ローマ法』の伝統を持っていないという点で厳密には『ヨーロッパ』ではない。という分析は新鮮でありました。

    『人間という動物が常に成長をしてきたのは、殺し合いをせずに生き残っていくための英知なのです』という最後のほうで語られている言葉がとても印象に残っていて、『喰うか喰われるか』の国際社会の中でどのように生き残っていくかという問いにヒントを与えてくれるものであると思います。

  • 佐藤勝さん、最近よく目にするので購入。
    彼の言うインテリジェンス層というのは私と直接繋がり在る人々では当然ないのだが、そういう人たちの考えに興味はある。
    のだが今併読している読書の技法によればそういう高度な知識を自分のものにするためには基礎土台があるのが前提なので、私はやはりそこから組みなおさないとこの本だってキチンと理解出来てないわけよね、と思いながら読み終える。
    ギリシアの経済危機が単なる数字の問題でなくて、西暦三桁代の頃から繋がる、宗教や価値観の違いから端を発しているとは思いもしなかった。
    ロシアは地球温暖化を歓迎しているとか、米英はイランの核開発阻止のため要人の暗殺すら躊躇無いラインにきているとか、何それ陰謀論?虐殺器官のネタ?みたいな事が、本気で書かれている。
    そしてそれが遠い国の話でなくて、日本も否応無く対処していかなくてはならない問題なのだという。
    となると、自分の頭の空っぽさがやばいんで無いかと今更焦る。
    今の国政の話もずばずばと出てくるが、最終章は自立と成長を求める内容。そういう本を最近よく目にする。己の力でこれから来る難問、状況を切り抜けていかなくてはならない、そのために成長し続けなければならない。

  • この二人…噛みあうのかと思っていたら、しっかり噛み合っていた(笑) 新自由主義という経済政策はないという竹中さんの言葉は、あたり前なのだけどハッとさせられる。橋下市長をファシズムではなく、マッカーシズムで分析する佐藤さんの見解も唸ってしまった。

  • リーダーはみんなを説得しなきゃ。

  • 【由来】


    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】
    ・「政治も外交も、いわば言葉の芸術なんですね」(P189)
     「外交とはまさしく言の葉による戦争なんだなあ」(P93)これは「武器なき環境戦争」から

    ・ポピュリズムと民主主義の違い

    佐藤「国民がエリートに対して信頼感を持つかどうか」
    竹中「リーダーがみんなの言うことを聞くか、リーダーがみんなを説得するか」(P196)

    佐藤「困った、苦しいというところから抜け出そうとする中で、新しい知恵が出てきます。そうしてその知恵が新たな成長の原動力になるわけですから」(P200)
     →見城徹とも共通?

  • ○経済学者の竹中平蔵氏と作家・評論家の佐藤優氏との共著対談本。
    ○(少し古いが)民主党政権における財政、金融政策や外交政策の誤りについて、具体的な解説を行ったもの。
    ○自民党政権に移った現在であっても役に立つ、かなり深い内容。
    ○両者の知見の深さが感じられる。

  • 2013/03/15:読了
     佐藤さんという人は、誰とでもこういう対談集を出せるんだなぁ。
     「小沢革命政権で日本を救え」 は、副島隆彦さんとの対談だったし、
     今度は竹中さん。

     佐藤優というのは、対談相手にとって、心理カウンセラーみたいな
     ものなのかもしれない。

  • 歴史の勉強や古典を読むことは今の社会や政治を考える上で、大切と思わされる。といっても、経済学の古典を読みこなす力も時間もないので、こういった本でそのエッセンスに触れることができたのがよかった。新聞をもう少ししっかり読むようにしようと思いながら読了。

  • ふぅん、今の日本はこんな状況なのか、と読んで感心するだけの私が悲しい。

    大学では、特に理系は、企業からお金を集めている。その企業からの要求に素早く応えなければならないから、応用ばかりが重んじられて、基礎が疎かになっているって聞いたことがある。
    でも、アメリカでは、ちゃんとその基礎のところに重きがおかれている。

    要は、重要なものは何か、が分かっているかいないかなのかな。

    何れにせよ、教養0の私は悲しくなるので、これから頑張る。

  • 世界を冷静に見るためには教養が必要であることを痛感。
    本質的なことを議論できなくなっている日本の状況、
    現在の世界情勢を違った角度から見ることが出来た。
    大きな”ダイジ”なところで打ち手を間違えている状況を
    早く脱するためには一人ひとりが基本に立ち返りきちんとした
    議論を積み上げていくことが必要なのだろう。
    成長は目的ではなく人類が生きていくための英知であること。
    というのは慧眼だと思いました。

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著者プロフィール

1951年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部教授、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所所長。経済学博士。一橋大学経済学部卒。日本開発銀行、大蔵省財政金融研究所主任研究官、ハーバード大学客員准教授等を経て、現職。2001年小泉内閣で経済財政政策担当大臣、2002年に金融担当大臣、2004年には郵政民営化担当大臣を兼務。2005年総務大臣。この間、2004年には参議院議員。2006年小泉内閣の解散とともに辞職。著書に『研究開発と設備投資の経済学』(1984年、サントリー学芸賞受賞)、『対外不均衡のマクロ分析』(1987年:共著、エコノミスト賞受賞)、『日米摩擦の経済学』(1991年)、『民富論』(1995年)、『経済ってそういうことだったのか会議』(2000年:共著)、『構造改革の真実――竹中平蔵大臣日誌』(2006年)、『闘う経済学――未来をつくる[公共政策論]入門』(2008年)、『改革の哲学と戦略――構造改革のマネジメント』(2008年:共著)など。

「2013年 『パターン・ランゲージ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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