月の裏側 (日本文化への視角)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120044243

作品紹介・あらすじ

人類学者の眼差しが捉えた日本、日本人、日本文化。20世紀後半の思想界をリードした知の巨人は、かくも深く日本を理解し、そして愛した。

感想・レビュー・書評

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  • 「月の裏側」なんとも魅力的なタイトルである。
    レヴィ=ストロースといえば構造主義を生み出した文化人類学者で、構造主義といえば学生の頃、浅田彰のポスト構造主義とか中沢新一だとかがベストセラーになって、ペダンティックだった学生たちはこぞって読む。よくわかんないけど読む。そう、で構造主義とは現象を分析するとき、目に見えるものを比べるのではなくその背景にあるものの構造を見極める姿勢を指す。サルトルの実存主義と対立する考え方だ。ヨーロッパがなんでも進んでて正しくて偉いという考え方に真っ向から反対した。

    「月の裏側」は日本文化への視覚とサブタイトルにあるように、日本文化を語る。日本の神話がどこから来てどこへ流れていったのか、日本とヨーロッパの文化が時にあべこべであること、日本の芸術、浮世絵。世界に比較するものがない縄文文明のオリジナリティ。

    そして、日本は世界で唯一独自の文化を忘れずに「科学技術がもたらした変革との狭間である種の均衡を見出すのに成功してきた」 

    20世紀、世界の中心と勘違いしてアイデンティティが崩壊したヨーロッパと文化的に反対側、月の裏側にある日本こそが重要な鍵を握るという示唆。

    ハイブリッドして過去を捨てず新しいモノを創り出していく独自性を日本人は大切にしていきたいもんですね

  • レヴィ=ストロースから見た日本文化論。ユーラシア大陸の西端のフランスと東端の日本を比較して、神話の共通項などを語りつつ、鋸やろくろの使い方など日本の独自性を強調する。
    民俗学、社会人類学の大家に日本を褒められて悪い気はしないが、やや思い込みがあるかもと感じた。

  • [鹿大図書館・冊子体所蔵はコチラ]
    https://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB16055396

  • 西洋人は遠心的自我を持つ
    東洋人は自我を消滅させようとする
    日本人は求心的自我を持つ。

    日本人は置かれた状況のために行動する。
    自分で選んだわけでも望んだわけでもないことに責任を取ろうとする。
    ということか?

    この思想をレヴィストロースは肯定的にとらえているようだ。

    「人々が常に役に立とうとしている。どんなにつつましい地位の人でも。
    それでいて寛いだ感じでそれを行おうとする人間性」

  • レヴィ=ストロースの考える日本。
    神話の類似性についてはなるほどと思うところ、強引ではなかろうかと思うところとありましたが仙厓についての見方や考え方はユーモラスさを中心に見ていた自分が恥ずかしくなりました。

  • 哲学

  • レヴィ・ストロース 月の裏側
    読了

    基本的に日本人が日本を讃える類の本は、バカになるので読まないけども、外国人のものなら、ときどき読もうかな、と思うときもある

    この本も、レヴィ・ストロースとはいえ、帯が日本人ってやっぱり素敵なんだよね!的雰囲気を出してたので、編集に怪しさを感じて遠ざけてましたが、なんかのところで、レヴィ・ストロースが日本好きだったののを思い出させる記事に出会って、ちょっと日本を自問してる昨今、そういえば何て言ってたんだっけ、すげー気になる、と思って手に取ってみた

    日本を自問するうえで、少しだけテーマになってるジャポニスムにまで繋がってたのは意外だったけども、構造主義的観察の対象として日本をみる視点は参考になりつつ、基本的に薄い本なので内容もそんなに深まらない。日本語も話せない自分に日本を語る資格はない、という自覚のもと、かなり控えてもいる。

    そして、このなかで、僕なりの日本的方法というのを、発見してしまった。
    レヴィ・ストロースは一瞬言ってるだけだけども、これが今の日本的独創性と言われてるもののもつ論理的正しさの割にかなり胡散臭さがある部分を、ネガ像にしてしまって、胡散臭くない実際に近いポジ像的方法なんじゃないか!!と思ってる。
    ちょっと深めていきたい。

  • 私はまだ人類学とかそういうのに疎くて、でもなんだかこの人の言っていることが面白くて、読んでいるのだけれど、


    たまに「この人の言っていることは、持論を展開させるためのこじつけだろうか。」と思ってしまうことがある。

    それはもちろん、私がまだよく理解していないまま読み進めているからであって、それが自分なりに理解できるようなところまで行けたらいいな、と思う。


    だから疑問点とか、書いておこう。

    思うんだけど、とある神話の内容について言及している時、(そこがこじつけのようにも思える、となった部分でもあるのだけど)各地に点在している神話やら民話を例に挙げていて、その共通点やら類似点を挙げている部分。

    そういうことができるのはつまり、世界各国少数民族、部族を含めすべての神話なり民話を網羅した上で、その類似個所についてあげるのであれば、それは全体の中の類似点としてそれをどういう立ち位置で見ればよいかを理解することができるのだけれど、多分この人がやってるのはそういうんじゃないんだよねぇ?

    「自分の調べた中で」(もちろんそれはきっと途方なまでに膨大で深遠なものなのだということは承知の上で)この類似点についてはこういうことが言える、というような関係性とか機能を説明する小さな説明書を作っている、という感じなのかなぁ?でもそれは最終的にどこへ向かっていくんだろう?

    という私の考え方そのものが、彼の築いている思考回路をまだ理解していない既存の古いものの使いまわしなんだろうか。

    「構造主義」というものがまだ私には見えてない状態なのかもしれない。

    ということを考えながら次に進んでいきたいと思う。

  • 日本神話は日本神話で完結するものだと思い込んでいたが、世界の伝承との似通いから、同じ物語が人々の移動によって伝わっていったのかも知れないことに視界が広くなった気分。
    ただ、著者があまりに日本を美化していていたたまれない…。
    本人も来日して思い込みに気づいたところもあったようだけれども。

  • 異文化間の神話に共通項を見いだそうとする牽強付会な姿勢こそが、アンチ野生の思考じゃないのかと思うのだが、どうだろう。
    記紀を神話のほぼ完全な状態というが、その編纂は古代において体制翼賛の工夫から生まれた国家プロジェクトであることを知るがゆえに、そんなにピュアなものに思えなかったり。
    日本の近代の出発点が革命や批判精神でなく復古だったことが述べられている。たぶんその辺りの理由で平安時代の書物に傾倒しているのかなと思う。でも、むしろ「もののあわれ」は宣長以降の近代的評価というか。日本人の日常的直感としては、網野善彦的な室町の子が馴染みやすい気がする。
    西洋が断片的にしか野生的なものを引き継いでいない、たち返れない溝があるという喪失感が、異様なまでに日本という異世界を意識させている。現代の日本びいきな外国人の中にもきっとこの様に精神分析できる人が多いのでは。
    日本から見れば西洋近代思想こそ、ギリシャ・ローマ、キリスト教、ゲルマン的思想などを統合した、西洋版野生的思考の総集編のように感じるが、当の中の人は意外とそれに疎外感があるのでしょう。

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著者プロフィール

1908年11月28日ベルギーに生まれる。パリ大学卒業。1931年、哲学教授資格を得る。1935年、新設のサン・パウロ大学に社会学教授として赴任、人類学の研究を始める。1941年からニューヨークのニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチで文化人類学の研究に従事。1947年末パリに戻る。1959年コレージュ・ド・フランスの正教授となり、社会人類学の講座を創設。1973年アカデミー・フランセーズ会員に選出される。1982年コレージュ・ド・フランス退官。2008年プレイヤード叢書(ガリマール社、フランス)全1冊の著作集Œuvres刊。2009年10月30日、100歳で逝去。著書『悲しき熱帯』(1955)〔全2巻、中央公論社、1977、中公クラシックス、2001〕、『野生の思考』(1962)〔みすず書房、1976〕、『神話論理』四部作『生のものと火を通したもの』(1964)〔みすず書房、2006〕『蜜から灰へ』(1966)〔みすず書房、2007〕『食卓作法の起源』(1968)〔みすず書房、2007〕『裸の人』(1971)〔二分冊、みすず書房、2008/10)他。

「2023年 『構造人類学 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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