猿の悲しみ

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 139
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120044250

作品紹介・あらすじ

殺人罪で服役8年、独身、16歳不登校の息子あり。職業:弁護士事務所の美脚調査員風町サエ32歳。ついでに命じられた殺人事件の調査。歪んだ愛の発端は34年前に遡る-口は悪いが情に厚い。著者渾身の長編ハードボイルド。

感想・レビュー・書評

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  • 自分が呼んできた中では珍しく、樋口センセの作品で女性が主人公。
    そして軽妙な会話のやりとりも無く、立場こそ「弁護士事務所の事務員」ながら、女性警部の刑事物って見方のほうが合ってる気がする。

    でも、この主人公、風町サエさんがカッコイイんですわー。
    女手ひとつで息子を育てることを最優先にして、それ以外の価値感はどうでもいいって割り切りかた。
    いくつかの特技を持っていて、それが調査には役に立っているけど、しかし一番の強みはこの立ち位置だよなー。

    そんな女性視点での珍しさは感じても、物語のビターさ加減は樋口センセらしかった。
    むしろ普段よりもビターすぎたくらいか。
    誰がこの結果で幸せになるのか不明なんだけれども、それでも彼女の立ち位置がしっかりしているからトレードオフにも揺らぎは無いし、そして例え悪がはびころうと自分と息子に関わってこなければそれでいいし、そして息子には関わらせないようにするって覚悟。
    エンターテインメントとしては納得できなくても、キャラクターの言動としては十分に理解できたなー。

    作品としてはそうした事件の内情が、終盤にドドーッとしわ寄せ喰らっていたのがどうなのかなーって感じたりも。
    そこでしか明らかにならない、できないっていうのも分からないでは無いのだけど、カタルシスは無かったよね。

  • 風町サエシリーズ
    16歳の時、殺人罪で服役中に息子を出産し、出所後は弁護士事務所で働く風町サエ。依頼主の要望に応えるために、時には非合法な手段を用いることも。そんな彼女が依頼されたのは野球選手の離婚に関する調査。同時に出版関係者の殺人事件を調べると、背後にはNGOを舞台とした巨大な闇が・・・
    サエの周囲に面白いキャラクターの面々が揃っている。息子への愛情は少々引いてしまう感じも、テンポ良く面白かった。しかしながら、最後の「新井」というのが分からなかった。続編に関係しているのだろうか??

  • 7月-6。3.0点。
    未婚の母の探偵。柚木とは違うが、似たタッチ。
    離婚問題と、ある女性編集者の殺人事件を同時に扱う。
    軽快なタッチだが、何故か時間がかかった。
    まあまあかな。
    ラストは、唐突感が大きかった。

  • この作家、大好きだったんだが新作が出なくて、もう廃業したのかと思ってた。
    図書館で見つけた時は、久しぶりで嬉しかった。
    読んでて、楽しかったです。

  • 久々の新作。
    本屋で見つけて感激!
    印象は…、女版・柚木草平?
    内容はなかなか面白かったけれど、最後の最後がなんとも腑に落ちたとは言い難いかな…。

  • 大ファンである樋口有介の作品、最新作。

    主人公は年齢32歳で美人かつ美脚、しかし殺人の前科があって、高校生の息子がいるという女性調査員。女性の一人称ハードボイルド口調というのは、私の読書歴の中でも初めてで、さすがに脳内イメージしにくかった。
    しかも、物語のラストで明らかになる学歴もすごい。
    なおかつ、この一作だけでは、主人公の過去の謎はまるで明らかにされない。
    スマッシュヒットになった作者の小説「ピース」が女性に評判が悪いのは、女性にハードボイルドは受けないせいだ、と言い切った私だけに、女性読者がこの女性主人公一人語りのハードボイルド小説をどう評価するのか非常に興味深いところでもある。
    私としても、今までの樋口有介作品のイメージが焼きついているだけに、語り口がどうしても男の声で耳に入ってきて困った。
    物語の中盤ぐらいまでは、何度も何度も自分に「これは女性の声だ」と言い聞かせながら読み続けた。
    難点といえば難点だが、樋口有介の小説なら、30年来の大ファンの私としてはページを捲る手を止めるわけにはいかない。

    主人公、風町サエ。
    小学生時代からタイ料理店を経営していた元ムエタイのチャンピオンだったノラビットさんに習ったというムエタイの習熟者で、格闘にも強い。
    美女ながら男も簡単にのしてしまうというのは、私のイメージではバイオハザードのミラ・ジョジョビッチである。彼女が日本人になり美女に化けたという雰囲気。
    理由ありの息子の父親が誰かは、随所でそれとなく読者に想像させるが、最後まで明らかにはされない。
    これはシリーズ化させる予定なのだろう。
    新宿2丁目にあるバーの場面で、彼の代表作の主人公であるルポライター柚木草平と思わしき男性がちらっと登場するのはご愛嬌か。
    おお樋口さん、洒落っ気があるじゃないかと思わず唸ってしまった。

    内容は、プロ野球選手とモデルの離婚話の仲裁(?)依頼から始まり、別の殺人事件で容疑者に仕立てられそうになった男の調査をしているうちに、その男も殺され、さて事件の裏には何が? 犯人は誰か?
     というものだが、相変わらず登場人物のそれぞれのキャラは魅力的で、そこそこ楽しめる。
    だが読み終えたあと、さすがに女性のハードボイルド語りは厳しいものがあるなあ、というのが率直な感想だ。
    やはり樋口さん、男性主人公のハードボイルド小説を書いて欲しいというのが本音です。
    ところで、彼は昨年休筆活動に入ったのではなかったか?
    この作品は今年の1月から「Web小説中公」に連載されたものらしいが、休筆は撤回されたのだろうか?
    だとすれば、私のようなファンにとっては嬉しい限りであり、次作も心待ちにしたい。

    • たくやんさん
      とても納得のレビューでした。
      ただ、1点だけ疑問が。
      「物語のラストで明らかになる学歴」というのは、そのままの意味ではない気がします。
      「人...
      とても納得のレビューでした。
      ただ、1点だけ疑問が。
      「物語のラストで明らかになる学歴」というのは、そのままの意味ではない気がします。
      「人生勉強の」もしくは「人間観察の」という意味の揶揄だったのではないでしょうか?
      そのためにわざわざ傍点が付いていたのかなと思いました。
      2013/07/08
  • 初読み作家さん。
    んー、男性作家が女性を描くのが基本的に苦手なのかも。
    あまり集中出来ず、読み終えるのに時間がかかってしまった。
    他の作品も読んでみないと、まだなんとも言えないかな。

  • 調査が非合法すぎるけど。

  • *殺人罪で服役8年、独身、16歳不登校の息子あり。職業:弁護士事務所の美脚調査員風町サエ32歳。弁護士事務所の調査員として容疑者の男に会うのだが……著者渾身の長編ハードボイルド*

    「行き交う誰かの人生は、しょせん全て他人事」のスタンスのサエが飄々としていて、とにかくカッコいい。 一撃で敵を組み伏す場面も痛快。ストーリーも面白く、樋口節ならではの世界観も健在。シリーズに期待。

  • 久々に読んだ推理小説。設定も面白かった。シリーズの続きが読みたい。

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著者プロフィール

1950年、群馬県生まれ。業界紙記者などを経て、88年『ぼくと、ぼくらの夏』で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビュー。『風少女』で第103回直木賞候補。著書に『礼儀正しい空き巣の死 警部補卯月枝衣子の思惑』、「船宿たき川捕り物暦」シリーズの『変わり朝顔』『初めての梅』(以上、祥伝社文庫刊)など。2021年10月、逝去。

「2023年 『礼儀正しい空き巣の死 警部補卯月枝衣子の策略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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