展覧会いまだ準備中

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120044366

作品紹介・あらすじ

学生時代は応援団に在籍していた変わり種学芸員の今田弾吉。東京郊外の公立美術館に勤める彼は、職員の中で一番下っ端。個性豊かな先輩たちにコキ使われながらも、「上の命令は絶対」という応援団精神を発揮して、目の前の仕事に追われる日々を送っていた。自ら企画立案した美術展の実現なんて遠い夢。しかし美術品専門運送会社の美人社員・サクラとの出会いと、応援団の大先輩からある一枚の絵を鑑定依頼されたことが、弾吉の心に、何かのスイッチを入れたのだった。

感想・レビュー・書評

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  • どんなにがんばっても体育の成績は3止まりだった、運動音痴の私。
    張り切って観戦するのはフィギュアスケートくらいなのだけれど
    スポーツの試合を、声を振り絞って応援する人を見ているのは、なぜか大好きで。

    というわけで、2メートル近い長身に力をこめ、時にはわざわざ学ランまで着て
    卒業して何年もたつ母校の運動部の、会ったこともない後輩達から
    ボクシングの試合でこてんぱんにされている、意中の彼女、
    愚痴ばかり言う父にがっかりして将来に希望を持てない中学生、
    果ては、時のはざまからふと現れる江戸時代のうらぶれたお侍まで
    必死になって応援してしまう弾吉は、かなり好みのタイプ。

    しかもこの弾吉、4年間応援団員として過ごした大学を卒業した後
    別の大学の大学院に進んで資格を取り、今や美術館の学芸員となって
    大好きな絵画のために走り回っている。 うんうん、いいではありませんか♪

    やりたい仕事に就けず鬱々と過ごす先輩も多い中、
    せっかく夢みた仕事に就けたのに、展示会の企画はことごとくボツにされ
    いつしか雑事に追われる日々にも慣れて。。。
    みんなを応援してばかりだった彼が、同僚の個性的な学芸員たちの仕事ぶりに触れ、
    「俺はまだ声しかだしていない」と気合いを入れる姿に元気づけられます。

    弾吉のやる気の源となる、江戸時代に描かれた羊の絵がとても魅力的で
    凹組によって試作された羊フィギュアが欲しくてたまらなくなります。
    (そうそう、山本さんの『凸凹デイズ』に出てきた、凹組の懐かしい面々が
    ちょこっとどころか、かなり大手を振って出てくるのです♪)

    タイトルで、展覧会の「覧」の字の下の部分が、どう見ても口ひげになってるのに
    どこにもひげっぽい記述がなくて、あれれ?と思っていたら
    最後の最後にまさかの形で出現するのも
    タイトル通り、弾吉が「いまだ準備中」であることも、いかにも山本さんらしい。
    春という季節も相まって、ちょっとムリかな?と諦めていたことに
    挑戦する勇気をくれる物語です。

  • 美術館の学芸員とそのお仲間のお話。
    うーん、とりたててすごいエピソードや事件があるわけでもない。
    主人公は大学の時応援団の団員であり、その先輩や自分の生き方に対して様々な疑念を抱きながら、
    何となく人生の目標も見出せないまま、仕事を続けているという話なのだが。
    結局何が書きたかったのだろう。
    私にはよくわからん。
    話の筋としては、別れた元カノとや、出入り業者の若い女子とのちょっとした恋話などもあり、
    そこそこ楽しめるのだが、さほどドキッとしたり、感動したりするような内容もない。
    作者独特のユーモアのある語り口は相変わらず面白いが、
    端的に言えば、インパクトにかける中途半端な感のある小説でした。

  • 美術館に務める学芸員たちの話。

    著者のお仕事小説は、元気になれて大好きです。
    今回は、まるきり知らない美術館と言う舞台。
    なるほどな、と新しい世界を垣間見ることが出来ました。

    凹組との絡みは、相変わらずファンには嬉しい設定ですね。

  • うーーん、☆2つに近い3つという感じ。
    美術館学芸員のお仕事はおもしろかったし、どこがダメだったというのもないんだけど、引き込まれなかった。

  • 一生夢を持ちながら生きていくことについて考えた。
    そして、周りに若い人がいて、ゆめいっぱい抱えて歩いている人を見られる幸せっていいかもーと思った。
    日々の中で、夢って少しずつ忘れ去られてしまうこともあるけど、いつまでも夢に息を吹き込み続けていたい。

  • 美術館で学芸員をしている今田弾吉の日常を描いた小説。
    なんとなく生きていたのであろう弾吉が開きたい展示と出会い、根回しをしているところでふわっと終わってしまった。お侍さんの正体は簡単に予想がつくが大きな山場となることもなく重要そうなのに蛇足感がありちょっと微妙。
    元カノや羊のアドバルーンを飛ばす会社の描写が詳細だと思ったら他作品とのリンクのよう。すくなくともこの作者さんの一冊目で読むには失敗だったかな。

  • 久々山本幸久作品。
    キャラクターは個性的でオモロそうなのが多いけど、印象に残りにくいのはなんでだろうと考えてみた。

    この小説、お話として終わってないからなんだと気づく。タイトル通り「準備中」で終わってしまっているんや。それもかなり中途半端に準備中、続編を書くつもりなのかも知れないが、やっぱり展覧会のせめて直前までは書いてほしかった。

    福助展覧会はめども立たず、八木橋のフランス行も決まったばかりのところ、マサヒコの夢もまだまだ書き込めそうだし、サクラのボクシングもそう。まぼろしの福助も何もしてないし…

    伏線回収全然終わってないのがとっても残念。切に続編希望

  •  なんとなく終わってしまった。というのが率直な感想。

     確かに準備中。

  • お仕事小説シリーズ

    八王子 野猿公園内にある小さな美術館
    そこに働く学芸員や仲間たちのお話

    美術館って、シーンとして美しいイメージだったけど
    中はこんなに戦争なんだ(笑)
    ひとつのイベントに何年も準備がかかるなんて
    ちっとも知らなかった。

    乾福助の展覧会、実現するといいな

  • 続きが読みたくなる話だった。

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著者プロフィール

山本幸久
一九六六年、東京都生まれ。中央大学文学部卒業。編集プロダクション勤務などを経て、二〇〇三年『笑う招き猫』で第十六回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。ユーモア溢れる筆致と、魅力的な登場人物が読者の共感を呼び、幅広い世代から支持されている。主な著作に『ある日、アヒルバス』『店長がいっぱい』『大江戸あにまる』『花屋さんが言うことには』『人形姫』などがある。

「2023年 『あたしとママのファイトな日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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