キサキの大仏

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著者 : 奥山景布子
  • 中央公論新社 (2012年11月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120044427

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キサキの大仏の感想・レビュー・書評

  • 聖武天皇の妻として、大仏開眼への夫の思いを手助けする安宿姫(光明皇后)、女であることを捨て将来の天皇として自分を律しようとするその娘安倍皇女(孝謙天皇)。仏教を導入し、鎮護国家の礎を築く聖武を中心とした天平時代を描いた人間絵巻。読み物としての出来栄えは、イマイチの感を否めない。

  •  天平時代、大仏建立に生涯を捧げた、聖武天皇と光明皇后の物語。
     二人の夫婦愛を軸に、安宿(光明子)と異父姉の牟漏女王の姉妹愛、阿倍皇女(孝謙天皇)との親子の擦れ違いなどが描かれる。
     皇后として、妻として、娘として、母として、葛藤し奮起する安宿。
     歴史小説としては堅実な作品と言えるが、登場人物たちの位置付けや相関関係には違和感を覚えることが多かったのが正直なところ。
     例えば、元明・元正の両女帝を所詮『中継ぎ』の天皇としか認識していないのは、従来の旧説の域を出ていない。
     何より、聖武天皇と安宿、阿倍皇女らが揃って、上皇(元正天皇)と親密であるという設定に不自然さが拭いきれない。
     作中では既に長屋王の変の後となっているが、長屋王は生前から一貫して元正天皇寄りの政治路線を採っており、(折衝や協調もありつつ)藤原氏に対する皇族派の筆頭であった筈。
     しかも、長屋王の正室は、元正天皇の同母妹である吉備内親王。
     長屋王邸跡の発掘研究から、王夫妻と元正天皇は同居するほど親しかったらしいとの説も出ているし、姉妹の母の元明天皇が長屋王夫妻の子供たちを皇孫扱いに格上げしたのは、未婚で子のいない元正天皇の後継者候補に挙げるための策とすれば、懇意の妹とその所生にして自身の後嗣たるべき甥たちを全て抹殺された元正天皇が、軍出動の勅許を出した聖武天皇や、妹一家の死と引き換えに強引に皇后の座に就いた安宿や後嗣の阿倍らに、心許して接していたかは疑わしい。
     安宿が自分たち夫婦を天武・持統の両天皇に擬えては偲び慕うような描写が幾度か出てくる点についても、持統-元明-元正ラインの蘇我系の女性たちと藤原氏は政敵同士であり、政策方針も外交路線も相反し、主導権を獲り合う政争を繰り返してきた間柄にしては、感情の発露がいびつに思われる。
     また、聖武天皇の度重なる宮城移転を、国家安寧を御仏に祈らんがためのものと見なしているが、皇族腹以外の男子の身で皇位を踏み、且つ初の人臣出身の皇后を迎えた彼の、懊悩の根幹や“責めは、我一人に有り”の文言の真意は、先例に背いての即位と血生臭い立后という皇統の血脈に由来するものではなかったろうか。
     さらには、仮にこうした人物相関図の不自然さに目を瞑るとしても、主軸となるべき視点が母と娘に交互し、各々の背景や心情の掘り下げが徹底せんがため、作品全体としては今一つ統合されておらず、物語のダイナミズムに乗り切れない面ある。
     阿倍皇女の造形が斬新で魅力的だったこともあり、いっそ彼女の目線に絞って、母子の相克や両親の絆、大仏開眼までの苦難を描き、安宿の内面は間接的に匂わせる構成にした方が、却って安宿の人物像の奥行きが深まり、作品の完成度が上がったのではと思わせるのは皮肉な結果かもしれない。

  • この時代の人にとって大仏ってどういうものだったんだろうか。というお話。

    貴族や皇族からしてみればとてもありがたいもので作りたいけれど、民からしてみれば、わけのわからない像を作るのにかりだされ、大変な目にあわせられる。
    その一人一人いろんな思いがあり、どういう状況でどういうことに出遭ったのか。それは文書には残らないけれど、一人一人の頑張りと、それを達成した時の心を思うと、奈良の大仏の見方も変わってくるのかと思いました。

    日本史の授業で受けただけの知識では感じられない感情が表れる作品。

  • 聖武天皇と皇后・安宿が東大寺の大仏を建立するまでの話。二人の仲が睦まじい事、娘であり皇太子となった阿倍(孝謙天皇)との確執などはあっても深刻ではなく、また政争もサラリとしていて、若干盛り上がりに欠ける淡々としたホームドラマのようであった。主人公達よりも既に故人となっていた皇后の母・橘三千代の生き様が凄そうで、そちらの方にかなり興味を引かれた。

  • 光明子、聖武天皇、のちの孝謙天皇となる阿倍内親王、そして大仏。キライなジャンル、時代背景でもないのにさっぱりしすぎていてフツー。藤原氏が天皇に絡み付いてゆく様子が描かれていて人間臭い貴族たちが出てきてそして陰謀、策略、謀殺などなど期待してみたけど特になく・・・。フツー

  •  聖武天皇と安宿(あすかべ=光明子)、その娘阿部(孝謙天皇)が東大寺の大仏を作るまで。

     話が淡々としていて盛り上がりに欠けていました。政治の駆け引き(乱や変)の話を期待していたので残念でした。安宿と聖武天皇のお互いに大切にし合い、わかりあってる関係は羨ましかったです。

  •   読みながら何度も寝てしまいそうになった。面白くないわけではないのだけれど、天皇や皇后たちがやたらもたもたしている。大河ドラマを見ていても貴族が出てくるとやたらもたもたするあの感じ。大仏を作るまでの苦労が天皇皇后の側からえがかれている。

  • 本筋とは関係ありませんが、君主の壮大な無駄遣いがその当時の人にとっては悪政であっても、後世に大きな恩恵をもたらすのは歴史の皮肉です。
    ルートヴィヒとかルイ14世とか。

  • 大仏建立に熱意を傾ける聖武天皇と、それを支える光明子の夫婦愛を、2人に関わる人々の感情も絡めながら描いた小説。民の苦や世の不安定を常に己が罪と受けとめる聖武天皇も、彼の意見をおかしいと思いながら希望を叶えようとする光明子も、傍迷惑な面があると呆れそうになるが、そうした周りの思惑をはねのけるほどの強さでもって結ばれた絆は羨ましいほどに深く、読んでいてほだされる。
    その他にも、聖武と孝謙両天皇の抱える苦悩や、為政のあり方があまりドロドロしない形で、かつ平易な文章で綴られているので、読みやすかった。

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キサキの大仏の作品紹介

内憂外患の渦巻く天平時代、皇族以外からの初の皇后という重圧に耐えながら、悩む夫を支え、大地震による工事中断を乗り越え、巨大モニュメントの建立によって人々の心に希望の灯をともした女性がいた!奈良・東大寺大仏が秘める聖武天皇と光明皇后夫婦愛の物語。

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