- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120044656
感想・レビュー・書評
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惻々と恐ろしさが忍び寄ってくる。実に恐ろしい本である。
そのものずばりを書いた章は少ないけれども、その周辺を取り巻くあれやこれや。つまりは著者の身体状況にまつわるさまざまな出来事なのである。そしてそれは、おそらく根源的なところで同年代の女たちに共通することなのだ。
そうか、閉経するとどんどん体が干からびていくのか。リアルに実感できるあたりが、もうなんとも言えず恐ろしい。
年老いていくということは生まれて初めての経験で、しかしそれを言い出したらどんな年代であってもすべて初めての経験なのである。
なのに今まではそんなことすら意識したこともなく、うかうかと、ずるずると、あたふたと歳を重ねてきた。
そうしてようやく、目に見える形でおのれの肉体に変化が訪れ、親がどんどん死に近づき、子どもはさっさと巣立っていくことに気づく。ああ、ほんとうに、くっきりと、リアルに、そうなのだ、とつきつけられる。
私は伊藤さんとはちょっと違って、自分が女であるということが疎ましくてたまらない。文中に出てくる「なくなってさっぱりした」というご友人と同じタイプだ。
それでもきっと、死ぬまで女であることに振り回されるのだろうなと思うとちょっとうんざりする。
読んでも元気は出ないし、励まされもしないけれども、こういう人もいるのだということを知るだけでも心が自由になる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
比呂美さんのように生きている漢(おんな:この本での表現)は結構いると思うんだけど、このように赤裸々に語ってはくれない。比呂美さんは詩人だから心に響く言葉を持ってる。それに、小心翼翼と生きてる私なんかからみれば自分を貫いて生きてるんだけど、弱い人の気持ちもよくわかる人なんだよね。
両親が亡くなって、孫も生まれて、いよいよ比呂美さんも老年にさしかかってるわけだけど、これからも老いとは何か、独自の言葉で語っていただきたいと思ってます。 -
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/785530 -
女が歳をとることにまつわるあれこれ。子どもが手を離れ、夫と老いた父親の世話をしながら、ズンバを踊る伊藤さん。
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更年期の身体、親の介護、パートナーとの関係など、改めて発見し驚き、あけすけに記す比呂美さんに好感が持てた。
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"どうしてこんなに自分のやりかたを他人に押しつけることができるのかなあと、子ども心に思っていた。どうして娘といえども他人だということがわからないのかなあ、と。
わからないのだ、自分と娘の間に線を引けない人なんだとあきらめたのは、思春期を過ぎてからだ。理解しようとしなかったんじゃなく、理解できなかったのだとわかったのは、四十すぎて、母からすっかり離れてからだ。でも、いいのである。悩みを聞いてくれた母が最後にいた。そして、「あんたがいて楽しかったよ」で母の呪いがとけた。母の声は一生聞こえつづけるだろうが、それはそれでいいのである。"(p.192) -
センパイ、かっこいい。閉経どんと来い、楽しみに待ってるぜ。
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『婦人公論』の伊藤比呂美さんのエッセイを読んでいたら、「この辺のことは『閉経記』に書いた」という記述があった。その頃の連載は読んでなかった。本の存在は知ってたし、今年、ご本人がいらっしゃるところで買う機会もあったのだけど、何しろ読まれたくて仕方のない積読本が山のようにあるもので、買っていなかった。でも、今号のエッセイを読んでいたら、どうしても読みたくなった。ちょうど図書館のある施設に出かけてたもので、探したら出てきた。本当は自分の好きな作家さんの本はできるだけお金を出して買いたい方なので、今回は図書館本でごめんなさいという思いはちょっとある。
ここ3年ばかり連載を読ませてもらっているので、比呂美さんの文章にはとてもなじみがある。2週間の貸出期限、1週間を切って慌てて読み始めたのだけど、いつも一番最初に読むくらいだから、サクサク読んで、あっという間に読み終わってしまった。
漢と書いて「おんな」とルビがふってあるのが印象的だと思っていたら、もともとそういうタイトルをつけたかったのだとあとがきにあってなるほどと・・。連載から時がたってるけど、きっとその中には私も含まれてるんだなと思った。ちなみに読むタイミングとしては、結構、今の自分とダブる部分もあって。とはいえ、マゴの話はまだまだ先だし、このときの比呂美さんより今の私の方がいろんなものから解放されてたりするんだけど、その分、これから自分がどう舵を切っていこうか迷える場所にもいて、油断するとただただウチに進んでしまう。そういうときストレートに飛んでくる投げ縄は、私にとって言葉なんだな・・ということをしみじみ感じさせてくれる一冊だった。 -
「ウマし」を読んで著者を知ったという、無知の前提のもとにこの本を手に取った。
「ウマし」の方が文章がこなれている、と言うか、枯れているというのか? 筆致の特徴が、より魅力として熟成している感じだったが、本書も面白く読ませて頂きました!(合掌)
漢(おんな)と読ませるなど、筆者のパワーが相変わらず凄い。難解な熟語など使わずに、言葉とリズムの紡ぎ方が、多分凄いんだろうと思う。
読み始めると、止めるのに苦労した。