父の戒名をつけてみました

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120045639

作品紹介・あらすじ

島田裕巳著『戒名は、自分で決める』を参考に父の戒名を自作。住職に「人のビジネスに立ち入るな」と恫喝される。2億円?の遺産をめぐり、「争族」勃発。実体験ルポ。

感想・レビュー・書評

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  • 少々扇情的なタイトルである。Amazonの紹介文にも「父の戒名を自作したところ、僧侶に『人のビジネスに手を出すな』と恫喝され・・・」とあり、何やら穏やかでない。
    目次の見出しも、「住職から恫喝を受けました」「檀家はやめるの、やめないの?」「請求二億円!?『争族』の始まり」と、キワモノ感が漂う。

    いやいや、一見、いささか露悪的だが、これは存外、真面目で考えさせられる1冊である。

    著者は人物ルポなどを手がけるライター。
    関西に住む老父とは離れ、首都圏で仕事をしている。
    ある日、施設に入所している父が亡くなったと連絡を受ける。関西へと向かう新幹線の車中で、著者は”ふと”父の戒名を自作しようと思い立つ。
    にわか勉強だったが、父の人柄や生き様を考え、これだと思う戒名を思いつく。
    ところがそれを旦那寺の住職に告げたところ、「おまえさん、何考えているのか知らんが」と威圧的に脅されてしまう。
    そこから、「父らしい葬式」を上げるための著者の闘いが始まる。

    発端は、「戒名を自分で作ってもよいではないか」という素朴な思いつきと、「なぜお坊さんに恫喝までされなければならないのか」という疑問である。
    著者は基本、常識人だと思う。ただ、故人の思いを知っているのに、世間の慣習に流されるのをよしとしなかったのだ。
    お坊さん側が心ない言葉を使い、強い態度で出てきたことと、それでも著者が引かなかったことがいささか問題を大きくしたというところだろう。

    著者は兄1人、姉2人を持つ末っ子だが、家の事情は少々複雑で、実子であるのは著者1人だった。
    兄と父は、父の生前、裁判に至るまでの争いをしている。そのため、遺産相続の話し合いもかなり面倒なことになっていく。
    そして父の田舎との関係もまたしがらみに満ち、心地よいものではなかった。

    多くの人は、肉親の死で憔悴しているとき、争いごとを強いて始めようとはしないだろう。これが常識といわれれば黙って従っておくだろう。
    だが著者は踏ん張った。そして葬式の慣例が現在のようになった背景を追う執念も見せる。友人・知人の経験を尋ね、何人かのお坊さんや元お坊さんに会ってインタビューし、税理士さんに相続の事例について聞き、最後には社会学者の橋爪大三郎に話を聞きに行っている。
    ライターとしての経験が生きているのだろうが、文章が読みやすい。
    視点も一般人のものに近いように思われ、好感が持てる。

    葬式仏教の問題点ばかりではない。
    遺産相続の難しさ。肉親であるがゆえのわりきれなさ。人が亡くなった後の事務関係の煩雑さ。
    父の死を境にさまざまな問題が一挙に吹き上がる。
    人が1人死ぬということは、なるほどこういうことなのだろうな、と思う。自分の場合はどうなるのか、あれこれ考えさせられる。

  • ノンフィクション、というよりエッセイなのかなというテイストですが。

    著者の方はライターさんだということですが、正直読後感じたのはあんまり文章がお上手でない印象。ご本人も「ゆるい」ライターと本文中でご自分を表現されてましたが「わかってらっしゃる」と思いました。

    メインの「争族」(うまい言葉考えましたね)がみなさんきっと読みたくて手にとられるのでしょうが、一個人の「こんなことがありました」的話で、ご兄姉がご存命でいらっしゃることもあるのでしょうが核心に触れた感が薄くて、実際そういう場面を迎える際の参考資料にはならないです。

    後半は、お父様の葬儀が終了した後に戒名についての取材を様々行ったことが書かれていますが、そちらはまた興味深い話もいくつかあります。改まって聞かなければ
    聞けないだろうな、というお坊さんの立場を考えさせられる話などもありますし。
    ただ、本の創り的にはメインの「争族」の話だけでは短かったので、興味から取材をしたお話と一緒にまとめたのかなという印象です。

    読後、自分ちのお坊さんがいかに良心的かというのがわかったことが一番よかったですね(笑)

  • ノンフィクション

  • この本を読んで、無宗教で父のお葬式ができてよかったなと思う。誰も文句言わなかったし、何より父が望んでいたことだし。戒名だっていらんと思ってたことも間違ってなかった。
    役所の手続きの大変さは、激しく同感。

  • 読むほどに葬式業界のひどさを感じ、嫌な気持ちになります。
    お坊さんとコミュニケーションをとるにあたりイニシアティブを取ることは本当に難しいのだなと感じました。
    葬儀という厳かな仏事に対し、あれこれ素人が口を出すことが失礼であり、お坊さんに逆らうことは預かっていただいているご先祖様たちに迷惑をかけることである。

    そういうことが実感できました。
    本の中身の良し悪しは別として、葬式を考えること自体が嫌になりました。

    ためになったのは、葬儀屋は頼りになるので、生前から良い葬儀屋を探しておくことが大事だと分かったことです。

  • 父が死ぬ前にこの本を読んでいたらなぁ。私も父の戒名をつけたかった!しかし日本の仏教はどうなっておるのだ。葬式仏教といわれても仕方ない。坊主丸儲け。弱みにつけ込んでがっぽり。
    ブログに感想→http://zazamusi.blog103.fc2.com/blog-entry-933.html

  • 戒名を自分でつけてみたところ、菩提寺と争う事になる。
    作者の実体験をもとにして書かれたものだろうが、葬儀にまつわる不透明な部分を取り上げたかったのだろうか?
    寺院のあり方、葬儀費用の不透明さ、お墓や仏壇の事、そして相続のもめごと。
    どれも深く掘り下げないで中途半端。
    扱っている問題は大きいのに、内容は軽すぎる。

  • 父が自分の葬式の準備をしていると知り、自分も少しは知識を得なくては…と思っていた所で出会った一冊。お寺さん(私の地元ではこう呼ぶ)も大変なんだなー、と思う半分、戒名代を「御心で」という意味が現代においては変わってきているんだろうな、と感じた。菩提寺との関係が薄れつつある現代であるからこそ、お寺さんと腹を割って話すべきなのかもしれない、と思わせてくれる内容だった。相続のいざこざに関しては…たぶん我家は無関係なので割愛。

  • TBSラジオ「session22」に朝山さんが出演されていたのを聴いて興味をもちました。
    前半はタイトル通り、朝山さんご自身がお父様の戒名を考えたところでおきた檀那寺とのトラブル(寺の傲慢すぎる態度にビックリ)の描写が主ですが、その後は地域コミュニティとの付き合い方や兄弟間の相続問題、葬儀の現場(?)で働く様々な方々の話なども出てきて「身内の死」を経ての様々な体験談+現場の方の声のようになっています。
    ハウツー本ではないので役立ち度はそんな高くない気がしますが、「こういうこともあるのね」と知っておくのには、とてもサクサクと読めてよかったです。

  •  なるほど。戒名云々というよりは、家族のつながりと、そこに関わる人々(お寺、葬儀屋)との関係性といえばいいんだろうか。
     ノンフィクションというには、田舎を毛嫌いする(される)理由がイマイチ明確ではないので欠席裁判ぽい気がしてしまう。当事者としては辛いのだろうな。

     なくなったお父様のそれでも田舎を出なかったこと、お兄さんを子供のままとしたこと……というのが後からじわじわ来る。
     思うことをきちんと伝えないと、伝わらないし、伝えようとしても伝わらないこともあるよなぁ……と思いました。

     葬儀について云々を読むならば別な書籍がよいと思うけれど、(言い方は失礼だけけれど)葬儀にまつわる読み物としては実に面白く、取っ掛かりには良いのではないかと。

     何はともあれ、家族みなさまのご健康と、お父様のご冥福をお祈りするばかりです。

  • 年をとると、親族の死に際することが増えてくる。
    葬式には、独特の慣習やルールがあってややこしい。
    そこにお金がからんでくると、ややこしいとばかり言ってられなくなる。
    にしても、なんやかやと取っていくなぁ。
    戒名とか、タダでもいいじゃないか。
    さらさらっと決めて、書いてほしい。
    一体「なに代」なんだ。あれ。

  • 2014/3/6

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著者プロフィール

朝山実

1956年、兵庫県生まれ。地質調査員、書店員などを経て、ライターとなる。花村萬月、井筒和幸、イッセー尾形らの単行本の編集を手がける一方、雑誌を中心に執筆活動を続けている。『婦人公論』『AERA』の人物ルポや、『週刊朝日』『日経ビジネスON LINE』の書評他、インタビューも数多く手がける。著書に『アフター・ザ・レッド 連合赤軍 兵士たちの40年』(角川書店)など。

「2019年 『お弔いの現場人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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