怒り(下)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120045875

作品紹介・あらすじ

愛子は田代から秘密を打ち明けられ、疑いを持った優馬の前から直人が消え、泉は田中が暮らす無人島である発見をする-。衝撃のラストまでページをめくる手が止まらない。『悪人』から7年、吉田修一の新たなる代表作!

感想・レビュー・書評

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  • 今日からジメっとしてきたなw

    ってな事で吉田修一の『怒り 下巻』

    上巻での3人の殺人犯の容疑者のその後…。 ⁡
    ⁡⁡
    ⁡読み進めるうちに段々と犯人を追い詰める錯覚が起こる感じw

    3つの容疑者の点が線に繋がって行くのかと思いきや!

    3つの怒りの感情と言うのか、怒りにも色々な怒りが有るなぁと勝手に感じた。

    悔しい怒り
    悲しい怒り
    後悔の怒り
    意志を貫き通す怒り
    信じきれなかった怒り
    信じて貰えなかった怒り

    ソースなイカリ
    長介ないかりや(笑)

    終盤からのドバッーとした、それぞれの感情の洪水が何とも切ない怒りに…。 ⁡
    ⁡⁡
    ⁡ええ本じゃった。

    2015年36冊目

  • 映画化されているが観ていない状態で
    キャストだけ頭に浮かべ、読み進めた。

    上下分かれているが先が気になり、
    あっというまに読み終える。

    自分の大切な人が殺人犯に似ている。
    信じたい、、
    しかし確固たる自信がない。結果疑う。

    自分自身素性が分からない相手と
    あまり知り合うこともないような狭い世界で
    生きており、作中登場人物のような葛藤を
    したことはこれまでにない。

    しかし自分であっても疑ってしまうのだろうな、
    自分の自信のなさが出てしまうのだろうな
    と考えさせられた。
    並びに、信じていた人の自分の全く知らない
    生々しい一面を見てしまうと
    この怒りは抑えられるのだろうかとも
    思わされた。

    一度疑い出すと、今までの様々なことを
    深読みし、自分の中で勝手に創り出し
    負のスパイラルに陥る。
    しかし、安易に信じて傷つきたくもない。
    信じることの難しさを考えさせられる。

    吉田さんの別の作品もまた読んでみたい。
    また、映画も観て見たい。

  • 一気よみ!

  • 怒り…
    タイトル“怒り”でいいのかな?

  • 直接的には関わりのない複数の登場人物の話が並行して進んでいったので、場面転換するたびに少々混乱し読みづらかった面もあるが、過去を打ち明けない謎の人物に対してどこまで信じられるのか、複数のケースを知ることで見方を深めることもできた。

  • 怒り。
    やるせない気持ちと言い換えても良いのかもしれない。
    自分ではどうすることもできないこと。人を信じられない弱さ。
    世間に溢れている『事件』と、傍観者でしかない自分。
    ある日突然関係者に立たされ当惑する自分。

    山神の意図が分からないままでなんとも煮え切らないが
    それもまたリアルであるとも思うし、はっきりしたところで
    また別の怒りが湧き上がってくるだけなのではとも思う。

    映画よりも小説の方が、警察サイドの描写があることもあって
    山神の正体が3人の内誰なのか早く読み取れる印象。
    事を起こす前に捕まえるべきと示唆されるものの
    まさか事を起こされる側に回るとは。

    映画でも、自分が一番感情移入しやすいのは優馬だ。
    直人を信じきれず、警察からの電話で動揺し、
    探したいと思っても待つしかできず。
    喫茶店で妹を見つけて慌てて駆け寄る。
    彼の『弱さ』を、自分は笑えない。

    愛子が通報した時、映画を見ていて本当に驚いた。
    小説はヤクザが押しかけてくる様子などその後のことも書かれており
    警察にとっては空振りでしかなかった通報だが
    愛子の決死の通報により幸せに見えた日常が終わってしまう。
    田代を信じきれなかった愛子が悪い、とは、とても言えまい。
    愛子は自分や父を責めるだろうが、訊いても答えてくれない中で
    疑心暗鬼になるのは当然だと思う。

    ある意味で、優馬も愛子たちも山神の一件の被害者なのだが
    法律上は当然そうは取られない。
    あの事件が無ければ不幸にならなかったはずの人たちの運命が捻じ曲げられる。
    現実でもこういった目に見えない被害者はたくさんいる。

    しかしながら希望が見えるのが田代と愛子たちで
    村の人たちも協力してくれ、解決できそうな光がある。
    父親の迎えを待っていた愛子が、田代に有無を言わせず
    銀の鈴で待っていてと言ってひとりで必死に東京まで迎えに行き、
    切符を買って戻る姿が力強く、守られているだけの愛子ではなくなった。
    金銭問題さえ解決すれば、愛子と田代はうまくやっていけるのではないかと思える。

    優馬が一緒の墓に入ると言っていた約束とも言えない直人との約束を
    せめて実現させるところには泣いた。
    直人が自分の生を諦めていなくて、妹に言っていたような優馬への気持ちを
    本人に伝えていたなら違った未来があったかもしれないが
    こんな二人だからこその淡く美しい日々があったのだとも思うのだ。

    一番救いが見えないのが泉たちで、辰哉が取り調べ中、
    泉が告白したと聞いた時だけ泣いたこと、
    自分のことは忘れてくれと手紙を寄越したことがあまりにも悲しい。
    「信じていたから許せなかった」。
    知らない人にはなんのことが分からないとしても、辰哉の動機説明としては
    十分な言葉である。
    だからと言って包丁まで持ち出すのは一足飛びに過ぎる気はしなくもないが
    泉のことが好きだったこと、責任を感じてきたこと、
    田中が人がいないときは客の荷物を乱雑に扱っていたこと、
    そして父のこと。
    色々なことが積もりに積もり、遂に決壊してしまった。
    自分が酔っ払わなければ。田中に懐かなければ。落書きをみなければ。
    辰哉は自分自身にも怒っているかもしれない。
    だがそれらの『ミス』はここまでの重い十字架を一人で背負い込まなければ
    ならないほどのものだろうか。
    あまりにも救いが無いと思ってしまう。

    こうして我々読者が抱く怒りもまた、表題につながっているのだろう。

  • 「2015本屋大賞 6位」
    九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1155930

  • 愛子チャンが、ずっと心配だった。田代君と一緒に帰れて良かった。 怒の原因が、わからない❗️

  • この小説を読む前にとても生々しい夢を見た。それは、私にとって身近なひとが人殺しをする夢で、夢の中で、なぜ私は彼に優しくできなかったのだろう、とひどく後悔していた。彼の薄暗さに近づく勇気がなくて、よく知りもしないままに、なんとなく怖いなぁという思いで、その人の心に触れることができずにいた。心に触れる勇気があれば、そんなことは起きなかったのではないか、と思っていた。

    小説を読んだあと、人が抱える影と向き合うというところで、田代と愛子と洋平の物語が自分の見た夢と少し重なった。影に対する妄想が膨らむほどに、その人の真実に近づくのは難しくなる。でも、一度、田代を信じきれずに裏切ってしまった体験が、愛子と洋平に何が何でも自分たちの幸せを信じて生きようというスイッチを押させたような気がして、この3人の物語が強く私の中に残った。

    誰にも見せていないような影を抱えながら、人はどのように生きようとするのかということと向き合う小説だった。私がこの小説に惹かれて手に取ったのも、誰よりも私自身の中にある人には見せてこなかった自分の影に触れてあげたいからなのではないかと思った。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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