楽園

著者 :
  • 中央公論新社
3.38
  • (2)
  • (6)
  • (15)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 63
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120046056

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 書き下ろし。2017年に文庫化。

    京都の古い色町「五条楽園」が2010年に警察の摘発で廃業に追い込まれた跡に「楽園ハイツ」と名付けて建てられたアパートの住人たちの物語。

  • 2016年2冊目は昨年、下半期に固め打ちした花房観音女史の作品。

    あらすじ:京都、五条の遊郭跡に建つ「楽園ハイツ」。そこには管理人の営む喫茶店と、五世帯、六人の女が暮らしていた。そして彼女達にはそれぞれ……。

    花房観音が得意とする、複数女性の視点から物語を紡ぎあげるパターン。今回のキーワードはズバリ「性」。そこに「羨望」「侮蔑」「悔恨」といったドロリとした感情が静かだが、しっかりと脈打っている。

    実は、この作品、それほど期待してはいなかったんです。しかし、思いのほか面白かった。「性」を中心に据えているので、表現も描写も多用されているが、官能のそれとしては濃度や密度が足りない。『婦人公論』(中央公論新社)からなので、女性むけなのかな(?)。個人的には官能には分類したくないです。

    この作品も、キーパーソンは早い段階で予想はついていました。そして、「序章」と絡めてどう落とすか?は「そうきたか」という感じ。そんな中でも、今回も女性の裏の顔や、暗部を描かせると、この方、やはり「上手い」と思わされた。

    個人的には、★★★★☆評価は当然。ただし、あまり、他人(ひと)にすすめることはないでしょうが……。

  • 女ならきっと誰もが、自分の中に漠然とその存在を感じているどす黒い部分を、手のひらで掬って「ほら」と見せつけられたよう。
    女の視線の中に秘められた侮蔑、嫉妬、羨望。そんな目で見られているのかと思うとぞっとするが、私自身も人をそんな目で見ていると認めないわけにはいかない。
    数人の女が登場するが、どの人物の抱える不安も欲も、確かに私自身の中にあることに気付かされる。
    女のサガから逃れられないけれど、女であり続けようとする登場人物たちは哀しく愛おしい。
    これだけどろどろした人間模様と葛藤を描きながらも、さっぱりしているのは、情動に溺れない観察者の視点が貫かれているからだろう。
    セックスって、そんなにいいものなんだ……。

著者プロフィール

兵庫県豊岡市生まれ。
京都女子大学文学部中退後、映画会社や旅行会社などの勤務を経て、2010年に『花祀り』で団鬼六賞を受賞しデビュー。男女のありようを描く筆力の高さには女性ファンも多い。
著書に『寂花の雫』『花祀り』『萌えいづる』『女坂』『楽園』『好色入道』『偽りの森』『花びらめぐり』『うかれ女島』『どうしてあんな女に私が』『紫の女』など多数。
現在も京都でバスガイドを務める。

「2020年 『京都に女王と呼ばれた作家がいた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

花房観音の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×