- Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120046056
感想・レビュー・書評
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書き下ろし。2017年に文庫化。
京都の古い色町「五条楽園」が2010年に警察の摘発で廃業に追い込まれた跡に「楽園ハイツ」と名付けて建てられたアパートの住人たちの物語。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2016年2冊目は昨年、下半期に固め打ちした花房観音女史の作品。
あらすじ:京都、五条の遊郭跡に建つ「楽園ハイツ」。そこには管理人の営む喫茶店と、五世帯、六人の女が暮らしていた。そして彼女達にはそれぞれ……。
花房観音が得意とする、複数女性の視点から物語を紡ぎあげるパターン。今回のキーワードはズバリ「性」。そこに「羨望」「侮蔑」「悔恨」といったドロリとした感情が静かだが、しっかりと脈打っている。
実は、この作品、それほど期待してはいなかったんです。しかし、思いのほか面白かった。「性」を中心に据えているので、表現も描写も多用されているが、官能のそれとしては濃度や密度が足りない。『婦人公論』(中央公論新社)からなので、女性むけなのかな(?)。個人的には官能には分類したくないです。
この作品も、キーパーソンは早い段階で予想はついていました。そして、「序章」と絡めてどう落とすか?は「そうきたか」という感じ。そんな中でも、今回も女性の裏の顔や、暗部を描かせると、この方、やはり「上手い」と思わされた。
個人的には、★★★★☆評価は当然。ただし、あまり、他人(ひと)にすすめることはないでしょうが……。 -
女ならきっと誰もが、自分の中に漠然とその存在を感じているどす黒い部分を、手のひらで掬って「ほら」と見せつけられたよう。
女の視線の中に秘められた侮蔑、嫉妬、羨望。そんな目で見られているのかと思うとぞっとするが、私自身も人をそんな目で見ていると認めないわけにはいかない。
数人の女が登場するが、どの人物の抱える不安も欲も、確かに私自身の中にあることに気付かされる。
女のサガから逃れられないけれど、女であり続けようとする登場人物たちは哀しく愛おしい。
これだけどろどろした人間模様と葛藤を描きながらも、さっぱりしているのは、情動に溺れない観察者の視点が貫かれているからだろう。
セックスって、そんなにいいものなんだ……。