賢者の愛

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著者 : 山田詠美
  • 中央公論新社 (2015年1月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120046865

賢者の愛の感想・レビュー・書評

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  • 山田詠美はやっぱり山田詠美だ。
    エロが全然出て来ない作品を読んで感激したからといって騙されちゃいけない。
    山田詠美は苦手で(だと思っていて)、多くを語れないけれどこの作品は本領発揮と言ったところか。
    しかも「痴人の愛」のオマージュらしいけれど、本家を読んでいないから益々レビューが難しい。

    年下の男を育て上げる「痴人の愛」の逆バージョンと言うより、むしろ女友達への復讐劇と言った方がしっくりくる。
    この突飛な展開。常識も倫理観も関係ない。
    執念、怨念、そして愚かさ。
    愚かな女たちと愚かな男たちの人間模様。

    繊細な内面を丁寧に描写したちまちました最近の女性作家とは一線を画すこの作品。
    (ちまちました作品、大好きです)
    うん、いいわー。エイミーじゃなきゃ書けないよね。

    でも正直ちょっと苦手・・・。
    主人公の憧れる対象は知的な男性なのに、育てた男はガテン系。パターンだ(笑)
    今時の草食系男子だったりしたら面白いのに。

    山田詠美、懲りずにまた読みます。

  • 谷崎潤一郎の「痴人の恋」の男女逆転版という事で「賢者の愛」なのか。とても目が離せなくて、続きが読みたい!という気持ちが抑えられず、でもじっくりと読みたくて時間をかけて一気に読みました。

    主人公真由子は、幼馴染の百合と初恋の人諒一の間に出来た息子直己を自分好みの男に育て上げる。

    でもあくまでも二人の関係は秘密だし、体を重ねたのも一度しかない。それでも直己は子供が母を慕うように女としての真由子を求める。真由子はそんな直己を見てほくそ笑む。自分の父親と関係を持ち自殺にまで追い込んだ「ちょうだいお化け」の百合への復讐として。

    40も過ぎて自分のことを「ユリ」と呼ぶ百合が空恐ろしい。真由子が彼女を「ちょうだいお化け」と呼んだ気持ちがわかる。

    そして、直己と真由子の関係を知った百合は真由子の飛ばす車のハンドルを突然握り事故を起こして逝ってしまう。まるで「マユちゃんにはなにもあげない」というように。

    真由子はその事故が原因で生ける屍となってしまう。
    隣に寄り添う直己がいじらしい。何度失恋すると分かっていても真由子の前で他の女の子と交わう。

    各章の扉絵になっている丸尾末廣さんの絵もいいですね。
    この本を読む時はじっくりと時間をかけて味わい尽くすことをお勧めします。

  • 山田詠美さんの作品の『蝶々の纏足』を思い出しながら読んだ。同じような設定の『蝶々の纏足』ではお互いに意識しないではいられない様子をある種の清涼感を持って読んだ気がする…。

    今回の『賢者の愛』だが、良い意味でも悪い意味でも時間の流れを感じた。山田詠美さんの作品に出てくる、ボロボロのジーンズをかっこよく履く事や、校則を守らないような子が哲学書を読むといった事をかっこいいとした当時の価値観が今やあたり前になってしまった。


    そして知ってしまった。
    単純な真面目さに対して面白みがないとするのは多様性を認めろと言っている側こそが多様性を認めていなかったことに…。

    ひなびた海辺の宿の良さは高級ホテルのそれとは違うベクトルにあって
    そこにいる美意識をわざわざ書く必要はないのです。

    当時の価値観を引きずって、舞台を現代としているところに違和感を感じた。

    とは言っても山田詠美さんはやはり山田詠美さんだなーと思った。
    面白いとかどうとかより上手いとしか言いようがない。

    本作は痴人の愛と対比させているとのことらしい。

    痴人の愛ではナオミに翻弄される主人公が幸せそうで羨ましく思った。
    だが、本書では直巳への行為に対して羨ましく思えるところが全くなかった。

    翻弄されるのが痴人であるなら、服従させるのが賢者なのだろうか…。

    主人公が服従させたかったのは百合子であったとしたのなら羨ましく思えなかった事も腑に落ちる。

  • 自分を愛してくれた父親と、初恋の人を奪われた親友に復讐するお話。
    その復讐の仕方がすごく怖い。
    初恋の人と結婚した親友が生んだ男の子を、オスとして自分好みに調教し、
    心身ともに自分なしでは生きて行けないように育て上げるのです。
    ひゃ〜!こんな恐ろしいことある?母親にとっては地獄の苦しみでしょう。
    まぁ、父と恋人の奪われ方も、女の武器を恥ずかしげもなく使ったひどいやり方だったから、
    目には目をってやつですね。

    "今日、直巳は二十三になりました。そして真由子は、じきに四十五歳の誕生日
    を迎えます。時のたつのは速いものだ、と彼女は深い溜息をついてしまいますが
    まだ少しもこの可愛い年下の男に飽いてはいないのでした"

    冒頭のたった3センテンスで、主人公の女が年下の男を
    玩具のように弄ぶ関係性が明らかに。上手いですねぇ。
    どす黒い沼にずぶずぶ沈んで行く感覚。でもなぜか止められなくていっき読み。
    「籠の鳥」を育てた真由子だったが、皮肉にも自分自身が「籠の鳥」になるという、
    アイロニックなエンディングが最高!
    これ、谷崎潤一郎「痴人の愛」のオマージュらしいです。
    とても気になるので、ぜひ読み比べてみたい。

  • 婦人公論連載時に読みました。
    多分自分は、連載だから読み続けられたのであってこれが一冊になってからだと手に取らなかっただろう小説。

    グロテスクな話です。けれどこういう話を書いたら本当に詠美さんは上手だなぁ、とつくづく感じ入ります。

    嫌な話だよと思いながらもぐいぐい読まされてしまうこの文体は、話し言葉調で優しいタッチに釣られているうちに思いもよらない細かい心理の襞に入り込まされてしまいます。いやぁ、怖いわ詠美さんの文章。
    こういう文体でこういう話を綴るというのはかなりの力量が必要と思います。物書きの人なら誰でもができるというワザではないでしょう。

    詠美さんの書く話、好きではないものが多いと思うのに読まされてしまうことが結構あります。
    話そのものを味わうと言うより、文体や構成を味わう、というつもりで読んだならハイレベルの一冊だと思います。

  • ユリにちょっと図々しいと思いつつも、隣にいて、いつの間にか大切な人を奪われていってしまう。自分が真由子の立場だったらと読み進めていくとぞっとします。
    真由子がユリと大して確執がなければ直巳ともどうともならなかったのかな(;^_^
    個人的には秀美君が出てきたのが嬉しかったなぁ(^o^)
    あと、リョウ兄さまにはがっかり~_~;ユリに同情はできないけど、再婚しちゃったか…。

  • 往年?の著者の作風と、何だか違う気がする。ちょっと、読み物臭が強いけど、滑らかな筆致でグイグイ引っ張られて読了。途中いくつも仕掛けがあり、驚かされる。読後、特に心に何かは残らない。上質なエンターテイメント、2時間もののサスペンステレビドラマになりそう。

  • 歪んだ愛。その一言で片付けられそうな関係がある。でも歪んでいない愛なんてあるのだろうか?人が誰かを自分のものにしたいと思う時、その理由がただ純粋な愛情だとは限らない。寂しさを紛らわすためであったり、優越感を持つためであったり、復讐であったりする場合もあるだろう。

    谷崎潤一郎の「痴人の愛」を下敷きに書かれたというこの小説。愛によって築きあげられ、そして壊されていく運命が描かれています。それを幸せと思うか不幸と思うかは読む人によると思う。私は主人公のマユは最後は幸せだったと思う。

    マユが「親友」ユリの息子、直巳を自分好みの良い男に育てていく過程は興味深かった。世の中のいわゆるイイ男の中には直巳のように年上の女性に手ほどきを受けた人が少なくないんじゃないかしら。

  • 著者の作品はずいぶん前に読んだときに合わないなあ、と思ったきりでした。
    なのですごく久しぶり。

    この本は発売当時、目にする雑誌すべてに書評が載っている、というくらい売り込みに力が入っていた印象で、そんなに押すならほとぼりが冷めたら読んでみようかなと思い積読リストにいれていました。

    谷崎純一郎の「痴人の愛」を基盤にしながら、初恋の男と愛する父を親友百合に奪われた主人公真由子の復讐物語でした。
    何が痴人の愛かというと、その復習方法。百合の息子を20年以上かけて調教、精神支配していくんです。

    それはまあいいんです、楽しく読みました。
    それよりもやたらと高級ホテルやシャンパンの銘柄が出てきたりして、なんだか時代遅れなバブリーな感じに鼻白みました。
    加えて真由子の調教の過程がまた古ーいステレオタイプでね。ゴールとしているいい男の定義がズレてる気がしてなりません。おばさんの私では全くときめけなかったわ。

    ということで全体としてはひどく幼稚な印象を受けました。
    読み易いので若者向け、なのかな。
    あの広告費に見合うくらい売れたのか、気になります・・・

  • 『ぼくは勉強ができない』がよかったので、その主人公が大人になって登場すると知り、手に取ったのだが…。

    幼い頃からの親友に大事な人を奪われ続け、その復讐として親友の息子を自分好みの男に育て上げる、という何とも恐ろしい話。おっとりとした上品な語り口調とは裏腹に、異様な愛情と独占欲、復讐心がねっとりとはびこっている。

    終盤の嵐のような急展開のインパクトが強いため、どんでん返しを仕込んだミステリーのような衝撃もあるけれど、冷静になるとやはり子どもの頃から調教していくという倒錯した世界には嫌悪感が。
    復讐の道具にされているだけの息子が、主人公に心酔しているのも哀れだ。
    作中にもあったように、谷崎潤一郎の男女が逆のパターンだが、その昔読んだ『痴人の愛』も気持ち悪くて受け入れられなかったことを思い出した。

    で、肝心の時田秀美くんは、大した役割ではなく、むしろ彼でなくてもよかったという感じで、がっかり。

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賢者の愛の作品紹介

初恋の人を奪った親友の息子に、『痴人の愛』から「直巳」と名付けた真由子。22歳年下の直巳を手塩に掛けて"調教"し-。憧れ、嫉妬、そして復讐。谷崎潤一郎賞作家がおくる、絢爛豪華な愛憎劇がここに!

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