僕とおじさんの朝ごはん

著者 :
  • 中央公論新社
3.47
  • (23)
  • (79)
  • (78)
  • (23)
  • (3)
本棚登録 : 479
感想 : 90
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120047008

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • やる気のないバツイチケータリング料理人のお客から時折聞かれる
    「薬持ってるのは貴方ですか?」
    その薬は飲むと確実に死ねる。しかも自殺とバレることなく。という噂。

    妹の死は自分の行動のせいかもしれないと思っている「おじさん」は難病の「僕」と出会い構っていくうちに・・・という話。
    この「おじさん(バツイチ料理人)」愛されてるよ。そして才能もある。
    むしろ羨ましいくらい(笑)
    作中の登場人物はみんな愛があるし愛されている。
    でもどうしようもないこともあるし、どうしようもあることもある。

  • 面倒くさいことが苦手なケータリング業者の水島と息子、ふと出会った病気の少年とその家族、謎の薬の噂、いろんな状況が交差しながら進む物語。

    「僕とおじさんの朝ごはん」
    タイトルの理由がわかる時、悲しくて寂しいけれどあたたかい料理の美味しさが想われて、心が穏やかになるお話でよかった。
    美味しそうなごはんのお話はやっぱり好き。

  • 図書館で借りたもの。
    ぐうたらで無気力に生きるケータリング業者の水島健一。先輩の忠告も、仕事先で問われる不可解な薬の存在も軽く受け流してきたのだが、ある少年と出会い、それらと真面目に関わらざるを得なくなり…。

    『いつも人と深く関わるのを避けてきた』水島だが、病気の少年と出会い変わっていく。

    “「僕の世界は病院とリハビリセンターだけなんだ。どこにも行けないしなにも体験できなくて一日のほとんどをベッドで過ごしているのが生きているということなの?外のことはタブレットを通してしか知らなくてそんな生活をこれからも続けろとよく平気で言えるよね。僕は今生きてる?違うよ。僕はもう死んでいるようなもんなんだ」”
    もしこんな風に自分の子供に言われたら、どうすればいいんだろう。

    子供が亡くなる話はつらい…泣きすぎてしまう…。

  • 自他共に認める適当人間でやや投げやりに生きてきた健一が、生まれながらに重病を患って手術を繰り返しながら生きている少年と出会い、生き方が少しずつ変わっていくお話。

    のらりくらりと進んでいく前半に比べて、後半の面白さが凄い!ずーっと意味がわからなかったタイトル、最後に「なるほど!このことだったのか!」と。心の痛いラストだけど、最後には少し明るい未来も見えて、さすが桂望美!

    特に後半のお料理がとても美味しそうで、私も家族にごはんを作る時にはもっと心をこめないと…と思う。

  • 始めは何事にもやる気のない主人公の健一がある一人の少年との出会いでがらりと変わっていく。人生を、そして生き方を考えさせられた。
    この小説は次から次へと話の主体が変わるので最初は読みづらかったけど、最後はそれが面白かったです。

  • ケータリングの仕事をしている男性が主人公。

    読み始める前、タイトルから、「僕」と「おじさん」が何度も朝ごはんを食べる話なのかなと私は思った。
    それくらい、私の意識の中に、「朝ごはん」というものは日常当たり前のことであって、繰り返されていくものだと刷り込まれているのだ。
    でも、世の中には食べたいものを食べられない人、何の変哲もない「朝ごはん」すら食べられない人も存在する。この本の「僕」は、まさにそうだ。
    「僕」が「おじさん」の「朝ごはん」を食べられたのは、結局、一度だけ。

    最近、身近な人の死について考える契機がありました。
    「とにかく生きていてほしい」という周囲の思いは、本人には届かないのだろうか?
    生まれた後は、その命はその人だけのものなのだろうか?
    これらについての答えは、きっと一生かかっても見つけられないと思う。

    小説としては、前置き(なかなか「僕」は出てこない)が長かった。
    登場人物も多くて、ケータリング手伝ってるバンドマンが終盤にまた出てきた時は「え、だれ?」状態だった。
    テーマとしては興味深かったものの、そういう訳で読みにくさを感じました。

  • ケータリングを仕事としているやる気のないおじさんと、生まれながらの病気で日々を病院で過ごす僕。
    僕はおじさんのやる気のなさを気に入っていたのだが、食を通し、僕と触れ合う事でおじさんは変わっていく。
    切ない終わりに、読み終わってタイトルがグッとくる。

  • 「お前はぐうたらではあるが、嫌なやつじゃないからな。たまに思い遣りを見せることもあるし。[...] あれだな。人間も料理と一緒で、複雑であればあるほど旨味が出るだろう。」(149 ページ)

    どうでもいいといった感じを常に醸し出している主人公。

    私生活でも、仕事のケータリングでも、
    面倒臭がりで、手を抜くことに一生懸命。

    それでも、ある少年との出会いを境目に、
    自分ができる、唯一で最高のことを見つけ出す。

    嬉しさと、切なさで胸をいっぱいにしながら、
    真剣に、そしてとても丁寧に。

    『料理人になって良かった』と、
    自分の人生と誠実に向き合えるようになるまでの物語り。

  • ケータリング業者の『おじさん』が、『僕』との出会いによって変わって行く様子が、2人も含め周囲の様々な人たちの視点で描かれています。


    後から気づいたけど、タイトルは『僕』目線なんだな。


    作中の随所に出てくる料理の過程の描写が細やかで、画が目に浮かんでくるようでした。
    『おじさん』の変化とともにその描写も一層丁寧さが増していきます。そのシーンは読んでいて安心感があって、心地良かったです。


    勝手なイメージですが、もし映像化されるなら『おじさん』は新井浩文さんです。

全90件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

一九六五年東京都生まれ。大妻女子大学卒業後、会社員、フリーライターを経て、二〇〇三年『死日記』で「作家への道!」優秀賞を受賞し、デビュー。著書に『県庁の星』『嫌な女』『ハタラクオトメ』『頼むから、ほっといてくれ』『残された人が編む物語』『息をつめて』など。

「2023年 『じゃない方の渡辺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桂望実の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×