文学の空気のあるところ

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著者 : 荒川洋治
  • 中央公論新社 (2015年6月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120047312

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文学の空気のあるところの感想・レビュー・書評

  • 詩人で随筆家の荒川洋治さんのやわらかい言葉づかいが好きで、時々著作を読み耽ります。
    講談社エッセイ賞を受賞した「忘れられる過去」は愛読書のひとつでもあります。
    本書は、荒川さんが文学の魅力について語った講演に大幅加筆したもの。
    第1部(昭和の本棚を見つめる、高見順の時代をめぐって、山之口貘の詩を読んでいく)、第2部(名作・あの町この町―地図)、第3部(「少女」とともに歩む、詩と印刷と青春のこと、思想から生まれる文学)の3部構成です。
    昭和の本棚は、私にも原風景として残っています。
    ちょっとお金持ちの親戚宅へ行くと、ガラス戸のついた立派な書棚に日本文学全集なんかが整然と並べてあるんですね。
    果たして全部(あるいは一部でも)読んだのかどうかは別にして、教養というものが今より尊ばれていた時代ではありました。
    荒川さんはそんな時代を生きた一人として、昭和の本棚を彩った作家たちを、豊富な知識を駆使して、やわらかい言葉で回想しています。
    ただ時に鋭いことを言うんですね。
    たとえば、
    「いま読まれていないもの、関心をひかないものは何か。それを考えれば、逆にこの時代がどんな時代なのかが見えてくる。何か不足だなと感じたとき、何かが足りないと感じたときは、いま読まれていないものに目を向けるといい。『読まれていないもの』のなかにあるものが、いまの人には欠けているものであり、だからいまはそれが必要なのだというふうに見ていくべきだと思います。」
    というのは実に鋭い指摘だと思いました。
    こらこら、そこのあなた、「村上春樹以外?」とか言わない。
    島崎藤村の逸話もすごい。
    僚友の田山花袋が亡くなるときのこと。
    ひとつ年下の島崎藤村が、田山花袋がいま死にそうなところへ見舞いに行って、田山花袋に「死んでゆく気持はどんなか」と訊くんですね。
    読みながら唖然としましたが、同時に本物の作家の凄味を感じました。
    恐らく自分が人としてどう思われようが、死にゆく気持がどんなものか知りたいという作家的な欲求が勝ってしまうのでしょう。
    山之口貘という詩人のことを、私は本書で初めて知りました。
    1903年に沖縄に生まれ、1963年に59歳で亡くなった詩人です。
    デビューは遅く、詩集を発表したのもかなり遅かったそうですが、生涯の全てを、また全身全霊を詩に捧げた人でした。
    こんな詩に、それはよく現れています。

     僕には是非とも詩が要るのだ
     かなしくなっても詩が要るし
     さびしいときなど詩がないと
     よけいにさびしくなるばかりだ
     僕はいつでも詩が要るのだ
     ひもじいときにも詩を書いたし
     結婚したかったあのときにも
     結婚したいという詩があった
     結婚してからもいくつかの結婚に関する詩が出来た
     おもえばこれも詩人の生活だ
     ぼくの生きる先々には
     詩の要るようなことばっかりで
     女房までそこにいて
     すっかり詩の味おぼえたのか
     このごろは酸っぱいものなどをこのんでたべたりして
     僕にひとつの詩をねだるのだ
     子供が出来たらまたひとつ
     子供の出来た詩をひとつ

    山之口貘は一編の詩を仕上げるまでに、原稿用紙を200~300枚も消費することがあったといいますが、なるほど、よく推敲しているのが素人にも分かります。
    本書では、山之口貘の詩が何編か紹介されていますが、私の最も気に入ったのをひとつ。

     うしろを振りむくと
     親である
     親のうしろがその親である
     その親のそのまたうしろがまたその親の親であるといふやうに
     親の親の親ばつかりが
     むかしの奥へとつづいてゐる
     まへを見ると
     まへは子である
     子のまへはその子である
     その子のそのまたまへはそのまた子の子であるといふやうに
     子... 続きを読む

  • 久しぶりに荒川洋治を読んだ。
    講演集である。普段のエッセイとはちょっと違う雰囲気。途中途中で面白い事を言っていたりする。内容はいつも通り。おもしろいよ。

  •  講演記録だから、妙な間や冗談があちこちにあって、時々ツボにはまる。

  • 敬愛する現代詩作家、荒川洋治さんの講演録。
    知らない作家が大勢出てきて、文学の深さを再認識しました。

  • こんな、文学の世界にいたことがあった。文学は、実学だ。❗

  • ――いささか気恥ずかしいのですが、ぼくはこんな時代になっても文学が好きなのです――豊かな陰影をもつ作品と作家、印刷のこと、造本のこと、詩歌との出会い。現代詩作家がおくる、古くて新しい文学のはなし。

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文学の空気のあるところの作品紹介

読書は人を変え、風景を変え、空気まで変えるのかもしれない。現代詩作家がおくる、古くて新しい文学のはなし。

文学の空気のあるところはこんな本です

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