マカン・マラン - 二十三時の夜食カフェ

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著者 : 古内一絵
  • 中央公論新社 (2015年11月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120047886

マカン・マラン - 二十三時の夜食カフェの感想・レビュー・書評

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  • 商店街の路地裏の、中庭にハナミズキがある古民家は、昼間は派手な服飾店、夜は不定期に開く夜食カフェ「マカン・マラン」。
    ドラァグクィーンのオーナー、シャールさんの料理は滋味に溢れていて、この店にたどり着いた人の心と身体を癒していく。

    登場人物の中で身体にも心にも一番傷を負っているはずのシャールさんが、誰よりも穏やかで優しく毅然としていて、カフェにやってくる人たちに癒しを与えていることが、じわじわと心に沁みてくる。シャールさん料理は、食べる人のことを大事に考え、心をこめて作ったものだから、より一層おいしさが沁みわたるのだろうな。

    4つある話はどれも好きだけれど、特に第二話の「金のお米パン」が好きだった。
    シャールさんのキャラクターが魅力的で、他の登場人物の心情にも共感できるところが多々あって、どんどん本の中の世界に惹き込まれた。
    物語の続きをぜひ読みたい。シャールさんが元気に戻ってこられますように。

  • 文章や風景の切り取り方や描写がきれい。時代小説にぴったり合いそうな言葉の使いだと思った。古内さんが書いた時代小説読んでみたいです。


    マカン=食事
    マラン=夜
    インドネシア語で「夜食」の意 14ページ


    「春のキャセロール」「金のお米パン」「世界で一番女王なサラダ」「大晦日のアドベントスープ」の4連作。


    路地の奥にひそりと佇む23時開店の「マカン・マラン」。店主名はシャール。その人の体質を見極めて陰性の人には陽性の、陽性の人にはその逆の料理が提供される。体質を中庸に整える。

    ところどころ涙がじわーっと出てしまいそうになる、温かくて優しい言葉が散りばめられていて、真夜中布団の中で泣きそうになりながら読みました。

    「大晦日のアドベントスープ」…の、その後が知りたい。とても気になるー。お次は『快晴フライング』を借りよう♪

  • 久しぶりに読後に涙が。キャラが際立っているせいか、軽いタッチで書かれているように感じるけど、実はそうじゃなくてとても大切な事をシャールは言っている。お料理の描写も美味しそうだけどその上をいくシャールの言葉にいちいち頷かずにはいられませんでした。ジャダも困った所があるけど素敵な人。義理人情に厚くて応援したくなります。ジャダがメインの最後はずっと涙腺緩いままでした。マカン・マランのようなお店があれば救われる人も増えるはず。こんな作品があったなんて…出会えて感謝です。シャールは戻ってくるはず。続きが楽しみです。

  • この手のお話好きだなあ。
    宮下奈都さんのお話に出てくるハライとか。

    マカン・マラン、インドネシア語で夜食を表す。
    不定期に深夜営業をするお店。
    こんなお店が近くにあったら通い詰めちゃいますよね。
    出てくる人もどこにでもいるでも素敵な人たちで、お料理や飲み物もすごく気になる。
    実際にはどんな味なんだろう。
    自分でも作れたらなあ。

    装丁もすごく好き。

  • 真夜中にこっそりと営業する、
    夜食カフェのマカン・マラン。
    どこかで読んだことのあるような、
    ほっこり系おとぎ話かしらと
    先入観を満タンにしつつ読み始めました。

    世の中にはいつだって勝ち組と負け組、持てるものと待たざる者、マジョリティとマイノリティが存在していて
    その仕組みの中で自分の存在を見失わないよう、
    溺れないように必死で生きている人たちがいる。
    小説の中から、そんな人たちの辛さや必死に生きる姿が
    リアリティを持って伝わってくるためか
    マカラ・マランがおとぎ話みたいに
    疲れた人がそっと羽を休める
    止まり木のようなカフェであることが、
    読み終わった今もとてもとてもうれしい。

  • 商店街の路地裏の、ハナミズキの木のそばの小さな店は、昼間はド派手な服飾店、夜は優しい夜食カフェ。店主はピンクの髪の素敵なドラァグクィーン。今日も疲れた人々が、あたたかな一杯を求めてやってくる。

    よくある美味しい食べ物屋系の話かと思ったら、それだけじゃなかった。主人公たちと同じようにささくれだった心にシャールさんの言葉が沁みる。出てくる夜食もどれもこれも美味しそうだし、どの話も大きな動きはないけどひっそり優しくてよかった。シャールさんが無事に帰ってきた続編が読みたいな。

  • ドラァグクイーンのシャールさんが営む夜食カフェ。
    出てくる料理がどれも体に良くて美味しそう。
    会社や日常などさまざまな悩みを抱える人をさりげなく優しく包み込むシャールさん。
    解決するわけでも、はっきりとしたアドバイスをするわけではないけれど、シャールさんの一言がそっとその人の背中をおしてくれる。この部分が、読んでいる自分の背中をも押してくれているよう。
    シャールさんの抱えるものは誰が救いとってくれるのだろう…ということが頭をよぎる。でも、素敵な仲間に囲まれているシャールさんだから、きっと大丈夫
    こんな素敵なお店が身近にあったら、通ってしまいそう。

    読みやすいけれど、扱うお話は重いものも。身につまされる問題も。
    だからこそ、シャールさんの人柄が際立っているのかな。
    続きが楽しみ。

  • とても癒された。シャールの言葉は静かだけど重い。

    「あたしたちはどの道、自分の眼を通してしか、物事を見ることができないじゃない。」
    「足りなければ、満たせばいい。空っぽならば、埋めればいいのよ」

    こんな素敵なカフェでゆっくり食事したい。マクロビとか特に興味なかったけれど、食は大事だと再認識させられる。身体にいいもの、というか身体が欲しているものを口にしたい。


    35

  • ひさしぶりによい本読んだー。
    人生は甘くないっていう。
    でも、すんごくこころがほっこりした。
    ひたすら料理がおいしそうで。
    シャールさんの生き様が素敵だったな。
    ほかの登場人物のみなさんも。

    古内さんの他の本も読んでみたい◎

  • 数日熱が出て下がらない、というのは、
    私にとって日常なのだが、それにしてもだるく、苦しい。
    そんな時に読んだ。本棚にしまってある数冊は、疲れて
    読めずに図書館に返してもらい、若干延滞しているのは
    わかっていて、吸い寄せられるように読み始め…。
    半日かからないで読み終えた。今夜家族にすぐ返しに
    行ってもらう。次に待っている予約者の方も、同じに
    ぐったりしていたら、この本が助けになるかも
    しれないから。

    ドラッグ・クイーンのシャールは、トランスジェンダー。ドレスなどを商う傍ら夜食のカフェを開いている。

    身体と心をみたす,ナチュラルで温かい食事。
    それをゆったり語り合いながら摂ることで
    癒やされていく。

    そこに集う人は、真面目に生きているのに
    なんとなく頭打ちになったり、苦しんでいる人たち。
    自殺するほどではない、この程度のことでは死ねない。
    でも、明日も今日もこのまま暮らすのは苦しい人達。

    男女どちらの立場で読んでも
    ああ、分かるこういうこと…って思う悩み。

    それを癒やしてくれる場所や他人に、思わず人は縋る。
    でも、実はシャール自身が、誰よりも、重い病と
    マイノリティーとしての悲しみを引き受けている。

    シャールを癒やすのは、では誰なのか。

    それは、自分自身なのだと、私は思う。
    人を癒やすことに、シャールが縋っていなくて
    自分の事は自分で引き受けているから
    このお話は潔いし、暗くない。

    明快で取ってつけた爽快感はないけれど、潔い。
    どこか向こうの方に白い光が見えるような。

    マカン・マランの店内は暗く、良い香りに満ちて
    人はそこで休むけれど…そこから出て白昼歩む時の
    店の外の光は目に痛い。
    けれど、自分の日常をなんとかこなした時
    眼裏に見る光は、純白で、きっと優しい。

    そんなことを思わせる。
    疲れも苦しみも、読み終わると溶けるようで。
    良い小説だった。

    そして本を閉じて、こんなものが食べたいな。
    ここに行きたいな、と思って、レビューを拝見し…。
    私は、しばしふと考えた。

    出てくる料理にお腹がぽわっと温まる思いがするし
    シャールに確かに癒やされるけれど…。
    それにばかり目が行くけれど。
    この話はそれだけの話かな。

    自分のために身体に優しい料理を作り
    自分の悲しみは自分が引き受ける。

    そして…どうしても捨てたくないことは
    自分にしかわからないから、大事にする。
    他人の大事なことも、自分にはわからないから
    大事にする。

    それができたら。
    あれもこれも与えられなきゃ嫌だ、と言わずに
    捨てるものを捨てて、持てるものだけしっかり持つ。

    今日生きられたのだから、明日も。

    そう自分に声をかけて。
    誰かの期待する未来より、残された自分の望みに
    素直になって、折り合いをつけて暮らせば
    自分の家も、マカン・マランになるのだ。

    誰かがシャールのように毒抜きをやってくれたらと
    思うからあの場所をみんな慕うけど…。
    自分で出来るようにならなきゃ、きっとみんな
    ただここで腐るだけ。

    自分で自分は癒せる。もしかしたら他人様も…。
    無論、他の方からも力をもらっている。
    その力を目覚めさせるのが、このカフェの底力
    ではないか。

    コンビニ飯や外食で身体に毒を貯め。
    『こうでなくては。保証がほしい。』
    という見えない鎖で心に毒を貯め…。

    それでは苦しすぎる。

    今日、あなたが生きて暮らせている。
    それだけで大丈夫。まず、そこから。
    自分のために、さあ、優しく一杯のお茶をどうぞ。

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