よこまち余話

著者 :
  • 中央公論新社
4.03
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本棚登録 : 452
感想 : 93
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120048142

感想・レビュー・書評

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  • とある出版社のブログで紹介されていた本。
    といっても、面白いと評判が高い、という程度。

    主人公は古い長屋の一角に住むお針子の齣江、と思って読み進めるが、連作短編集なので、語り手も主役も入れ替わる。
    齣江も主役の一人、といったところ。
    いろんな時間軸が交錯して、少し不思議で哀しい本だった。
    大切な人や物と心ならずも別れてしまった人に。



    収録作品:ミカリバアサマの夜 抜け道の灯り 花びらと天神様 襦袢の竹、路地の花 雨降らし 夏が朽ちる 晦日の菓子 御酉様の一夜 煤払いと討ち入り 猿田彦の足跡 遠野さん 長と嵩 抽斗のルーペ まがきの花 花よりもなほ 夏蜜柑と水羊羹 はじまりの日

  • まさかあやかしモノだとは思わなかった。
    でも「ある男」「漂砂をうたう」のような、実直な「小説」を書く木内昇さんだからこそ、言葉が立ち上がって気配を成す、くらいの確かな世界と異世界を感じられた。
    17編のお話に分かれてはいるけれども1編の小説として共通する、『大切な人への想い』や『失うもの』が静かに、不思議が絡まってラストまで印象強く流れていく。
    私的に「猿田彦の足跡」でのおかみさんが見た青年のエピソードに泣かされてしまった。
    泣いたかどうかなんて、いい小説かどうかに関係ないけれど、私にとっては読んだタイミングが偶然を越えていた。
    良い小説でした。
    読後、木内昇さんの新作を読めることは改めてとても嬉しいことだなと思った。

  • 夢の中にいたよう。世俗的な人物もいる。地に足着いた堅実な人物もいる。悩みながら一生懸命生きている人たちと、不思議な次元にいる人たちとの交流。大切に読み返したい本。

  • その路地には秘密が漂っている――
    魚屋の次男・浩三は、同じ長屋のお針子・齣江を通じ、「いつかの人々」と出会うことに……。

    ほぉ〜〜っ……これは、なんとも……いや〜、素晴らしい!!
    さすがは、我が読み友さん達が年間ベストワンに選んだけあるなぁ〜〜!!!(数年前の、だけど)

    なんとも不思議なお話ではあるんだけど、そこに醸し出される雰囲気?いや、空気感?とかが、妙にまとわりついてきて、四季の移ろい、匂いや、手触りなんかまでもを長屋の人々と共有している様な気分に浸る。

    先をどんどん読み進めたいような、もったいなくてゆっくり味わいつつ読みたいような、またすぐ読み返したくなるような……良い時間を過ごさせていただきました〜〜♪

  • 「戦前」の日本のどこかの町の、どこかの長屋の住人達を舞台にした話。あえて「」を使ったのは、確かにあの戦争の前で、多分大震災も起こる前、場所もおそらく東京なのは確実だけど、それがいつの、どこなのかははっきりと描かれていないから。
    時代物ではない。ファンタジーでもない。ただ物語である、としか言えない。夢と現、こことあちらを人と時間が行き来しつつ、最後に全てが収まる所に収まる最終頁は快感の一言に尽きる。

  • 文字や言葉で、音、色、風、静けさが巧みに描かれる。一文一文が短いが、気品があり、ゆっくりと深い呼吸をした時に見えてくるような風景が言葉で紡がれる。どこか奥深い世界に入り込んでいく感覚。初めての木内さんの作品。どれが幻で、現実なのか、実はその境界線は危うく、儚いものなのかもしれない。効率や合理性だけでは説明できない、豊かで大切なものを、見せてもらった。トメさんの存在と言葉が印象的。「支えてくれる人がいるのは、咎ではない。果報だ」日本語の美しさと豊かさに満たされた素敵な作品。せわしなさを離れて、没入。

  • 時間軸がねじれた優しい話。昆虫好きの遠野さんの顔が浮かぶ。

  • 行く先を変えることは出来ないけれど、来た道を辿ることは出来るのかもしれない…。

    表通りから離れた狭い路地にひっそりと佇む古い長屋。
    その長屋の周囲で起こるちょっと不思議な出来事。
    知っているはずなのに見知らぬ所に迷い込んでしまったような、心細さが随所に漂う。
    長屋の住人達や周囲の人達の、家族ぐるみの仲の良さが一層物語の儚さを煽る。

    そして最後に迎えた「はじまりの時」…何とも言えない切なさに泣けた。
    別れの寂しさとはじまりの予感、相反する気持ちに胸打たれた素敵な物語だった。
    読了後、表紙の赤い糸に気付いて、また泣けてきた。

  • 長屋の人々の生活を描いた小説かなくらいに思って読み進めていたけれど、自分でも気付かないうちに不思議で面妖な世界がじわじわと入り込んでくる。
    とにかくよく分からないことが、当たり前のように出てきて展開が進んでいくけど、それらに対する説明やら詳細は描かれていない。最後まで明らかにはならない。けど、そこで描かれている感情や想いは確かに心に届いてくる。
    なんだかよく分からない戸惑いや切なさはよりリアルで、私達も浩三と一緒の気持ちで最後を迎えている。
    なんとも不思議で妖しくて、温かくて切ない話だった。
    またいつか、かみしめかみしめ、読み直したい。

  • 長屋を舞台にした時代小説なのかと思って読み進めると、なんとなく違和感が。人々の日常の中にひっそり不思議なものが紛れ込んでいました。いつの間にか彼岸と繋がったり、過去と未来が交わったり。といってもあまりにひっそりとしているので普通に生活していたら見逃してしまうような不思議です。読み終わるのがもったいなくて最後の方は一日に一話ずつ読みました。梨木香歩さんの家守綺譚を思い出します。木内さんってこんな本も書くんだな。オススメです。

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著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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