よこまち余話

著者 :
  • 中央公論新社
4.03
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120048142

感想・レビュー・書評

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  • 過去と現在。この世とあの世。境がいつしか溶けていく。そんな横丁に住んでいる人たちのお話。浩三は魚屋の次男。成績がいいので中学校に進むように先生から言われているが、学費のことで少し悩んでいる。母親と兄貴に迷惑になりはしないかと。駒江はお針子をしている。腕がいいと評判で色々と注文が入ってくるらしい。トメ婆さんはそんな駒江の家に入り浸っている。彼らが交わすこの世とあの世のとの橋渡し。

  • 東西を、天神様のお社へ続く石段と御屋敷裏の土塀に挟まれた狭い路地。お針子の齣江、皮肉屋の老婆、「影」と話す少年が暮らすそこは「この世」の境が溶け出す場所。
    雨降らしの鈴が鳴るとき、押し入れには芸者が現れ、天狗が手招きしてお告げをもたらす。

    この幻想的だけど、どこかもの哀しくて切ない物語に心底引き込まれた。魚屋が、和菓子屋が、生地屋が、糸屋が行きかう長屋の風情に、ゆっくり身を委ねながら頁をめくる喜び。

    かつて確かにいた人の面影、積み重ねられた記憶、時を超え降り積もる人々の想い、そんな大切なことどもが自分にもあるのだと感じられる幸せ。
    確実に訪れる離別の予感さえ、輪廻を感じさせて心地よい。

    「覚えていればいいの。みんなが忘れてしまっても、覚えていてくれればいいのよ」齣江の言葉に思わずホロリ。

    随所で引用される「花伝書」を読んでみようかな・・・という気になった。

  • じんわり
    江戸ものかと思ったら違った。

  • 「花伝書」を読まないといけないと思った。

  • 次元が行き交う不思議なよこまち。主要人物も脇役も、登場人物皆が魅力的です。私は質屋さんの自分の仕事に対する想いに心を打たれました。

  • 冒頭の書き出し部分がとてもいい。
    「路地は幅一間ほどで、東西に細く伸びている。東の端には一対の銀杏(いちょう)に両脇を護(まも)られた石段があり、その先は天神様のお社へと続いていた」
    いきなり作者の描く
    古き良き時代の小さな街へ導かれる。

    その路地の長屋に住む人々は
    お針子の齣江、皮肉屋の老婆のトメ、
    魚屋のおかみさんと子供たち、
    そして齣江の元へ訪れる糸屋の青年など。
    この青年がかぶる鳥打帽や
    日常的に出てくる着物の話などで、
    背景は大正時代かなと思われる。

    魚屋の息子、浩三少年はお針子の齣江が台のお気に入り。
    家に入り浸っているうちに
    齣江の周辺にときどき不思議な現象が起こることに気が付いた。
    「雨降らし」と呼ばれる店賃の集金人が
    齣江のまわりに、托鉢の坊さんのような鈴をならして現れると
    いつも不思議なことが起こるのだ。
    そして浩三が中学生になったころ、
    一人、また一人と
    浩三の周りの人がこの世界から消えていった・・・。

    昔の日本の庶民的な
    つつましい生活が匂いたつような短編集だった。
    決して押しつけがましくなく、それでいて、
    自然描写や文章そのものから、強烈な和の美しさが感じられた。
    ストーリー自体は、『茗荷谷の猫』を思わせる不思議物語だが、
    詩情的なしっとりとした文章が印象深い作品だった。

  • 2017 1/8

  • 不思議なお話

  • CLAMPのxxxHOLICの雰囲気です。
    妖しげで、レトロな雰囲気。
    どんぴしゃで好みでした。

    着物の着付け、習おうかな。

  • とは言っても、そこは今と繋がっているようなそうでもないような…
    その長屋にゆっくりと流れる時間が、それぞれひつようなのだと思う。

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著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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