国際主義との格闘 - 日本、国際連盟、イギリス帝国 (中公叢書)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120048548

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  •  WWIの教訓から国際協調のために作られた国際連盟、というのが教科書的な理解である。しかし東アジアはほとんど戦場とならず、既存の国際秩序が維持されていたため欧州とは前提が異なっていた。国際連盟とて既存の帝国主義に挑戦はしていなかったが、公的には植民地や委任統治領ではなかった中国には国際連盟が援助/協力を行う余地があり、東アジアに次第に介入してくる国際主義に反発する日本、というのが大まかな構図である。日本の視点ではリットン調査団とそれに続く連盟脱退が有名だが、前述の大きな流れで理解する必要があろう。
     連盟(というより事務局保健部長だったポーランド人のライヒマン)があまりに中国に肩入れしすぎているように日本には見えた(そしてそれはある程度事実)ことも日本の不信を買った大きな要因だろう。連盟が行ったのは技術的・人道的協力と言えど、政治性と無縁ではなかったということである。その一方で自らも帝国を持つ英国は少なくとも日本に完全に敵対的ではなかったわけであり、リットン調査団自体もそうだった。後世から見ると、日本が多少損をしても連合国側を敵に回すのを避けられる方策はなかったのかと考えてしまう。

  • 近年再評価が進む国際連盟だが、東アジアでは国際協調を模索しながら満洲事変後の日本脱退を防げなかった。日本やイギリスの帝国主義はなぜ連盟の国際主義と対立したか、新視点で検討する。

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は、国際関係史、イギリス帝国史。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。オクスフォード大学大学院近現代史研究科博士課程修了。(D.Phil.)。
主な著作に、『アヘンとイギリス帝国 ―― 国際規制の高まり 1906-43年』(山川出版社、2005年)、『上海をめぐる日英関係 1925-1932年 ―― 日英同盟後の協調と対抗』(東京大学出版会、2006年)など。

「2015年 『破断の時代 ― 20世紀の文化と社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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