文章読本X

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120049118

感想・レビュー・書評

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  • 著者の本を初めて読んだが、著者は教養主義と反教養主義とのあいだでほどよくバランスをとっていると感じた。根拠のない断定と根拠ある推測とが入り混じっていて面白かった。けっきょくは著者自身が魅力的な人物なのだと思った。

  • 実は良書なのかも
     どの文章読本よりも実際的なので、参考になった。いままでの文章読本は小説を書く人に向きすぎてゐて、実用的な文章は軽視されてゐた。気取って書くな、美文を書かうとするな、悪文でいいといふのはその通り。文章は論理的に伝達できれば十分だ。
     特に、書いた文章を意識しすぎる人には読んでもらひたい。しかし例文の数が少いので、あまりぴんとこない人もゐるだらう。

  • 武蔵野大学図書館OPACへ⇒ https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000153084

  •  過去の『文章読本』の多くは、“名文家として知られる小説家が「名文の極意」を説く本”であった。それに対して、本書は「はじめに」に、次のように記してある。

    〝ここでは、名文を書く方法について記そうとしているのではない。むしろ、伝えるべきことを正しく伝えようとすると、悪文になりやすい、ということを言い、そのような悪文を勧めようとしているのである。
    (中略)
     (本書を書こうと思った理由の)第三は、世間には依然として「名文信仰」があり、これが有害だと感じるようになったからである。文章にとって何より必要なのは、論理的で、正確であることであり、美しいかどうかはまったく二の次だと、私は考えている。〟

     実用文を上手に書くための「文章術本」も世にたくさんあるわけだが、本書で俎上に載る文章の大半は作家・評論家のものであり、フィールドとしては過去の『文章読本』と同じだ。
     それでいて、「名文信仰」から自由となった立場で書かれた、新機軸の『文章読本』なのである。

     前にも当ブログに書いたことがあるが、私が駆け出しライターだったころ、年長の編集者から言われた次の言葉が、強く心に残った。

    「ライターは、名文を書こうなんて思わなくていいんだよ。名文なんてのは事故みたいなもんだからさ。普通に読める文章を書いてくれればそれでいいんだ」

     ゆえに、“名文であることより、論理的で正確であることのほうが、はるかに重要だ”という本書の主張に、深く同意する。

     内容にも、卓見や微苦笑を誘うホンネの主張が多く、読む価値がある。

     たとえば、“「文章をよくする要諦は削ることだ」というのはそのとおりだが、「商売上の理由で長くしてある小説や学術書というのは結構ある」”――との指摘。

    〝小説であれば、削ると短編になってしまう。しかし短編ばかり書いていても、作家の生計が成り立たないので、ふくらませて長編にするということが少なくないのである。〟

     また、よい文章を書くための訓練として、「小説や映画のあらすじを書くこと」を勧めているのは、なるほどと思った。

     著者の持ち味である戦闘的毒舌も、名文家と見做されることの多い大家の文章をくさす箇所に、いかんなく発揮されている。

  • 何が主張したいのか?今一つ得られるものが少ない本である。文章について書かれているという意味では、この題名でよいけれど、その中身はX(わからないもの)である。

  • 2016/12/10

  • なんというか全体的に中途半端な本だったという印象。
    文章にとって肝要なのは「美しい」ことではなく「正しく伝えられること」で、概ねそういった文章は美しくはない、というのが筆者の大きな主張の一つなのですが、その割に本文では文章の美しさについて、実際の小説を引用しながらかなりページ数を割き、分析している。著者の主張に基づいて分析するのであれば引用するのが小説ばかりなのはおかしいのではないかと思わざるを得ない。また同時に小説で「文章が美しい」と評価されることはあるけれどそれは必ず内容と不可分なものであるはずという主張もあり、これは賛成とも反対ともいえるなあという感想で、例えば一冊まるごと文章が美しいというだけで評価されるのはさすがにとは思うけれど、短編小説や長編の一部の風景描写に限れば描写の美しさだけで評価を得る部分もあり得るのではないか、という感じだ。
    だいたい、結局この本はどういった層に向けて書かれたものなのかがはっきりしない。SNSの発達した社会で、普通の人々が文章を発信する機会は比較にならないほど増えたからそのためなのだろうかと思うけれど、そういった人々がわざわざこの本を手にとって読むだろうかというのが疑問として残る。そういった普段本を読まない人が手にとったとしても引用は小説からばかりだし、参考にはならないのではないか。小説家を目指す人向けに書かれた訳ではないようだし(オマケ程度にその人々へ向けて書いてある)。
    結局この本の中で批判しているわざわざ水増しさせているだけの本のようにも感じられた。

  • 文体の章面白かった。加えて接続詞と使い方など実践的なところもあります。

  • 文章を書くことの敷居がインターネットの普及により歴史上最も低くなった現代。SNS時代の「文章の書き方」を実践的に指南する。

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著者プロフィール

小谷野 敦(こやの・あつし):1962年茨城県生まれ。東京大学文学部大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士。大阪大学助教授、東大非常勤講師などを経て、作家、文筆家。著書に『もてない男』『宗教に関心がなければいけないのか』『大相撲40年史』(ちくま新書)、『聖母のいない国』(河出文庫、サントリー学芸賞受賞)、『現代文学論争』(筑摩選書)、『谷崎潤一郎伝』『里見弴伝』『久米正雄伝』『川端康成伝』(以上、中央公論新社)ほか多数。小説に『悲望』(幻冬舎文庫)、『母子寮前』(文藝春秋)など。

「2023年 『直木賞をとれなかった名作たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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