わざと忌み家を建てて棲む

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120049927

作品紹介・あらすじ

人死にがあった部屋や家。それを一箇所に集めて建て直した"烏合邸"。家主は、そこに棲む人を募集する。さながら、実験室のように…恐怖の「幽霊屋敷」怪談、再び!

感想・レビュー・書評

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  • 「どこの家にも怖いものはいる」の続編?とはいえ、同一のテーマの怖い話を前作のキャラクターが考察していく、というスタイルが同じなだけで、「どこの家にも怖いものはいる」の怪異が登場しているわけではない。そのため、こちらを先に読んでも楽しめると思う。
    今回はどこかにある怪異物件をわざと移転して、おなじ敷地内に立てた「呪いの家のテーマパーク」のような物件に住む、もしくは物件を調査した4人の話。
     日記だったり、探索の様子の録音であったりと、語り口が異なるのも前作と似ている。
     物件に住んだり、物件を調査する4人は事前に屋敷の持ち主から報酬を受け取っているため、金銭的な理由なその他の理由から逃げるに逃げられないという、追い詰められた状況の人間の恐怖がある。
     「黒い家」に住む人物が、火事で焼け焦げて黒いままの家に住んでいたのに、それを認識できず普通の家に住んでいるつもりの日記を書いていたことに、第三者視点で初めてわかったときにはぞっとした。
     他の記録も、記録者の認識のみで書かれているため、書かれていることが全て事実とは限らないのかもしれないと思った。
     個人的には、前作のほうが怖かったように感じた。というか、前作の宗教団体や割れ女が怖すぎたため相対的に怖くないように感じられたのだと思う。
     それぞれの物件一つ一つに怪異の伝説があるはずだが、今回はそれを移した後の話のみであり、どういう経緯があったのか気になるが、作中では明かされない。
     ある意味では「後日談」ばかりを集められた小説ともいえよう。
     一つ一つで小説がかけそうな物件の後日談だけを読めるのは、非常に贅沢かもしれない。

     謎解き要素はあるにはあるが、最終的にはそれが正解なのかどうかの答え合わせはないため、ミステリー1割ホラー9割という感じで、推理小説の手法で怪異を証明していくホラー小説のように感じた。

  • 曰くのある家や部屋を一軒に纏めて建て直し、そこで暮らすとどうなるか――。あり得ない「家」に棲んだ者たちの運命は……。ホラーの名手・三津田信三による、「幽霊屋敷」怪談再び!

    「どこの家にも怖いものはいる」の続編的な作品。先に評価を見ていたので、中途半端だという意見が多いらしいと知った上で読んでみた。
    結果としては確かにもやもやは残るばかりだったけれど、気味の悪さは相変わらずで、各家のレポートはどれも先が気になる短編として読めた。
    実話型怪談の形をとっているのだし、作中の三津田と三間坂も専門家ではないので、明確な解決に至らなくてもそこまで気にはならなかったかな。
    ともかく訪ねてきた川谷妻華が不気味だし、前回以上に三津田が怪異に出会っててヒヤヒヤさせられた。
    個人的には黒の部屋が一番怖かったかも。壊れていく母親の日記が怖いし、白い屋敷側からの真実にはうわってなった。

  • すっごい怖いんだけど所々自分の著作の広告的なのが入って怖さを和らげてくれる。最初の黒い家が1番怖かったかな。

  • 今回も怖くて楽しかった〜
    シリーズものらしく1冊目を読まずに読んだので読まないと!
    やっぱりホラーを読むのは1人の夜に限るね!

  • 人死にがあった部屋や家。それを一箇所に集めて建て直した“烏合邸”。家主は、そこに棲む人を募集する。さながら、実験室のように…恐怖の「幽霊屋敷」怪談、再び!(アマゾン紹介文)

    期待値が高かっただけに、落胆もまた大きく。

    まず、怖くない。

    擬音の多様なのか、振りがわざとらしすぎるのか、前作よりも随分と緊張感なく読み終えてしまいました。
    結末のぼかし方も前作と同様尻切れトンボ感が否めず。
    題材はホラーにもサスペンスにも適用されそうなので、残念でした。

  • 本屋さんで一目見た瞬間に魅かれました。タイトルだけでこんなに想像力を掻き立てられるのもそうそうありません。表紙を眺め、内容を妄想し続け半年。ようやく読み始めることができました。

    よせばいいのに、この人の作品を読むのは決まって夜。それも音の出るものを一切止めて、静寂の中、本に向き合う。そうすると、自分でも不思議なくらい本にのめり込んでしまい、もうこんな時間か、といったことがよくありました。もしかしたら、本に憑かれていたのかもしれません。
    危険な好奇心は身を滅ぼしてしまいますが、三津田さんの場合は興味というよりはむしろ囚われている、といった方がしっくりきます。どう足掻いてもこの人の世界からは抜け出せない。読了後、そんなことをふと思ってしまいました。

  • ホラーミステリの第一人者、三津田さんの新作長編。
    忌み家に住んだり訪れたりした人達の四つの記録がホラー仕立てで、幕間の三津田さんと編集者がその記録の中の怪奇現象の謎を憶測を交えて推理するパートがミステリ仕立て。
    ホラーの部分は不気味で怖かった。ミステリがイマイチ。どうせ最後はウヤムヤになるのだから、もっと強引で突拍子の無い推理の方が楽しめたと思う。読者に呪われない様に注意を促すのも、そろそろ飽きてきた。
    タイトルは語感が良くて巧い。著作の中でも一二を競う名タイトルだろう。

  • 読みづらい上にあまり面白くなかった。

  • 昔の金持ちが不吉な土地に事故物件を集めて作ったハイパー事故物件にまつわるホラー・ミステリー。

    今はなき九龍城砦のような、増築を重ねすぎて訳がわからなくなっている建物は妙に人の心を惹きつける。人の手で作ったはずなのに、それ自体に有機的なシステムがあるような謎めいた人工のジャングル。建物内を歩くだけで探検になってしまう。

    そこに事故物件の要素が加わったときたらそりゃ大変だ。という訳でワクワクしながら読めた。途中、右とか左とか、建物内を歩き回る単調な描写について行けなくなったりもしたが、古びた見知らぬ家の中を歩いている感じは疑似体験できた。化け物のはっきりしない描写や、不可解な動きをしつつも迫り来る感じだけは確実なのもなかなか怖かった。

    ただ、お話よりも作中で紹介されていた二笑亭が気になった。精神を病んだ男が作った不可解な家だそうだ。家主の渡辺金蔵が脳病院に入れられたというからにはとんでもない代物なのではないか、と無駄に期待が高まる。唯一、二笑亭を記録してある本といわれる『二笑亭綺譚』復刻版には赤瀬川源平の名前も連なっていたので、一種のトマソン建築なのだろうか。現存していないのが残念だ。今なら観光地になるだろうに。

    九龍城砦も二笑亭も、あと、おそらくはこの烏合邸も、現存してないというのが寿命のある生き物のようでもある。自分たちと同じく、何となく生まれ、成長して、また何となく消えてゆく存在と思うと、恐怖の烏合邸にもどこか切なさを感じる。

    あと、古い家というのも、ある意味それだけで謎に満ちた空間だよなと読みながら思った。

    よくわからない納戸、戸袋、屋根裏、仏間、物置、薄暗くて狭い階段に建物の端にある厠。昔の人にとっては当たり前でも、今の人には薄暗がりに満ちたジャングルだ。ジブリではそこにマックロクロスケが潜んでいて、本書では黒い謎の化け物がのそのそ歩く。個人の人生が染み込んだ建物すなわち住居という特殊性について考えさせられる。

    しかし、変な話、烏合邸の外観描写を読みつつ思い出したのは三鷹にある荒川修作の天命反転住宅だった。あっちはカラフルでボコボコした巨大なオモチャの塊のような集合住宅だ。しかも建築によって天命を反転させるという「住人が死なない建築」なので、コンセプトも真逆なのだが。

    古い家、集合住宅、増改築によって成長する有機的建築、なかなか面白いテーマだった。

    ところで『どんな家にも怖いものはいる』においても先生と三間坂青年の関係性が良かったが、今作でも2人で楽しそうに乾杯しながらホラーを探求しているのがホラーの箸休めになって良かった。たぶん受付の青山と三間坂はできてない。このコンビでもっと読みたい。

  • 三津田先生はお母さんの日記テイストで怖い事書くとほんとにもうとんでもない怖いものができあがってしまいますね

  • 今作は特に中盤以降、ちょっと眠かった。残念。怖くない訳ではないのだが、小説として少し退屈だった。

    家の間取りが文章だけでは想像しにくかったことや、実話という体なので現実時間の流れとか信憑性を出す為かもしれないが、作者さんの他の本の紹介など、「いるかな?」と感じてしまった。前作はあんまり気にならなかったんだけどなあ。

    え、本当に本当の話なの…?と思える程には説得力がなかったし(逆にそこがリアルなのかもしれない…)、エンタメに振り切ってもいないので、微妙であった。
    登場する4つの記録の文章は、それぞれ違う人間が書いたものとは考え難い。似てるので。でも実話だとすると、読者に障りが出ないように態と作者が書き直したのかもしれない。とか。

    次作で今回のネタは出るのかな?

  • 人が死んだ家の一部を蒐集し組み合わせた"烏合邸"。編集者から烏合邸にまつわる情報が主人公の元にもたらされ…。
    幽霊屋敷シリーズ2作目。

    シリーズ2作目ですが、主人公と編集者三間坂の「頭三会」が怪談について語る形式が同じなだけで、出てくる怪談は前作とは別物です。
    不吉なことしか起こらなそうですね、烏合邸。
    謎解き要素は前作より薄めになったかなぁ

  • 忌み家を寄せ集めて建てられた巨大な家についてのお話。そこで過ごした人々の手記が面白かった。すごく怖いというわけでは無いけれど、じわりと怖い。作者の著書の紹介が多数登場するのが?これは現実に起こっている話と思わせる手段なのかな?

  • 設定に一旦ワロタ

  • 大人になってから読んだホラー小説で、背筋をゾクゾクさせたのは本書が初めてかもしれない。

    夏の暑さが急に終わり、曇天の涼しい9月、ひとり家で読んでいると、その静けさも、遠くで聞こえる物音も、何か不気味なものに感じてくる。
    それぞれの家の主人公が恐る恐る歩みを進める描写を、まるで自分がそこにいるかのように、怖い、見たくない、進めない、と思いながら読んでいた。
    一気読みすることで物語の中にどっぷり浸かれます。
    私は大抵のホラー小説・映画・ゲームは平気だが、歩いて進むお化け屋敷は大の苦手。本書の恐怖はそのお化け屋敷をたった1人で進むような恐怖と孤独を感じた。

    以下ネタバレ・自分なりの考察

    終章で筆者は、烏合邸が本当に存在していたのだろうかと投げかける。
    あれだけの規模の家が建っていたのに、四つの家を調べた人たちの記録以外に何も残っていないのはおかしいと。
    →描写からして、相当大きな邸宅、日本家屋、歯科医院と住居の建て増した建築物、アパートの一室。現在の建築技術でも、それらを融合するのは不可能なのではないか、また、相当な大きさになるはずなのに、例えば黒い家の日記では近所の人の話題にも出てこない。
    あそこに書かれた通りの建物が実在していたとは思えない。しかし、そこで起きた怪異は本物なので、それを読んだ筆者や三間坂氏にも障がでた。
    ということは、黒い家に住んだ親子を描写した白い家の手記と同じことが住人に起こっていたのではないか。つまり、そこに滞在した人にはその人たちが描写した通りに見える=家に選ばれた人だから。そういった人たちを住まわせ、あるいは調査させた。しかし、それ以外の人には同じようには見えない。だから怪異は存在したのに記録には何も残っていないのではないかと。
    例えば実際は建物の残骸があるだけとか。

  • 表紙みたいな怖くて嫌な気持ちになりたかったんだけど、、、
    作家が巻き込まれていくのは怖くてよかったけど、終始すっきりしないというか、憶測でそのまま終わり、友達の友達のいとこの同級生に聞いた怖い話、みたいな結局なんだったんですかという気持ち。

  • 途中で断念しました。

  •  最初の「黒い部屋」を読んで、オッこいつはヤベー本を読み始めてしまったぞ!とゾクゾクしました。
     「ヤバいと思ったら読むのをやめてください」と脅され、ハハハまたまたそんなこと言って…その手には乗りませんよ…と思いつつも、ズブズブとのめり込むように読んでしまい、気づけば自分も恐ろしい部屋の中に入ってしまったような怖さがありました。
     ホラーなのかと思いきや、ミステリーの要素もあり、最後まで一気に読みました。結末は少しあっけなかった気がします。

     この本を読んだせいか、顔の見えない男が庭から家に入り込もうとしてくる悪夢を見ましたが、これ報告した方がいいんですかね?

  • 人死が起きた曰く付きの家屋を寄せ集めて作られた「烏合邸」。歪な様相を見せるその家に、不幸にも関わってしまった彼らは。前作と同じくやはり、登場人物の手記、日記、記録はぞっとした。間に挟まれた作者と編集者が見舞われた怪異もかなり怖い。中でも特に怖かったのは、作家の手記と学者の記録。その他の二つも甲乙つけがたいが文章が(設定として)文章がしっかり書き込まれていたので、前者の二つは恐ろしかった。また、前作「どこの家にも怖いものはいる」に比べ、作者と編集者が見舞われた恐ろしい体験も怖さが増していてよかったと思う。

  • 2020.09.05

    三津田節のファンだけれども、今回のは序章があまりにも説明的すぎて萎えた。忌み家についての説明はなくても良い。ただ変な家が建ってて、そこで起きた怪異で怖がらせてくれればそれで良いのに…。
    黒い家の章はなんとか読み終え、白い家の章の途中でギブアップ。やたら説明くさいし、長いし、怖くもないし眠くて眠くて。
    この説明くさい文章は三津田さんそのものでしょ笑

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著者プロフィール

三津田信三
奈良県出身。編集者をへて、二〇〇一年『ホラー作家の棲む家』でデビュー。ホラーとミステリを融合させた独特の作風で人気を得る。『水魑の如き沈むもの』で第十回本格ミステリ大賞を受賞。主な作品に『厭魅の如き憑くもの』にはじまる「刀城言耶」シリーズ、『十三の呪』にはじまる「死相学探偵」シリーズ、映画化された『のぞきめ』、戦後まもない北九州の炭鉱を舞台にした『黒面の狐』、これまでにない幽霊屋敷怪談を描く『どこの家にも怖いものはいる』『わざと忌み家を建てて棲む』がある。

「2023年 『そこに無い家に呼ばれる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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