新しい分かり方

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120050084

感想・レビュー・書評

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  • 「解きたくなる数学」にハマってから、佐藤雅彦ブームが来てしまいまして、いろいろ読みあさっています。
    「指を置く」という本も読みましたが、この本にも指を置くことで湧いてくる感情を体感できる絵が幾つかありました。
    本書は、さまざまな思考パターンを、多くの絵や写真を使って読者に「体験」させてくれます。
    7章から成るこの本は、6章までが「体験」で、7章で総括し「確認」するという構成になっています。
    佐藤雅彦さんの頭の中を覗くのにはこの本が最適かもしれません。

    人間はこんな風にして物事を「分かろうと」しているんだということを気づかせてくれます。
    真実を理解しないまま「分かる分かる」が優先されてしまいがちだったり、
    「分からない」ことは「分からなさかげん」がよく分からない。
    などなど。

    人はどのように「分かろう」としているのかを知り、効果的な「伝える」方法を身につけるのに役立ちそうな本だと思います。
    プレゼンテーションがうまい人は、この辺のツボを押さえているのでしょうね。

    私がときどき気になり、頭に引っかかることも2つ取り上げられていました。

    ⇒ この文章を読んでいるのは、誰の声?
    この文章を読んでいるのは、いつも聞こえる自分の内側の声。

    ⇒ ニュースでよく聞く「~のようなもの」
    「バールのようなもの」ということで、「バール」ではない何かほかの物の集合の代表が「バール」であることを認識する。
    それを、正確性に気を遣うアナウンサーが真面目に読むからおかしさが生まれる。
    声には出しませんが、「バールじゃないんかい!」と突っ込んでしまいます。

  • ぼくがアカデミックな場で一緒に仕事をしたり、遊んだりする方々は大抵読んでいる一冊。新学習指導要領を編集している方やアクティブ・ラーニングなど新しい学び方を提案する方も参考にしている。多面的で多角的な見方・わかり方・

    佐藤雅彦さんと言えば、CMプランナーとして革命を起こした方。カローラIIで当時無名だった小沢健二を起用したり、NECの「バザールでござーる」のフレーズをつくったり、「だんご三兄弟」のように誰にでもわかる普通のトーン、同じフレーズのリフレインを扱ったり。単純かつ素朴さが人気を集める。「ポリンキー」「スコーン」「ドンタコス」のCMは神がかってるとしか思えない。住友銀行の100周年ロゴ製作の話は、何度聞いても面白い。

    【コミュニケーション】の定義は、情報を移動させることによって、意味の共有を図ること。

    発信と受信のディスコミュニケーション

    私は表現を作る時には、いきなり表現に入るのではなく、どう作ったらかっこいいもの、面白いもの、かわいいものができるかいうことを、まず考える。

    【象嵌】

    ピタゴラスイッチ、0655/2355など教育上テレビへの活躍は、佐藤雅彦さん自身が小さな頃から夢中になったという「教えること」へ嵌め込むことで、新しいコミュニケーションデザインを模索しているのかもしれない。自分自身の中にある「新しいわからなさ方」を知ることで、「新しい分かり方」を知る。読書というより、「体験」する本。

  • 佐藤雅彦の著書は脳内が心地よく刺激される感じがすごく好きです。
    これも、本屋で見かけた瞬間に「読みたい!」と思って衝動買いしましたが、なんとまあ面白いこと。

    細かいところはまだ読み途中ですが、この本に「参加してみる」だけでも本当に面白い。手や指を置いて、ページをめくって、透かして見て、本を逆さにして、その後の種明かしに「うわ!ほんとだ!」と思える驚き。

    何年か前に、銀座で行われていた「指を置く」展に行ってめちゃくちゃ面白かったのを思い出しました。

  • 本を開くと、何の説明もない写真やイラストが急に始まるので「よくわからない本だ......」と一瞬戸惑う。それがすでに著者の思うツボ。眺めているうちにピンときたり、何かを感じたりして、その度に脳味噌のあちこちを優しくつつかれるようないい気分に。本という形態を逆手にとった実験作品は目からウロコでした。この本にしかない、知的な「楽しさ」が詰まってます。

  • 素晴らしい。

  • ピタゴラスイッチの人。
    読書という感じではないかもしれない。
    絵や写真でタイトル通り「新しいわかり方」を提示する。
    ・視点の変更
    ・digitalの脳内補完
    ・作品に参加することで見え方が変わる
    など、ピタゴラや2355を彷彿とさせる感じ。
    最後のエッセイも、
    ひきつけられるような、続きが読みたくなる
    文章が魅力。(文体なのか? )

  • ピタゴラスイッチの佐藤先生の本
    あとがきから読んで、最初に戻って作品群を読み、後半の随筆群を読む、という順番をおすすめしたいです。
    最後の方の「〜のようなもの」と、解剖学のお話で、ため息が出るほど「新しい分かり方」を味わいました。

  • 「バザールでござーる、だんご3兄弟、ピタゴラスイッチ、0655……。30年間、表現と教育の分野で、「伝える」方法を追究し続けてきた著者。そのマイルストーンとなる1冊。50数点の作品と解説エッセイで、「分かる」ことの喜び、楽しみを体感する本。「分かる」とは、人生が広がることだと実感できます。」

    小学生と眺めてもおもしろい。

  • 人間ってこんなわかり方、こんなわからない方(言葉変、、)があるんだーと思った。
    小さい時に読んでたら興味が変わってた気がする。
    哲学的だなと思った。

  • 面白くて一日で読んでしまいました!人間はこんな見方ができるんだなぁと感心しました。これは一体何?と思う作品もあり、それは解説を読んでやっとわかりました…(笑)ピタゴラスイッチ好きにはたまらない一冊だと思います!

  • どんな生き方をすればこんな視座で物事を捉えられるのか…。
    もう、ホントスゴイ(語彙力)

  • さすが佐藤雅彦。これは佐藤雅彦のよさが凝縮されたような本だ。特に最後の随筆にはぐっときた。自分のその経験を「象嵌」の最初の経験だと捉えられる感性に、そしてその感覚や感情をも蘇るような文章として表現できることに畏敬の念を抱かざるを得ない。読後にせつなさが残った。前半は絵本のように読めて、最後にはじーんとくる。素晴らしい本だ。多くの人に勧めたい。

  • とても素敵な本。なるほど、と分かる体験は面白いし、その解説・グループ化の観点も興味深いし、コラムの空気感も好き。ピタゴラ的なユーモアは言わずもがな。買おうかなー

  • 絵や写真の作品もエッセイも素晴らしかった。
    ひとつの個展を見に行ったような感覚。

    ろうの方への知らせてはいけない思いやり、解剖の話、同じ情報が違う価値を持つこと、思考のクセなど心に残ることがいくつもあった。娘にも将来読んで欲しいなぁと思った。

  • 自分がしている「物事の分かり方」をこんな風に客観的に捉えることができるのか、という驚きがあった。

    文字通り、体験としての読書 といったところか。

    電子書籍ではなく紙の本で読むことに意義があることが明確な本だった。

  • シンプルで
    それでいて
    ストーリーテーリング

    美しく楽しい一冊

  • ETVのピタゴラスイッチ。などに関わられている方の著書。
    あみだくじの概念を分かるために、紐で実体化する。現実を理解するために概念化することもあれば、概念を理解するために、現実を利用することもある。
    コミュニケーションの定義は、情報を移動させることによって、意味の共有を図ること。であるが、我々は受け手に自分と同じ解釈基準を期待して、情報を送っていることが多い。しかし、基本、受け手の置かれている状況は自分とは異なり、別の解釈基準を持っている可能性は決して少なくない。
    例えば、桃太郎を読む人の子と鬼の子のリアクションのように。

    人間はこうして分かるんだ。こんなことが分かるんだ。という過程を見られる書でとても興味深かった。
    最後におさめられている随筆も面白かった。

  • 2017年に出版された本書を今更ながら読了。
    当時、なるほどデザインが売れていた状況で同書がリリースされたことを記憶している。
    以前同僚だったデザイナーが推薦していたこともあり、気になっていたが、読んでみてその理由がわかった。

    著者の佐藤さんは電通で17年勤めた後に独立して、引き続きクリエイティブな仕事を続けている方で、作品ポートフォリオは有名なものも多いだろう。

    2部構成になっていて、前半は主に写真やイラストをふんだんに使った「体験」に重きが置かれている。最後の方にそれらの解説を込めた文章が書かれている。

    タイトルの通りの「新しいわかり方」を読者が書をめくるページとともに体感できるような設計が絶妙である。

    心に残った一文は下記
    ```
    【コミュニケーション】の定義は、
    情報を移動させることによって、意味の共有を図ること

    であるが、私たちは受け手に自分と同じ解釈基準を期待して、情報を送っていることが多い。
    しかし、基本的に、受け手の置かれている状況は自分と異なり、別の解釈基準を持っている可能性は決して少なくない。それが世の中に蔓延するディスコミュニケーションの要因であろう。
    ```
    これはまさに的を得たりという表現だった。
    同書内に仕掛けられている様々なわかりの部分も、全てが作者の意図通りの解釈性は得られなかった。
    しかし、それはそれでいいのだ。なぜなら解釈基準が異なっているからだと自分で納得してしまった。

    これは今の教育における主体性教育の分野、探求の分野においても非常に重要な視点な気がする。
    また、いわゆるIDEO的なシリコンバレーデザインシンキングとロベルト・ベルガンディの突破するデザイン的な感性的なデザインプローチにおける課題提起にも似た何かを感じた。

    本書は良質な読書体験をもたらせてくれる。
    強いて言えば、コンサルタントの細谷さんの「具体と抽象」という本がある。あれは少し抽象寄りの内容だが、同書は具体に近いポジションを取った具体と抽象体験が得られるからだ。
    しかも具体のエピソードが非常に強烈でよく言えばエモい感じである。これがまたインパクトがあり、気持ちいい。
    しかも、そんなに文字が多くないのでさらっと読める。
    いいとこづくめの本書をぜひお薦めしたい。

    ・目次
    1 そのようにしか見えない
    2 分かるとうれしい
    3 本というメディア
    4 分かると分からないの間
    5 自分の中の出来事
    6 はてなき着想―理想の副産物として
    7 新しい分かり方 随筆(解説としての意味もある)

  • あらためて、「写真」「イラスト」「映像」は、意味を伝えることが分かります。

    http://naokis.doorblog.jp/archives/design_communication.html【書評】『新しい分かり方』意味を伝えるということ : なおきのブログ

    <目次>
    (一)そのようにしか見えない
    (二)分かるとうれしい
    (三)本というメディア
    (四)分かると分からないの間
    (五)自分の中の出来事
    (六)はてなき着想 −理想の副産物として
    (七)新しい分かり方 随筆(解説としての意味もある)
      自分の仕業
      系が違う
      同じ情報、違う価値
      モダリティの話
      〜のようなもの
      象嵌 医学部2号館
    作品リスト
    あとがき


    2018.01.08 勘と経験と読経より。著者はピタゴラスイッチ、アルゴリズム体操の考案者。
    2018.02.10 予約
    2018.07.16 読書開始
    2018.07.18 読了

  • 0655とかの雰囲気が好きだったので読んでみた本。分かり方、というより色んな表現の仕方伝え方があるんだーと感動する。
    きちんと解説もついているので、それを読んで自分の感じたことの答え合わせや、文章で見る気持ち良さもある。
    最後の象嵌に関する随筆はとても印象深くて、ちょっと忘れられない。

著者プロフィール

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

「2024年 『宇宙ビジネスのための宇宙法入門〔第3版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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