アーロン収容所―西欧ヒューマニズムの限界 (中公新書 (3))

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著者 : 会田雄次
  • 中央公論新社 (1962年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121000033

アーロン収容所―西欧ヒューマニズムの限界 (中公新書 (3))の感想・レビュー・書評

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  • 1962年刊。著者は94年時?に京都大学名誉教授。◆アジア太平洋戦争終結後、ビルマにて投降した教育招集者による英軍捕虜収容所体験録。◆他人(特に英国)に厳しく、自分や日本側に甘い見方と感じられる点(特に、対インド人への侮蔑眼を持つと思われる節も)、捕虜収容の社会的意味(少数人で、しかも面従腹背の可能性あるインド人の助力を得ながら、多数の捕虜を管理・維持する必要性がある)を没却している感、シベリア抑留記に比べ相当牧歌的な点、個別の英人の特殊性癖を、さも英国人の国民性に結び付けようとする牽強付会は感じる。
    特に58頁以下の、肉食・牧畜業と捕虜収容の慣れとを結びつける推論は無茶に過ぎる(モンゴル人は捕虜の扱いが上手いとでも言うのか。牧畜業を辞めれば捕虜の扱いが下手になるのか?)。加えて、日本の捕虜収容施設の実見分をしたことがないのに日英の優劣を比較をするという、体験談に根差した論証としては、根本的な誤りをしているなど、とても学者の書いたものとは思えない。また、戦闘終結直後の捕虜収容は感情面など戦時の影響を想定でき、このような特殊性が考慮せずになされた、本書の副題に関する論はあまり説得力がない。
    もっとも、①盗みをしながら捕虜生活を維持した事実など、体験叙述の具体性、②施設での英・印・ビルマの比較が明快、③収容所で解体していく軍隊秩序模様、④生々しい感情描写等、真に迫る情報は豊富。そんな中、①戦時中に日本兵相手のビルマ女性のセックスワーカーが存在していた点、②日本国内での検閲を恐れ通信文は正直に書けず、家族からの送付文も同様だったと開陳する点、③戦時中捕虜になった日本人は、著者ら戦後投降者を避け、挨拶にも応じず(戦陣訓の呪縛が想定される)など、何気に書かれた箇所に見過ごせない記述が散見される。
    西欧=肉食・牧畜業の虚構は「魚から始まる世界史」「粉食文化と肉食文化」にもある。肉食が増えたのは17~18C以降と極めて現代に近い時期に始めて。魚食の多用の実など。◆著者、イタリア・ルネサンスではあるが、西洋史が専門のよう……。

  • 本来はなんてことない職業の人なのに
    収容所での盗みの才能があるもの
    軍では偉いひとなのに
    収容所では大したことない人

    才能や能力なんて
    場に恵まれないと
    発揮できないみたいな
    記載があったと思う

    なんとも心なごむ

  • ミャンマーにおいて捕虜生活を過ごした主人公の体験談。イギリス人の人間性が考察されています。とても残酷な気分になるシーンも多くある一方、捕虜生活をある意味楽しそうに過ごすシーンも多くあり、少し予想外でした。日本人捕虜のイギリス兵に対する駆け引きが多く描かれていました。イギリス兵に隠れて食べ物を盗んだり、仕事を上手くさぼったり。捕虜生活でとても辛い生活をしているはずなのに、読みながら「ぷっ」と笑ってしまうような、とても不思議な気分になる本でした。

    イギリス人士官がミャンマーの女性を輪姦し、その姿を日本人兵に見せつけたシーン、日本人捕虜が服の中に缶詰などを隠しながらイギリス人の検問を突破するシーン、日本人兵が部屋に入ってきても全裸で居続けるイギリス人女性兵のシーン、イギリス人兵がまるでゴミのようにビルマ人の死体を扱うシーンなどが印象に残っています。

    一つ感じたのは、文化(生活環境)の違いは生き物としての違いにまで及ぶのだということでした。作品内で描かれているイギリス人と日本人は同じ生き物(人間)には見えませんでした。

  • 西欧ヒューマニズムの限界というのはやや大げさな気がする。
    読みやすいし非常にわかりやすい反面、「アジア人民との連帯が足りないのではないか」などと60年台の団交のように突っ込みたくなるような気がしないでもない。

    私自身が大いに楽しみつつ白けて読んでいるのは、山本七平、大岡昇平といったあたりで同じようなものを読んでいるからで、内容が似ているので区別がつかない。
    昔は山本七平の戦争ものが好きだった。今でも好きだけど。だけどそれだけに、これはこれで一面的な見かたではないかと思い始めている。

  • 名著といわれるのが理解できるように思えました。
    収容所というとソ連とかがイメージとして大きいけれども
    他にもあったということ。

    著者はミャンマーで収容され、
    2年もの間強制的に労働させられました。
    なぜ彼らは生き延びられたか…
    生きるために「必死」になれたからだと思います。

    ユーモアが混じっているので
    こういった体験記なのに関わらず
    楽に読めてしまったのは驚きでした。
    そして、連合軍のやったことは
    形式上は暴力ではないけれども
    人を壊すものだということ…

    戦争はやはりやってはいけないもの。
    これ以上起こしてはダメ。

  • 学校の読書感想文(確か高校一年生の時)の課題図書
    だった。一読すれば必ず西欧もとい白人が嫌いになる本。
    著者が学徒兵として経験したことをそのまま書かれており
    何人たりとも彼の体験を否定できない。

    西欧ヒューマニズムは人間外とされる黄色・黒色人種には適応
    されないという恐ろしい人間の本性をさらけだした作品。

  • 先輩よりお借りした一冊。

    京都大学でルネサンス史の教鞭を執られていた会田雄次教授。
    同氏は、戦後、英国軍の捕虜としてミャンマーのアーロン収容所で強制労働に従事していた。

    そのキョーレツな体験を生々しく克明に記しているのみならず、氏の独特な表現による英国人像、そして日本人像、人間観が見事に描写されている。

    日本人として気付かされること、今まで知らなかった西洋の本質、そして当然ながら戦争の悲惨さを改めて認識させられる良著である。
    以下個人的に興味があったところをツラツラと。
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    ★プルターク英雄伝の逸話より
    ある子供が、人の畑から、ブドウを盗んだ。
    畑の持ち主がそれを見つけて咎めると、子供はブドウを懐にかくして、盗まないと言いはった。
    だがそのブドウの中に蛇がいて、子供の腹を食い破り、腸を食いきった。
    言語に絶した苦痛の中でも、子供はなおブドウを出さず強情を張ったのでとうとう死んでしまった。
    これはバカな子供にもっと上手く盗めと教える話ではもちろんない。
    正直にしましょうという教えでもない。
    正直にしないと神が罰を与えるというたとえではさらさらない。
    いったん言い出したことは断固としてつらぬくスパルタ的精神をたたえたものなのである。

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    日本軍の、命令には絶対服従というのは、長いものには巻かれろという心理の基礎の上に立っている。
    その長いものが正義の具体像でないかぎり拒否すべきだというイギリス人のような信念は持っていなかったようである。

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    私達日本人は、ただ権力者への迎合と物真似と衆愚的行動と器用さだけで生きてゆく運命を持っているのだろうか。

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    日本人のこのような態度は、自覚しているといないとにかかわらず、自分たちの容姿の醜さに劣等感を持ち、しかも過度にそれに敏感になっていることと関係していると思う。
    容姿を気にするなという説教が多すぎることは、気にしすぎているという証明ではないだろうか。
    日本文化の粋というものが、古代や織豊政権期を例外として、いずれも正面きってのものでなく、それこそ奥の細道的なところに自分の存在理由を発見しているのは、そういうことと関係しているのではないだろうか。

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  • イギリス軍の捕虜としてビルマで過ごした2年間の話。
    フィリピンでの捕虜生活を描いた大岡昇平の「俘虜記」も相当面白かったがこれもまた。
    読み比べると日本人の態度に数多くの共通点があり、またアメリカ人とイギリス人の違いも見えて面白い。

    捕虜生活という特殊な環境でこそ生まれた国の人間の違いが大きく出るのか。
    日本人捕虜は新しい秩序に順応し、権力におもねり、ズル賢く物を盗み、形ばかりの反抗をみせ、独自のマーケットをつくり、あるもので器用に様々なものや文化を再現し、そして徐々に堕落していく。
    「私たち日本人は、ただ権力者への迎合とモノマネと衆愚的行動と器用さだけで生きてゆく運命を持っているのだろうか」
    という日本人観が当を得ている。

    副題の「西欧ヒューマニズムの限界」というのは、イギリス人が「ジェントルマン」なのは同じ白人に対してだけということ。日本人や現地人は「家畜」と同等だとしか思っていない。
    現地人でいうとインド人は適当。ビルマ人は優しい。グルカ兵はひたすら忠実。でも皆日本人に比べると「愚かな」存在として描かれる。
    ただ、彼らが日本人を「マスター」と呼ぶように、西欧人を追い払った小柄な日本人はやはり畏敬の念で見られたのだろう。

    しかし、「むやみに粗暴になっているとともに、むやみに涙もろくなっている」捕虜の態度はいじけた子供のようで、まじめに描くと滑稽でもある。

    最後に以下が一番心に残ったので。
    「(捕虜の中で)しだいに発言権を持ってくるのは、何よりも泥棒がうまく、要領がよく、そしてかなりゴテることができる心臓と、論理はどうでもよいが「名文句」の入ったとうとうたる弁舌の持ち主である。日本の議員さんみたいな人間である」

    <以下適当に線ひいた引用>
    ・主人がかわるとなんのためらいもなく新しい主人に忠誠をつくすことができる・・・・・・この転換のあざやかさに日本人の特質がある
    ・彼女たちからすれば、植民地人や有色人は明らかに「人間」ではない
    ・彼等は多数の家畜の飼育に慣れてきた
    ・英国人「私たちは日本のサムライたちと戦って勝ったことを誇りとしている」・・・・・・勝者のご機嫌取りを察知されたことに対する屈辱感
    ・イギリス軍は階級と社会的地位がよく対応する
    ・青白きインテリと筋肉バカ。戦前戦後を通じ、教養と体力とは本来的に別物である、別物どころか対立物であるというのが私たちの観念
    ・「日本捕虜使用について」自信が強いからなるべくおだてて使う・・・・・・・時間制だとサボるから請負制。日本兵の能力はインド人やビルマ人労働者の7、8倍
    ・インド国民兵の方がかえって立派だった。
    ・最も適切な瞬間における諸行無常と傍観の教えだった。
    ・「あなたがたは楠公精神を忘れてしまいましたね」
    ・兵隊仲間では急速に旧軍隊意識が喪失していったのに対し、将校・下士官、特に職業軍人を中心とする連中は、軍隊秩序をそのまま維持しようと無理やり努力した・・・・旧体制の維持は早急に労役の効果をあげるには大いに便利だった

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  
    ── 会田 雄次《アーロン収容所 ~ 西欧ヒューマニズムの限界 196211‥ 中公新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/412100003X
     
     会田 雄次 西洋文化史 19160305 京都 19970917 81 /“学者タレント”
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%B2%F1%C5%C4+%CD%BA%BC%A1
     
     むかし、NHK京都放送局の喫茶室で《会田雄次とビルマを訪ねる旅》
    を企画したらどうか、と世間話で話したら、わかいプロデューサーが、
    「そんなもん、何の意義があるか」とせせら笑った。
     
     こういう世間話は、まじめくさった番組企画でなく、実現にあたって
    生じるトラブルなどを、面白おかしく予想するところに趣向があるのだ。
     のちに同工異曲の追悼ツアーが頻出したので、いささか惜しまれる。
     
    (20090721)(20150418)
     

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