アーロン収容所: 西欧ヒューマニズムの限界 (中公新書 3)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121000033

感想・レビュー・書評

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  • 「戦場で恐怖に圧倒される中、戦場でこそ生き生きする人種がおり、そういう人々は平々凡々な生活の中でその才能を発揮することはない」にかっこよさと切なさを感じた

  • 本来はなんてことない職業の人なのに
    収容所での盗みの才能があるもの
    軍では偉いひとなのに
    収容所では大したことない人

    才能や能力なんて
    場に恵まれないと
    発揮できないみたいな
    記載があったと思う

    なんとも心なごむ

  • イギリス軍の捕虜としてビルマで過ごした2年間の話。
    フィリピンでの捕虜生活を描いた大岡昇平の「俘虜記」も相当面白かったがこれもまた。
    読み比べると日本人の態度に数多くの共通点があり、またアメリカ人とイギリス人の違いも見えて面白い。

    捕虜生活という特殊な環境でこそ生まれた国の人間の違いが大きく出るのか。
    日本人捕虜は新しい秩序に順応し、権力におもねり、ズル賢く物を盗み、形ばかりの反抗をみせ、独自のマーケットをつくり、あるもので器用に様々なものや文化を再現し、そして徐々に堕落していく。
    「私たち日本人は、ただ権力者への迎合とモノマネと衆愚的行動と器用さだけで生きてゆく運命を持っているのだろうか」
    という日本人観が当を得ている。

    副題の「西欧ヒューマニズムの限界」というのは、イギリス人が「ジェントルマン」なのは同じ白人に対してだけということ。日本人や現地人は「家畜」と同等だとしか思っていない。
    現地人でいうとインド人は適当。ビルマ人は優しい。グルカ兵はひたすら忠実。でも皆日本人に比べると「愚かな」存在として描かれる。
    ただ、彼らが日本人を「マスター」と呼ぶように、西欧人を追い払った小柄な日本人はやはり畏敬の念で見られたのだろう。

    しかし、「むやみに粗暴になっているとともに、むやみに涙もろくなっている」捕虜の態度はいじけた子供のようで、まじめに描くと滑稽でもある。

    最後に以下が一番心に残ったので。
    「(捕虜の中で)しだいに発言権を持ってくるのは、何よりも泥棒がうまく、要領がよく、そしてかなりゴテることができる心臓と、論理はどうでもよいが「名文句」の入ったとうとうたる弁舌の持ち主である。日本の議員さんみたいな人間である」

    <以下適当に線ひいた引用>
    ・主人がかわるとなんのためらいもなく新しい主人に忠誠をつくすことができる・・・・・・この転換のあざやかさに日本人の特質がある
    ・彼女たちからすれば、植民地人や有色人は明らかに「人間」ではない
    ・彼等は多数の家畜の飼育に慣れてきた
    ・英国人「私たちは日本のサムライたちと戦って勝ったことを誇りとしている」・・・・・・勝者のご機嫌取りを察知されたことに対する屈辱感
    ・イギリス軍は階級と社会的地位がよく対応する
    ・青白きインテリと筋肉バカ。戦前戦後を通じ、教養と体力とは本来的に別物である、別物どころか対立物であるというのが私たちの観念
    ・「日本捕虜使用について」自信が強いからなるべくおだてて使う・・・・・・・時間制だとサボるから請負制。日本兵の能力はインド人やビルマ人労働者の7、8倍
    ・インド国民兵の方がかえって立派だった。
    ・最も適切な瞬間における諸行無常と傍観の教えだった。
    ・「あなたがたは楠公精神を忘れてしまいましたね」
    ・兵隊仲間では急速に旧軍隊意識が喪失していったのに対し、将校・下士官、特に職業軍人を中心とする連中は、軍隊秩序をそのまま維持しようと無理やり努力した・・・・旧体制の維持は早急に労役の効果をあげるには大いに便利だった

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    [ 参考となる書評 ]

  • ビルマにて捕虜になった著者の記録
    読みやすくてすんなり読了

  • 日本人収容所での実体験を基にした回顧録.
    戦争について勝手なこと言ってる現代人に読んで欲しいw

著者プロフィール

会田雄次

一九一六年京都府に生まれる。四〇年京都帝国大学史学科卒業。四三年に応召、ビルマ戦線に送られ、戦後二年間、英軍捕虜としてラングーンに抑留された。帰国後、神戸大学、京都大学(人文科学研究所)をへて、京都大学名誉教授。専攻はイタリア・ルネサンス史。著書は『アーロン収容所』『ルネサンスの美術と社会』『ミケランジェロ』など多数。九七年逝去。

「2019年 『日本史の黒幕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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