ワイマル共和国―ヒトラーを出現させたもの (中公新書 (27))

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著者 : 林健太郎
  • 中央公論新社 (1963年発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121000279

ワイマル共和国―ヒトラーを出現させたもの (中公新書 (27))の感想・レビュー・書評

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  • 「主権在民」・「男女平等の普通選挙」・「団結権・団体交渉権の保障」など世界で最初に「社会権」の保障を掲げ、当時としては最も民主的な憲法(ワイマール憲法)を持つことでお馴染みのワイマール共和国(1919-33)の歴史について書いた本です。しかし、そんな憲法の名声とは裏腹にこの共和国の歴史は苦難の連続でした。第1次世界大戦(1914-18)でドイツ帝国(第2帝国)が敗れた後、スパルタクス団の蜂起(1919)に始まり、敗戦による賠償(金)問題、その支払いの遅延を理由に起こったフランス・ベルギーによるルール占領(1923-25)。そこから発生した爆発的なインフレーション(当時の首相シュトレーゼマンにより奇跡的に回復)。これ以降の賠償問題は、ドーズ案(1924)・ヤング案(1929)・ローザンヌ会議(1932)で賠償金の削減は徐々に削減に成功。また対外的には、ロカルノ条約(1925)・国際連盟へのドイツの加入(1926)・不戦条約(ケロッグ・ブリアン協定)(1928)と平和路線を成功したかに見えましたが、1929年の世界恐慌の影響を受け、それはヒトラーによるナチスの介入を招き、1933年についにナチスが政権を取ったことによりこの共和国は倒れてしまいます。第1次大戦からヒトラーの政権獲得までの歴史をよくまとめている良い本だと思いますが、書かれたのがけっこう古いのが唯一の難点でしょうか。

  • 1963年刊行。著者は東京大学名誉教授。

     憲法論・憲法制度史からみれば絶対にはずすことができないワイマール共和国。その共和国が成立し、そして崩壊した道程を描写する古典的ロングセラー。

     ナチスドイツ、戦後ドイツを見る上でも、比較対象として重要だし、戦後日本を照射する上でも不可欠な前提知識のように思う。

  • ワイマル共和国の誕生から終焉まで

  • 第一次大戦後ドイツに誕生し、そしてナチスの台頭を許して崩壊したワイマル共和国の政治史。
    社会主義的革命によって誕生した、民主的憲法を掲げた共和国が、いかにして右傾化していき一党独裁に至ったか。
    ドイツ国内の状況と国外との関係を丁寧に追いながら時系列に解き明かしてゆく。

    ある意味、混乱を宿命づけられていた国家だったとしか言いようがない。
    帝政から共和政への政治体制の大転換だけでも大事なのに、ヴェルサイユ体制という外部からの強烈な軛、ようやく安定したかに見えたタイミングでの世界恐慌。
    政治も社会も経済も、安定を目指して遂になし得ず、混乱を極めれば極めるほど民主主義的な手法では収拾がつかなくなっていき、政党政治は形骸化し、民衆は強烈なリーダーシップを求め始める。。。

    それでも本書を読んで感じたのは、ここに登場した(特に成立初期~中期までの)どの人物も政党も、祖国を真剣に憂い、本気でドイツをよくしたいと思って行動し、その主義主張をぶつけ合っていたのだな、ということ。
    その結果が悲劇に至ったとは言え、冒頭で著者が「(ワイマル共和国時代について)うまく書けば小説に劣らぬ面白い物語ができるにちがいない」と述べているのもうべなり、と思える。
    (ただし、共和国末期ごろには段々と政争に勝つこと自体が目的化していく様子が読み取れる。。。)

    ナチス誕生の前舞台をしっかり知ることができた。

  • 帝政ドイツは、ホーエンツォルレルン家の皇帝によって支配されていたが、この帝国は同じ君主国でもイギリスのように議会が政治の中心をなす民主的な君主制ではなかったし、帝政ロシアのような専制帝国でもなかった。
    ドイツ帝国には普通選挙にもとづく議会もあったし、法律は議会を通過しなければ施行されなかった。
    しかしそれが議会政治でなかったというのは、政府が議会から全く独立に構成されていたからだ。
    首相以下の大臣は皇帝から任命され、議会にではなく皇帝に対して責任を負うというもの。
    例外的な場合を除いて議席を持つ政党員が大臣に任命されることはなく、大臣はもっぱら官僚から選ばれた君主制であった。
    このような制度が革命によって一挙にとり払われ、君主制から共和制に変わったばかりではなく議会に基礎をおく政党政治がはじめて行われることとなった。
    ワイマール共和国の誕生である。

    帝政ドイツ時代に参戦した第一次世界大戦でドイツは主要な戦闘においては一度も負けた事はなく、占領地域は東西にわたって広く敵地にはいりこんでいた。
    報道は軍の厳重な統制下におかれ、国民は最後の段階にいたるまで自国が負けるとは考えていなかった。
    マルヌ河畔の戦いにおいてフランス軍を撃滅することに失敗して以来、ドイツの究極的な勝利はむずかしくなり、戦線は膠着。
    長期化した戦争によって国民は苦しい生活を余儀なくされた。
    1918年に首都ベルリンで起きたストライキは、参加者40万人ともいうべき大規模なものであった。

    1918年9月、ドイツ参謀総長のヒンデンブルグと参謀次長のルーデンルドルフは、突然政府に通牒を送る。
    内容はアメリカの十四か条受諾による休戦条約締結するために国制を改めて議会に立脚した政府をつくらねばならぬという要求であった。

    戦争の英雄であったヒンデンブルグは政治的には無能であったが、野心家のルーデンルドルフは1916年に参謀次長の職に就いて以来、陸軍を掌握しただけでなく、軍の力を背景として政治に干渉し、全ドイツを彼の独裁下においた辣腕家であった。
    ルーデンルドルフは戦争反対論を厳重に禁圧し、自由主義者や社会主義者の主張する国制改革や議会の重視に強く反対してきた人物である。
    その彼が突然掌を返すように敵側の条件による休戦と彼が最も反対してきた議会主義とを要求してきたのである。

    ドイツ革命の口火はキール軍港の水兵によって切られた。
    無謀な命令に対して水兵の反乱が起こり、キールに飛び火して大規模な反乱となり、さらにはミュンヘン革命となって帝政ドイツに大きく揺さぶりをかけることとなった。
    ベルリンでは首相マックス(ルーデンルドルフの指名によって首相就任)が皇帝退位の発表を行い、エーベルトに首相の地位を引き渡した。
    ドイツは皇帝の退位によって事実上共和制の路を歩むことになるが、国民への共和国宣言に関しては、マックス内閣で大臣であったシャイデマンが独断で行うというお粗末なスタートであった。

    その後一月蜂起という20万人に及ぶデモを政府が鎮圧するという事件を経て、国民議会の選挙、そしてエーベルトを大統領としたワイマール共和国がスタートすることとなった。

    ワイマール憲法は、「国家の構成と課題」、「ドイツ人の基本権と基本義務」の二大部分に分かれている。
    その中でも、国制上、後に大きな意味をもつのが大統領に関する規定である。
    大統領は任期七年とし、議会ではなく直接人民投票によって選ばれることとなり、官吏・将校の任免権、軍隊の統帥権、州が憲法の義務を果たさない場合、武力によってこれに制裁をくわえる権利を持つ。
    また公共の安寧秩序が損なわれた場合には武力をもってこれに制裁を加える権利を持つ。
    その際には基本的人権に関する諸規定が一時期停止され得るとするから凄い!
    大統領は完全な独裁権を行使し得るのだ。

    このような強力な大統領制は当時最も民主的な思想家であったプロイスやマックスウェバーの主張によって生まれたものであった。
    彼らの主張によれば、「ドイツ人のあいだに議会政治の訓練が行き届いていないために、議会に全権をあたえたならば収拾のつかぬ混乱を起こすおそれがある」と考えたからだ。
    「基本権と基本義務」に関しては、この憲法の特色をよく発揮したものであっt。
    「経済生活」の項には、社会主義の精神が取り入れられている。
    ここでは所有権は保護されているが、公共の福祉のためには、それが制限され得ることを認めている。
    経済活動の自由が規定されているが、それと並んで労働者の権利も種々の形で保証されている。
    ただ、この憲法自体が円滑に運用されたかに関しては、国民経済が順調に発展し得るか否かにかかっていた。

    しかし、時代はドイツにとって暗い影を落とす。
    ベルサイユ条約である。
    第一次世界大戦の戦争責任はドイツとその同盟国にありとし、ドイツ賠償の義務を規定した。ドイツは三十年にわたって賠償の支払い義務を課せられあらゆる歳入は賠償支払いに向けられるべきものとされた。
    また、ドイツは戦費の調達を直接税ではなく公債の発行によって賄ってきたため、軍隊の復員や失業者の救済など不換紙幣が氾濫した。
    貨幣価値が低落と社会不安による国内の生産は停滞は国内にインフレを巻き起こし、ドイツの中産階級は没落した。

    その後政治的にも経済的にも混乱の極みに達したドイツでは、ナチスドイツに期待が集まるようになるが、それはまた別の話。

    当時最も先進的な憲法であったはずのワイマール憲法であるが、仮にドイツが順調に経済発展を積み重ねることができたならば、国民主権の国家として成長していくことができたのかもしれない。
    しかし、時代はそれを許さなかった。
    最も先進的な憲法と、史上空前の経済混乱、そして飽くなき政治闘争。
    ドイツは不幸にして政治・経済における光と影を凝縮した時間の中で体験することとなった。
    憲法論議の進む今、この時代をさらに見つめ直すことで、未来への道筋を見つけられるのではないだろうか?
    歴史的教訓だけで終わるか、この時代に光をもたらす暗夜の灯となるかは、我々ひとりひとりにかかっているのかもしれない。

  • 教科書では出てくるけれど、
    あまり詳細は出てこないであろう
    ワイマル共和国に関しての本です。

    戦争、がすべてを引きずる要因といっても
    過言ではないように思えます。
    もしも戦争がなければ決して
    悲しいことにはならなかったでしょうから。

    完璧な憲法といえども、
    混乱下では灰燼と帰すものですね。

  • 学生時代からずっと読みたい本に挙げていたが、最近も話題になってることがきっかけで購入し、四半世紀以上を経て漸く読了しました(2014/3/8)。そういうわけで、今の日本との異同を意識しながら読んだわけですが、戦後賠償、経済的困窮など当時のドイツならではの固有の事情が大きく、類似性こそ多くは認められなかったものの、官僚制や君主制に慣れ切って共和制などの民主政治に不慣れで、画期的な憲法も形式に過ぎず、ワイマール体制がナチズムを生んだ教訓は今日も生かすべきと痛感しました。立憲主義がいかにあるべきか、今日的な民主主義はどうあるべきか、そして有権者として自分はどういう姿勢で政治に臨むべきかを考えるのに有益な一冊です。

  • ふたつの感想を持った。
    ひとつは、いくら制度を理想的なものにしても、
    景気や国際状況の前にはその維持すら難しいということ。
    人が理想のために生きるのではなく、
    生存のために生きることが前提となっている。
    これは特別なことではなく、
    日本に置き換えてみれば通説であったはずの
    天皇機関説の排撃や、現行憲法九条の解釈の変遷、
    また統帥権の拡大解釈など様々思い起こされる。
    ただ、ヒンデンブルクはまさか国を滅ぼしたくて
    首相を選んだわけではないはずだし、
    授権法を成立させた議会も同様だ。
    より良い(ましな悪を?)選択してきたはずが
    その積み重ねにおいて結果失敗だったことは、
    ドイツの記述に日本を重ねてしまう。

    もうひとつの感想は、ワイマール憲法下では権力が分散していて
    政治の意思決定に難があるのではないかということだ。
    理屈上は参政権をもつ国民が増え、その分国政に対する権利が
    分散されたことになる。
    それとは別に地方の行政組織の独立性や政党の激しい対立や
    政治団体のもつ暴力的な組織について述べられている。
    長期政権は無く、内閣が短いスパンで次々に変わっている。
    このような状況では恐慌からも、対外的な債務の弁済からも
    国民を守ることは難しそうだ。
    ワイマール下でナチスが望まれたことについて現状打破の期待が
    大きかったこが容易に想像できる。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(立花隆選)158
    ファシズム

  • やはり俺は外国人が登場人物である書物には弱い
    何度も戻りながら読む

    瀧本先生がワイマール共和制は重要だというから読んでみた
    一番の原因は、ベルサイユ条約 次いで、大統領制度の欠陥かなあ
    国民が官僚に飼い慣らされており民主的な素養が云々というのはわりと抽象度が高すぎてあまり好みの議論ではない
    しかしなにをすれば破滅を回避できたのか、最初から運命づけられていたのではという安易な結論に行き着きそうになってしまう

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ワイマル共和国―ヒトラーを出現させたもの (中公新書 (27))の作品紹介

付: 参考文献209-212p

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