高杉晋作 (中公新書 60 維新前夜の群像 1)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121000606

作品紹介・あらすじ

維新前夜の群像 第1

感想・レビュー・書評

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  • 1965年刊。著者は立命館大学教授。

     小説・映画で語り尽くされてきた高杉の古典的評伝。

     本書で、高杉が魅力的と感じる人がいるのかなと思うほど、実に毀誉褒貶が激しく、行動の主体性を感じない人物である。

     すなわち、尊皇派、攘夷派、開国派、交易派、富国強兵派、その何れでもなく、またその何れともいえそうな存在感である(ただし、佐幕、公武合体派ではなさげ)。
     その理由が、藩内上層の出自、松下村塾門下生、父祖の意見を尊重する忠孝の心性を持つ人物ということに加え、意外なほど他藩や幕府の人間との邂逅が多くなく、つまり、酒色と女色には溺れたようだが、社交的ではなかったという社会性。そして、上海遊学経験等といった高杉自身の持つ多面性にあると、解読が出来よう。

     もっとも、功罪・善悪・毀誉褒貶がないまぜとなった高杉の実相が、リアルに示されているといえるかもしれない。

     なお、第一次長州征伐における西郷吉之助の目的が、武力によらない長州の潰滅にあった点、第一次長州征伐後、幕府恭順に傾く俗論派を藩主流から叩き出し得たのは、高杉ら奇兵隊による戦勝にあった点は個人的には注意すべき事項か。

  • 高杉晋作

  • (2015.09.16読了)(2015.09.04借入)
    【杉文とその周辺】
    NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の関連で読みました。高杉晋作に関しては、「世に棲む日日」司馬遼太郎著、と「高杉晋作と奇兵隊」田中彰著、を既に読みましたが三冊の本の中では、この本が高杉晋作の生涯を一番よくとらえているように思います。
    ほかの本では、晋作は、上海で何を見てきたのか、奇兵隊はどうしてできたのか、野山獄に入れられたのはなぜなのか、下関挙兵の始まりの様子、等、納得のゆく説明を初めて読むことができたように思います。それにしても、動いては休み、動いては休み、みたいな人生で、遊ぶときも派手に遊びますね。天才なんでしょうね。
    それにしても、長州藩というのは、不思議な藩ですね。薩摩藩の場合は、小松帯刀、西郷隆盛、大久保利通、等、固定したメンバーが藩を引っ張って行った感じがありますが、長州藩にはそれがありません。いろんな人たちがあらわれて、消えて行きました。
    吉田松陰、久坂玄瑞、高杉晋作、もそんな中の一人です。
    桂小五郎もよくわからない人物の一人なので、現在「醒めた炎」を途中まで読んでいるところです。

    【目次】
    まえがき
    萩という街にて―高杉晋作を生んだ城下町
    少年晋作―剣道から文学へ
    その時代―ペリー来航と通商条約
    松下村塾―松陰門下の軽格武士と机を並ぶ
    風雲のなかで―日米通商条約調印さる
    江戸遊学―尊攘行動派たち
    煩悶―吉田松陰、獄に下る
    松陰の死―安政の大獄前後
    一つの生き方―海軍修業から東北旅行
    藩論をめぐって―航海遠略策と和宮降嫁問題
    玄界灘を渡る―西国志士団、京坂間に集まる
    上海にて―『遊清日録』より
    狂挙―御殿山イギリス公使館焼打ち
    髷を断つ心―将軍上洛・攘夷親征
    帰郷―奇兵隊創立前後
    進発か割拠か―蛤御門の変
    獄より出でて―四国連合艦隊の下関砲撃
    決起―長州藩の服罪と下関挙兵
    非常の人―第二次長州征伐
    その最期
    高杉晋作関連略年表

    ●学問(31頁)
    松陰は、自分の学問を国家の運命と結びつけて考え、自分の生き方と関係させて学問を進めていった。
    ●毛利を動かす(55頁)
    晋作は備後国三谿郡の高杉城主を祖先にもち戦国時代から毛利氏と運命をともにしてきた世禄の臣であった
    彼の心底には、大藩毛利を動かして堂々たる布陣のもとにことを決する時期が待たれていたのだ。
    ●間部下総守(58頁)
    間部下総守が京都の公家方を恐怖のどん底にたたきこんでいるころ、松陰のところにはさまざまな情報が入ってきた。なかでももっとも彼の心を動かしたのは、薩摩藩が立ちあがって、越前藩と連盟し、大老井伊直弼を打取り、京都で兵をあげて、幕政の根本的な改革のきっかけをつくるというニュースである。
    この計画は、薩摩藩の有馬新七らが越前藩の橋本佐内、由利公正らに謀って遂行せんとしたもので、その議には土佐藩の橋詰明平、長州藩の山県半蔵も加わっていた。
    ●大義を実行(71頁)
    松陰は、「死に場所」を求めて飛び出そうとする晋作に対して、死は求めて赴く場所ではなく、結果として到達するところだと教えている。死ぬることが大切なのではなくて、大義を実行するということが先立たなければならない、それは死にいたることもあろうし、また死を避けられる場合だってありうる、というのだった。
    ●松島剛蔵(77頁)
    晋作は軍艦教授所に通い、蘭学者の松島剛蔵の指導を受けて、航海術を学んだ。
    松島は藩の重臣たちを批判して職を奪われたが、長崎で蘭人について航海術を学ぶこと三年、いま、その新知識をたずさえて洋学所の長となっている。力のある者、才能のある者が、その身分の如何にかかわらず、しだいに頭角をあらわしうる時代であり、長州藩はことにそういうところだった。
    ●東北遊歴(82頁)
    八月、水戸に向けて出発した。この旅行中にどうしても会わなければならない人物は、笠間の加藤有隣、信州松代の佐久間象山、それに越前福井に招かれて滞在している横井小楠である。彼は、いろいろと伝手を求めて、それらの人々にあった。
    ●杉梅太郎(159頁)
    晋作が獄中で杉梅太郎に宛てた手紙に、こういうことが記されている。
    まことに以て知己多きと思いの外、君一人して我を問うのみ、落涙の至りに候。

    ☆関連図書(既読)
    「吉田松陰」奈良本辰也著、岩波新書、1951.01.20
    「花燃ゆ(一)」大島里美・宮村優子作・五十嵐佳子著、NHK出版、2014.11.25
    「花燃ゆ(二)」大島里美・宮村優子・金子ありさ作・五十嵐佳子著、NHK出版、2015.03.30
    「花燃ゆ(三)」大島里美・宮村優子・金子ありさ作・五十嵐佳子著、NHK出版、2015.07.30
    「久坂玄瑞の妻」田郷虎雄著、河出文庫、2014.11.20
    「世に棲む日日(1)」司馬遼太郎著、文春文庫、2003.03.10
    「世に棲む日日(2)」司馬遼太郎著、文春文庫、2003.03.10
    「世に棲む日日(3)」司馬遼太郎著、文春文庫、2003.04.10
    「世に棲む日日(4)」司馬遼太郎著、文春文庫、2003.04.10
    「高杉晋作と奇兵隊」田中彰著、岩波新書、1985.10.21
    「醒めた炎(一)」村松剛著、中公文庫、1990.08.10
    「醒めた炎(二)」村松剛著、中公文庫、1990.09.10
    「坂本龍馬」池田敬正著、中公新書、1965.06.25
    「西郷隆盛 上」井上清著、中公新書、1970.07.25
    「西郷隆盛 下」井上清著、中公新書、1970.08.25
    (2015年9月17日・記)

  • 彼の命はわずか28年だったのですね。
    その中で数多くのことを成し遂げ
    明らかに不利であろう交渉を
    賠償金が絡まぬように交渉したり…

    確かに酒色はえらいことになっていますが
    その分、物事を成し遂げるエネルギーは
    すごいものがあるのですよね。
    たとえ、投獄されても、書を読むそのエネルギー。
    腐らないんですよね。

    ただ、彼はやはり
    急ぎすぎてしまったのでしょうね。
    あまり慣れない内容でしたが
    面白い本でした。

  • 私の初購入高杉本。高杉大好きっ子(笑)の奈良本先生の著書ですが、出版年とこのお値段なら納得する内容。未だに色あせない内容で、普通に高杉入門書として買っても損はないです。

  •  奈良本辰也『高杉晋作』(中公新書 60)

     高杉晋作についての本は以前一坂さんの本を読みましたが、それよりも個人的には好きかもしれないです。
     奈良本さんも一坂さんも高杉への思い入れは強い感じが読んでいてしたのですが、こちらの方が突き放した感じがして好感が持てました。
     親との関係と悩んで、悩んだ結果酒色に溺れるというのが高杉が人間らしいなあと思う一面でしたね。
     しかし、酒も女も知っている方が男としてかっこいい的な事が書いてあって、それはなんとなく納得しました。
     その方が両性から好かれそうですよね、頼りがいがありそうで。
     とはいえこれは著者の個人的感覚でしょうが^^;
     高杉についての本はけっこう出ていますが、入門書としては凄くオススメしたいと思う本です。

     個人的に、最後の方に出てきた著者の英雄像に噴いてしまいました。
     あながち間違いではないけれど…(笑)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 入門書として最適だと思います。

  • 戦後はじめて発行された高杉の伝記的本。作者の奈良本先生は戦後の長州研究の大御所です。この人と海原徹先生・田中彰先生が結構たくさん論文書いてます。

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著者プロフィール

1913~2001。山口県生まれ。京都帝国大学文学部国史学科卒業。元立命館大学教授。専門は日本近世思想史、幕末維新史。著書に『近代陶磁器業の成立』『日本近世史研究』『近世封建社会史論』『維新史の課題』『吉田松陰』『日本経済史』『二宮尊徳』『部落問題入門』『高杉晋作』『明治維新論』『変革者の思想』『武士道の系譜』『町人の実力』『幕末入門』『叛骨の士道』『維新的人間像』『「狂」を生きる』『日本地酒紀行』、共編著に『未解放部落の社会構造』『未解放部落の歴史と社会』『近世日本思想史研究』『明治維新人物事典 幕末篇』『日本の私塾』『幕末志士の手紙』『素顔の京都』『適塾と松下村塾』『京都百話』、訳・校注書に『統道真伝』『武士道』『葉隠』などがある。

「2013年 『吉田松陰著作選 留魂録・幽囚録・回顧録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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