- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121001085
感想・レビュー・書評
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現代の世界において、平和を成し遂げることを楽観視できないことを説明してくれていた。
しかし、楽観視できなくても、チャレンジし続けることの強さ・希望で最後は締めくくられている。
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すごい本。40年前なのにイデオロギーに毒されず現実的な認識を、しかも現代から見ても過大にも過小にも見誤っておらず、概ね通用する議論。あと、この頃の本によくある読みにくさもない。こういうのが名著と呼ぶに値するのだなあ。
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読まなかったのが惜しまれるぐらい、多くの気づきを得た。自分は理想家で、それでいて何も知らずに粋がっていたんだな。国際政治の本質を言い当てた「恐怖と希望」という副題にも唸らされる。
・闘争というのは人間を酔わせる。闘争の後で人間は問題が解決されたと思える。それに闘争は事実、少しは問題を解決する。
・軍備撤廃、国連による統治。どちらも国家が単純な力の単位であり、国際政治はその力の単位が並立する場所ならば正し。しかし、実際は国家は単なる力の単位ではなく、利益の体系であり、価値の体系でもある。
・ライプニッツは国際法廷を説いたサン・ピエールとは違って、条約・公文集を編纂した。勢力均衡の原則。しかし、力の計測が難しい。
・カントとベンサム:常備軍の廃止。しかし、公正な軍備縮小、廃止は困難。例えば進捗の管理。
・外交上の良策は、どの国とも平和友好関係を深め、やむを得ない場合になっても防衛戦略を練る。
・オプションを持った軍備規制。それが有効であるためには、対立する国の間にコミュニケーションが成立していることが必要。
・軍備が緊張をつくっているのではなくて、緊張が軍備を必要としている。
・相互依存の増大は、一国による他国の支配をもたらす。しかし、支配から協力への移行も次には起こる。支配には配慮が必要だからだ。
・こんにちは、経済協力体制の方が軍事同盟よりも重要。
・ルソー:自愛心と自尊心。他国よりも勝ろうとする心象。
・南北問題は富の移転で解決できない。問題は富を産み出す能力が違いすぎること。
・国際社会における秩序は力を一カ所に集めれば得られるわけではない。
・米仏関係が悪化しても敵対的にならないのは、公式、非公式の経路が存在し、公式の悪化を非公式に扱うことが出来るから。
・アメリカ独立、フランス革命、ロシア革命。どれも最初は軍備廃止の理想があったが、周辺との関係の中で、再軍備した。
・平和国家の3条件:1.防衛軍備のみ。2.自立的な経済体制。3.国家の権力の制約(言論の自由。専制の排除。ある理念への狂信の排除)
・正義の対立をいったん棚上げして、兼六闘争の対処を優先する。医術で言う対症療法。 -
古典的テキスト。安心して読める。
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・国際政治学の極めて穏当な入門書。およそ半世紀も前に書かれたにもかかわらず、驚くべき現代性を持っているのは、哲学的考察に裏打ちされた冷厳なリアリズムの認識が根底にあるためであろう。
・著者は読者に対して、物事を単純化することのないよう何度も呼び掛ける。なぜなら国際政治というものはそもそもが非常に複雑なものだからだ。「各国家は力の体系であり、利益の体系であり、そして価値の体系である。したがって、国家間の関係はこの三つのレベルの関係がからみあった複雑な関係である」(p.19)。著者はこの複雑にからみあった三本の糸を一本一本丁寧にほどいていく。その手捌きは実に見事。にもかかわらず、糸は決して綺麗にほどけることはない。
・合理的な人間像を前提とする経済学が必然的に合成の誤謬を生み出してしまうように、合理的な国家像を前提とする国際政治もまた似たようなジレンマに頭を悩ます。他国の脅威に対抗するという「合理的な」政策は果てしない軍拡競争を招いてしまうし、また世界平和を実現するための国際機関を樹立しようとする「合理的な」試みは忽ち異なる価値観を持つ国家同士の主導権争いを誘発してしまう。こうしたジレンマに対する決定的な打開策はない。
・このように本書は全体的にペシミスティックな色彩が強い。しかしその一方で、「できることをしながら、すぐにはできないことが、いつかはできるようになる」(p.203)という希望を持つことが大事だとも言う。この一句は現代における勇気のあり方を示しているように思えてならない。 -
国際政治学の名著。国際政治の限界と現実を直視しつつも、希望を捨てない著者の態度に感服。
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分かり易くて面白い。
国際政治において、各国政治や国連がどういう力学で持って意思決定をしているのか。そういうことの歴史や現状が整理されていて、とても勉強になります。 -
博多駅前ブックオフで購入する。あかつきの車中で読む。興味深い新書でした。著者は、「文明が衰亡するとき 」等の著書で著名な国際政治学者です。非常に読みやすい文章です。著者が、優れた大学教師だったことがわかります。興味を持ったのは、20世紀のヨーロッパの混乱の理由です。それは、ドイツの台頭に由来します。今世紀に入るまで、小国に分立して、ドイツは貧しい国でした。その理由を整理すると、以下のようになります。第1の理由は、明確な国境線がなく、諸外国の介入を受けやすいことである。第2の理由は、小国分立状態にあるので、市場が狭いため、工業が発展せず、貧しかった。しかし、鉄道の普及は、この状況を大きく変化させた。第1の変化は、鉄道の普及により、軍隊の移動が容易になり、他国の介入を防ぐことが容易になった。第2の変化は、鉄道の普及により、ドイツという巨大な市場が生まれたことである。ドイツの発展が、ヨーロッパのパワーバランスを崩壊させた。これが、20世紀のヨーロッパの混乱の原因だと指摘している。面白いですが、本当でしょうか。このように思わせるのが、いい教師ということです。高坂先生の本を読んでみましょう。
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国家は「力・利益・価値」の3つの体系を有しているという言葉が、心打たれました。
初版が1966年と冷戦中にも関わらず、現在でも色褪せないほど、国際政治の核心を突いた言質が多いです。 論理的でリアリズムに基づく分析が多いので、国際政治に関心がある人なら初学者でも読みやすいです。