- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121001900
感想・レビュー・書評
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『明治6年の政変』で、西郷の征韓論に異説を唱えた毛利敏彦さんは、本書で大久保利通に取り組む。この時期の人物で毛利さんにとって最も魅力あるのはどうも江藤新平らしく、大久保という人間は今一魅力を感じなかったようだが、調べていくうちにその魅力がわかってきたという。ぼくも、大久保は冷徹なイメージしかないが、本書を読むと、かれは信念にもとづき、行動しているのがわかる。信念があるだけに岩倉とか三条とかのふらふらしている、日和見貴族は、大久保の前に圧倒されている。ただ、大久保がなかなか勝てなかった人物がいる。それは徳川慶喜である。慶喜はなかなかしたたかな人物で、最後まで生き延びるのだが、かれは大久保のいくつもの計画を妨害した。大久保はまた合理主義者で、天皇の詔勅であれ、不合理なものは認めないという立場をとった。これもたいしたものである。それにしても、幕府倒壊から、廃藩置県、版籍奉還、徴兵令といった一連の改革はめまぐるしく、多くの反対勢力があるなかで、これを成し遂げた大久保や政府の人たちには敬服する。明治4年に大久保等政府の要人たちはアメリカ・ヨーロッパ視察に出かける。これもあの政局の不安定な時代によく行ったものだと思う。しかも、その中に大久保がいた。大久保の頭にあるのは殖産興業で、近代日本を打ち立てるためにはヨーロッパ、とりわけプロシアを見ておく必要があったのである。
本書でもう一つ印象に残っているのは、生麦事件を契機にイギリスと薩摩は戦争することになるが、薩摩は全面的に降伏したわけではなく、かなり互角に戦ったことである。しかも、その中から開国論者が生まれ、イギリス留学に出ていくものが多くいたということも興味深い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「大久保利通」毛利敏彦著、中公新書、1969.05.25
198p ¥693 C1223 (2018.11.03読了)(2018.10.27購入)(1998.03.15/24刷)
シリーズ「維新前夜の群像5」
【目次】
まえがき
Ⅰ 政治家への道
1 生い立ち
2 島津斉彬
3 久光との出会い
Ⅱ 全国政局への登場
1 公武合体への模索
2 公武合体運動
3 尊攘運動との対決
4 薩英戦争、文久政変
Ⅲ 統一国家をめざして
1 久光から西郷へ
2 長州征伐
3 幕薩の暗闘
4 薩長同盟
5 倒幕
Ⅳ 明治国家の形成
1 維新政府
2 東京遷都
3 版籍奉還
4 廃藩置県
Ⅴ 大久保独裁へ
1 欧米巡遊
2 明治六年政変
3 内務卿
参考文献
大久保利通関連年表
☆関連図書(既読)
「西郷どん(上)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
「西郷どん(中)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
「西郷どん(下)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
「話し言葉で読める「西郷南洲遺訓」」長尾剛著、PHP文庫、2005.12.19
「西郷隆盛『南洲翁遺訓』」先崎彰容著、NHK出版、2018.01.01
「西郷家の女たち」阿井景子著、文春文庫、1989.08.10
「西郷と大久保」海音寺潮五郎著、新潮文庫、1973.06.30
「寺田屋騒動」海音寺潮五郎著、文春文庫、2007.12.10
「江戸開城」海音寺潮五郎著、新潮文庫、1987.11.25
「坂本龍馬」池田敬正著、中公新書、1965.06.25
「木戸孝允―維新前夜の群像4」大江志乃夫著、中公新書、1968.09.25
「岩倉具視 維新前夜の群像7」大久保利謙著、中公新書、1973.09.25
「島津斉彬」加藤惠著、PHP文庫、1998.10.15
「横井小楠」徳永洋著、新潮新書、2005.01.20
「龍馬を超えた男小松帯刀」原口泉著、グラフ社、2008.04.03
「最後の将軍 徳川慶喜」司馬遼太郎著、文芸春秋、1967.03.25
「明治天皇を語る」ドナルド・キーン著、新潮新書、2003.04.10
(表紙カバーより)
西郷隆盛、木戸孝允とならぶ「維新の三傑」大久保の特色は、革命成就後も新政府の中心にあって明治国家の確立に一貫した主役を演じたことである。西郷の「建築の才」に比し「造作の才」を、木戸の理想主義に対し現実主義を謳われる所以である。目標に執拗に、しかし柔軟に立ち向かい、事に処するには不退転の決意をもって果断に行う。スローガンよりも組織の確立、人材の登用といった実務を重視した政治家の肖像を描く。 -
大久保利通がどんな人物かが分かる一冊。大久保さん好きすぎて、この本で高3の時に読書感想文書きました。ただ、大久保さんの胃が弱い記述に萌えすぎて他の内容があまり頭に入ってなかったり…。とにかく大久保さん素敵です。
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大久保利通という題の書を読んで思うことは、大久保の足跡がまさに維新期の薩摩藩の事績そのものだということだ。薩摩藩を代表する動きの中でも、とりわけ王政復古の号令を発する際に意外にも複雑な経緯を辿ったことは興味深かった。行動が現実主義的で手堅いイメージを大久保に持っていたが、この点については薄氷を踏む思いで強硬路線を貫いたことだろう。
また大久保その人とは直接関係ないが、読んでいて思いがけなかったこととして薩摩藩が幕末期に一貫して開国を許容していたことがあげられる。生麦事件と薩英戦争はあくまで偶発的なことであり、長州の四国艦隊砲撃事件のような攘夷を前提とした出来事ではなかったとは知らなかった。その二つの事件を教科書ではあまりに同列に扱いすぎているのだな…と。
しかし言われてみれば納得で、薩摩としては長らく琉球という外国と誼があったのだし、貿易が公に拡大できるようになればさらなる利益をあげられる心づもりがあったのだろう。17世紀に幕府がとった海禁政策の理由を考えれば簡単に理解できることだ。このような薩摩の置かれた特殊な環境が大久保をして維新の傑物を誕生させたと思う。 -
1969年初版、大久保利通についての伝記のクラシックな一冊。どちらかというと、実はあまり語られることが少ない薩摩藩士として活躍した幕末の大久保について詳細に記されている。著者は他にも中公新書から明治維新関連の本を出しているので、それらも併せて読んでもらうとより理解が深まるかも。
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徹底した実務家、「無気無力ノ人民ヲ誘導スル」の言葉にスタンスが現れている
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家庭での大久保利通など、知らない一面があった。
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静岡本館開架5F新書 289.1/O54M/S