東京裁判 上 (中公新書 244)

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  • 中央公論新社
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  • / ISBN・EAN: 9784121002440

感想・レビュー・書評

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  • 日本の過去15年を裁く世紀の大裁判、極東国際軍事裁判。またの名を東京裁判。
    戦勝国が敗戦国を裁く。開廷以来2年半余り、370回に及ぶ公判。

    戦史については読み聞きはしてきたものの、東京裁判そのものについて取り上げられたものを読むのは初めてだったが、その実情は何とも形容しがたい。時代というか...
    毎年、首相の靖国参拝がメディアに取り沙汰されるが、この裁判が素地にあると思うと。

    歴史上前例のない戦争犯罪人を裁く裁判だったとは言え、あまりにもしっちゃかめっちゃかというか、検事判事の愛国心ダダ漏れ主張とか、言語問題で通訳翻訳が驚くほど適当で。

    戦争は国家行為であり、個人行為ではない。が、指導者達は裁かれていったわけだ。

    下巻へ。

  • 極東国際軍事裁判、いわゆる「東京裁判」に関しては KiKi 自身若い頃から「あの裁判は何だったのか?」という興味を持っていました。  そして大学生の頃にこの本を一度読んだことがあったのですが、今回久々に図書館で見つけたのを機に再読してみました。

    正直なところ今回の読書では、学生時代にこの本を読んだ際に感じた大きなショックは感じられず(と言うのも当時の KiKi は東京裁判の実態をほとんど知らなかったのに対し、今回はどちらかと言えば「既知のこと」の再確認という感じだったので)、ところどころでその後入手して何回か観たことがあるこの記録映画(↓)のシーンを思い出すのみ・・・・・という感じでした。

    東京裁判
    ASIN: B00005F5X3  監督・脚本:小林正樹  原案: 稲垣俊  脚本:小笠原清  音楽: 武満徹  ナレーション: 佐藤慶  講談社


    ある意味で日本人の劣等史観のベースにさえなり、「戦争犯罪」という実態がよくわからないものを裁くという摩訶不思議な裁判。  戦争裁判と言いつつも結果的に政治裁判だった裁判。  これを知らずに現代日本を語ることはできないと言っても過言ではない裁判。  そんな裁判がどんなものだったのかを俯瞰するにはよい書籍だと感じます。 

    それにしてもアメリカという国は面白い国だとつくづく感じます。  世界の超大国で先進国をリードする国であるというイメージだけは強いけれど、大統領選挙(特に予備選あたり)なんかは選挙というよりはお祭り騒ぎみたいなところがあるし、要するに劇場型というか、プレゼンテーション型というか、「人にいかにアピールするか」というマーケティングに近い様な行動には実に熱心です。

    東京裁判にしてみても、一応「裁判」という形をとり、日本人の被告にアメリカ人の弁護人がついたりもして、しかもこのアメリカ人弁護人がおざなりな弁護をするのか?と言えば、日本人弁護団がもっと声高に主張してもよさそうなことまで頑張って主張したりもする。  一見、フェアに見えなくもないお膳立てはちゃんとするけれど、裁判そのものはある意味で「結論ありき」だし、多民族国家特有の「落としどころ」的な感覚は実に鋭い。

    その後の国際紛争への関与の仕方などを見ていると、東京裁判では「有罪」と断罪されたようなことをあの裁判で裁く側だった国が平然と行っているのを見るにつけ、「戦争に敗れるということは、こういうことなんだな」と思わざるをえません。

    実に良書だと思うけれど、残念なことを1つだけ挙げるとするならば、この本の中では占領政策と東京裁判の関連性に関する記述が極めて少ないことだと感じます。  天皇の責任問題という極めてデリケートなトピック絡みで若干は触れているものの、どこか足並みの揃わない検事側の背景やら、そもそもの極東国際軍事裁判開催決定時、その後の裁判中、そしてサンフランシスコ平和条約 & 日米安保条約に至る中でもっとも大きな流れを左右していたのは占領政策にこそあるわけで、そこはもっと触れて欲しかったなと感じました。

    最後に・・・・・・

    年寄りの冷や水的な意見を1つ。  今では日本屈指の歓楽街の1つとも言える池袋はサンシャイン付近。  かつては池袋に住んでいた KiKi なのであの辺りはよく行ったんだけど、あそこらへん一帯でキャアキャア騒ぎ、遊び呆けている若い人たちを見る度に KiKi は思ったものでした。

    「知ってる??  この辺はかつては巣鴨プリズンがあったんだよ??  巣鴨プリズンって知ってる??  あ、じゃあA級戦犯って知ってる??  東京裁判は??  ここは東京裁判の時、A級戦犯とされた人たちが収容されていて、結審後は処刑が行われた場所なんだよ。」

    ってね。  もちろんだからと言って避けて通れとか、ここでは合掌しろとかそんなことが言いたいわけではありません。  せっかくできたサンシャイン60ですから、そこを平和的に使用し、多くの人が楽しい思い出を作る場所になるのはそれはそれでいいことだと思います。  でもね、何となく、何となくではあるものの、単なる遊び場という意識のみならず、その土地にまつわる日本の歴史を知って欲しいなぁと思わずにはいられないのです。

  • 基礎知識獲得のために読了。分かりやすく座右の書となった。

  • 東京裁判を扱った本は数あるものの、本書は裁判外の周辺事情まで扱っているところに特色がある。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

  • 日本人気質には辛い裁判。報復裁判であることは当たり前だが、被告の日本人気質を巧みに利用された裁判。南京大虐殺1つとっても、日本人は局所で起こった罪の意識により全体を語らない文間を理解させる文化では、欧米文化には太刀打ちできない。彼らには、侘びもサビもない。しかし、実際には、史記ほどのことは絶対にない。史実は闇に葬られようとしている。しかし、判事及び検事は本当に日本人気質を理解していただろうか。猿の惑星を映画で作るくらいだろうから、当初は理解しておらず、この東京裁判をもって、只々その恐ろしさに気がついたのでは。。特攻は、今を見てではなく、将来を見据えて行った戦術だということは、欧米人は逆さになっても理解できないだろう。勝てば官軍、負ければ賊軍。その境目をこの緊急時に一線引ける日本人に改めて感銘をうけた。

  • 東京裁判を年月を追って記載。予備知識がない自分にとっては、わかりやすかった。結構主観的と思われる部分が多いので、客観的な視点を持つには他の書籍にもあたる必要があるだろう。

  • 東京裁判の実相に迫ろうとするドキュメント。1971年刊行だが、古さを全く感じさせず、裁判の事実経過を知ろうとする端緒として有益な本である。個人的な感想からいえば、本論とは少し離れるが、軍人(特に、陸軍上層部)の傲岸不遜ぶり、嫌味な尊大ぶりに閉口するところであろうか。また、フランス人検事がルールを無視してフランス語を使おうとする件も、場面にそぐわない偏屈さを感じる。他方、法廷論争の中では、管轄権問題・裁判官忌避問題をもう少し論じられれば興味深いところなのだが、東京裁判の性格上無理な話なのだろう。
    本書に出てきた「木戸幸一日記」「敗因を衝く」は読んでみたい。なお、大川周明が、梅毒に罹患していたことをもって、事実上裁判を受けず、免責された事実は、当時の彼らの下半身事情を垣間見させ、なんともはや、というほかはない。

  • (2013.09.05読了)(2008.01.25購入)
    【9月のテーマ(東京裁判を読む)・その①】
    マッカーサーの来日から戦争裁判のための逮捕予定者リストの作成、戦争犯罪者の逮捕、東京裁判の準備、開廷、そして、裁判の様子へ。
    東京裁判の準備から実施への様子が、非常にわかりやすくまとめてあります。
    東条英機の自殺未遂、近衛文麿の自殺、広田弘毅夫人の自殺、皇帝溥儀の保身のための偽証、等、沢山のエピソードも書いてあります。
    東京裁判は、裁判とはいいながら、前代未聞のものでした。裁判というのは、通常、法律が先にあって、その法律に触れた人を裁くことになっています。ところが、東京裁判は、戦争終結時に作られた法律によって裁かれたのです。
    また、国として、戦争を行ったのに、戦争を行った時の国のトップや国の方針に従って戦争を行った軍人が個人として裁くことは可能なのか、ということでもありました。
    さらに、「人道に対する罪」というのは、戦争前からあった罪で、戦う双方がやってはいけないもののはずなのですが、勝った側の罪は問題になりませんでした。
    たとえば、広島・長崎に対する原子爆弾の投下、東京空襲、等です。明らかに非戦闘員を目標にしたものです。
    また、裁判の形式をとっているけど、最初から判決は、決まっていたということを別の本で読んだような記憶があります。

    【目次】
    まえがき
    第一章 東条の自決
    第二章 戦争犯罪の定義
    第三章 起訴状の伝達
    第四章 一九四六年五月三日
    第五章 広田弘毅夫人の死
    第六章 皇帝溥儀証言台へ
    第七章 ウェッブとキーナンの対立

    ●敗北後の日本(9頁)
    「日本における天皇神聖という概念は、軍部によって軍自体の目的のために作りあげられた神話である。この神話を維持するのは、軍の不敗という伝説である。日本陸海軍が全勝をつづけることができてのみ、天皇は神でいられる。したがって、日本の軍事力の完全な崩壊は、天皇神聖の概念の崩壊となりうる。その結果、精神的真空状態と新しい概念の導入の機会が生まれるだろう。」
    ●終戦(14頁)
    九月二日には、東京湾に停泊した戦艦「ミズーリ」で降伏調印式が行われた。
    ●ポツダム宣言(17頁)
    日本政府は、ポツダム宣言の規定を履行することを約束して降伏した。マッカーサー元帥は、そのポツダム宣言を日本政府に実行させるために、やってきた。そして、ポツダム宣言は、日本に、軍隊の解体、民主主義社会体制の確立、言論、宗教、思想の自由と人権の尊重、軍需産業の禁止、平和的かつ責任ある政府の樹立などを要求している。
    ●東条英機の遺書(29頁)
    英米諸国人に告ぐ
    今や諸君は勝者たり、我邦は敗者たり。然れども諸君の勝利は力の勝利にして、正理公道の勝利にあらず。我等は只だ微力のために正理公道を蹂躙せらるるに到りたるを痛嘆するのみ。
    ●米国民への呼びかけ・1945年9月16日(34頁)
    「米国民よ、どうか真珠湾を忘れてくださらないか。われわれ日本人も、原子爆弾による惨害を忘れよう。そして、全く新しい、平和国家として出発しよう。米国は勝ち、日本は負けた。戦争は終わった。互いににくしみを去ろう」(東久邇宮首相)
    ●三つの戦争犯罪(48頁)
    「平和に対する罪」「戦争犯罪」「人道に対する罪」
    「国際軍事裁判所条例」1945年8月8日・米英仏ソ四カ国によって調印
    ●広田元首相(86頁)
    広田内閣時代に最高国策である国防方針が改定され、国策基準要綱が策定され、日独防共協定も成立している。もし、支那事変前後から太平洋戦争まで、最も重要な文官の政策決定者を求めるならば、その筆頭は三次にわたって首相をつとめた近衛公爵であろうが、近衛公爵が死んだとなれば、つぎにねらいをつけられるのは、広田元首相ではないのか。
    ●木戸日記提出(90頁)
    陛下にはできるだけご迷惑はかけてはならないが、だからといって、陛下がいつもご承知ない立場におられたというのは、国家の組織を考えれば、通ることじゃない。むしろ、逆に、ほんとの陛下のお気持ちはこうだった、こういうお気持ちで対処しておられたということを示すほうが、陛下と天皇制というものを理解させる助けになるのではないか。
    ●起訴状(116頁)
    1928年1月1日から1945年9月2日、すなわち満州事変から降伏文書調印の日まで、17年8カ月にわたって、いかに日本が国際的非道の限りをつくしたか、を述べている。
    ●不当裁判(169頁)
    日本はポツダム宣言を受諾して降伏した以上、ポツダム宣言に定められた条件に従うが、それ以上のものに服する義務はない。したがって、戦争犯罪も、ポツダム宣言第十条に明言してある「我等の俘虜を虐待した者をふくむ戦争犯罪人」すなわち、宣言を発表した当時に知られている戦争犯罪である戦争法規違反者だけが、対象になるべきである。
    ●勝者と敗者(174頁)
    「戦勝国の殺人は合法的だが、敗戦国の殺人は非合法だ」というにひとしい
    「もし真珠湾空襲による被害が殺人行為であるならば、われわれはヒロシマ上空に原爆を投下した人物、この投下を計画した人物の名前を知っている。彼らも殺人者ではないか?」
    ●満州国とは(225頁)
    「満州国なるものは全然自由がなく、全く日本の支配下におかれていた。国民、官吏、ならびに私もまったく自由を失っていた。すべてのものが日本に対して反抗心をいだいていたが、日本の非常に厳格な圧迫、圧制のもとでは何もすることができませんでした」(皇帝溥儀)
    ●通訳(258頁)
    BC級裁判では、捕虜にゴボウを食わした、という証言を、「木の根」を食わしたと通約されて、虐待の証拠と見なされたり、あるいはなまじ英語で「ライス」(米)といったのを、発音が悪いために「ライス」(LICEシラミ)を食べさせたと解釈され、残虐行為の自白と見なされた例が、ある。

    ☆東京裁判(既読)
    「秘録 東京裁判」清瀬一郎著、読売新聞社、1967..
    「黄色い部屋」吉浦亀雄著、カッパブックス、1957.07.15
    「パール判事の日本無罪論」田中正明著、小学館文庫、2001.11.01
    「日本無罪論 真理の裁き」パール著・田中正明訳、太平洋出版社、1952.05.03
    「落日燃ゆ」城山三郎著、新潮文庫、1986.11.25
    「BC級戦犯裁判」林博史著、岩波新書、2005.06.21
    「神を信ぜず―BC級戦犯の墓碑銘」岩川隆著、中公文庫、1978.10.10
    「海と毒薬」遠藤周作著、角川文庫、1960.07.30
    「遠い日の戦争」吉村昭著、新潮文庫、1984.07.25
    「ながい旅」大岡昇平著、新潮文庫、1986.07.25
    「生体解剖」上坂冬子著、中公文庫、1982.08.10
    「巣鴨プリズン13号鉄扉」上坂冬子著、新潮文庫、1984.07.25
    「遺された妻―BC級戦犯秘録」上坂冬子著、中公文庫、1985.08.10
    「貝になった男」上坂冬子著、文春文庫、1989.08.10
    「花岡事件 異境の虹」池川包男著、現代教養文庫、1995.09.30
    「イラスト・クワイ河捕虜収容所」レオ・ローリングズ著、現代教養文庫、1984.06.30
    「<戦争責任>とは何か」木佐芳男著、中公新書、2001.07.25
    (2013年9月15日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    昭和二十一年五月三日、二年半余、三百七十回に及ぶ極東国際軍事裁判は開廷した。歴史上前例のない戦争犯罪人を裁く裁判は、戦争に敗れた日本人に何を問うたか―裁判の傍聴が戦史家としての出発点となった著者が、厖大な資料と、関係諸国・関係者への取材で、全容を解明する。

  • 東京裁判って本当に何なのだろうか?

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