アドルフ・ヒトラー―「独裁者」出現の歴史的背景 (中公新書 (478))

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著者 : 村瀬興雄
  • 中央公論社 (1977年8月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121004789

アドルフ・ヒトラー―「独裁者」出現の歴史的背景 (中公新書 (478))の感想・レビュー・書評

  • このように歴史を冷静に分析する目は必要。この本の命題は 「ヒトラーはドイツの例外的現象ではない」つまり ヒトラーとナチスは ドイツの歴史と社会が産み育てた ということ

    第二次世界大戦は ヒトラー個人の戦争だと思っていたが、第一次世界大戦に敗戦したドイツ民族の戦争であったことを認識した

    1924年 ヒトラーのミュンヘン時代に ヒトラーの世界観「反ユダヤ主義+反マルクス主義+ドイツ民族至上主義」が形成。戦争中なので、民族主義は 当然とも思った

  • あんまおもろなかったなぁ。

  • アドルフ・ヒトラーが出現した背景と経緯がよく分かる本である。まず、ヒトラーの先人であるキリスト教社会主義のルエガー(ウィーン市長でインフラを整備)、ドイツ民族主義シェーネーラーについて言及しており、ヒトラー以前に反大資本から反ユダヤ主義にいたる流れがあったことが分かる。ヒトラーの生誕や青年時代については、ユダヤ家系説、ヒトラー家貧困説などを間違いであると、経済的データを積みあげて論じており、父アロイスや母クララも別に異常人格ではなく、ヒトラーもムラ気があるものの別に異常人格でなかったことが指摘されている。ヒトラーはオーストリア=ハンガリー帝国で育ち、美術学校に二回落ちた後、第一次世界大戦でドイツに志願兵として赴いたが、軍では大して出世はしなかった。しかし、ドイツ革命のあと、極右集団乱立のなか、ドレイクスラーに見いだされ、レーム・エッカート・マィエルなどの人々から支持されアジテーターとして頭角を現し、演説のスター性からNSDAP(ナチスの正式名称)の党内権力をにぎった。基本的にナチスは中産階級が支持し、1921年あたりから党勢が発展、22年にはハーケンクロイツで示威行動をしている。ナチス左派は1927年にはじまる農業恐慌を期に農村でも勢力を拡大した。それまでの既成農村権力は危機を救えなかったし、農業団体も静寂主義をとっていた。農民によるフォルクラント運動はテロに走り支持を失う。そうしたなか、重農主義をとったナチス左派は救世主であった。1933年、ヒンデンブルクから宰相に任命されると全権委任法、突撃隊粛正、義務兵役制、自給自足制を行い、オーストリアを「合邦」し、戦争準備に突き進んだ。基本的にナチスを狂気の産物としてみるのではなく、政治的、社会的、経済的に成立していく様子が描かれており、ホロコーストもヒトラーの狂気が生み出したものではなく、もっと根が深く広範な現象であることを論じている。ヒトラーの評伝であるが、ヒトラー政権の成立までで、ヒトラーの死はかいていない。

  • ヒトラーとドイツ

  • ○この本を一言で表すと?
     ヒトラーを特別視せず、当時のドイツの状況やナチスの実態を客観的に書いた本


    ○面白かったこと・考えたこと
    ・ヒトラー研究の主観的な議論を批判的に分析し、ヒトラーを特別視せずに歴史的背景や当時の様々な人物、ナチスが成長した背景などが書かれていてよかったです。

    ・ヒトラーの著作だけでは「実際はどうだったのか?」ということが訳注からしか読み取れず、その訳注も偏っていたので悩ましかったですが、ある程度客観的な視点の本を読むことで、当時の状況とヒトラーの考察を一歩踏み込んで理解できた気がします。

    ・「わが闘争」でヒトラーが青年時代に尊敬したシェーネラーと、シェーネラーの行動のまずさに対し行動もうまくやったことで尊敬したルエガーについて詳しく知ることができてよかったです。ルエガーがウィーン市長になるまでのプロセスと市長になってからの実績(街燈・証明の改善、市街電車の設立、水道の改善、教育事業、福祉事業)はすごいなと思いました。シェーネラーはうまくやればかなりの成功を収められそうなところを自身の好みで行動(先鋭的過ぎる政治活動、宗教批判)して破綻をきたしたというところは残念ですし、シェーネラーによいブレーンがついていたら歴史が変わっていたのかもしれないなと思いました。(第一章 ルエガーとキリスト教社会運動)(第二章 シェーネラーと全ドイツ主義運動)

    ・「わが闘争」でヒトラーが自身の過去について語り、ところどころ訳注で虚偽と判定されたことについて指摘されていた内容について、客観的な分析が加えられていて興味深かったです。ヒトラーの生まれについての話、ヒトラーの連れからみたヒトラーの印象(紳士的、理知的、落ち着いている、等)、実際の学校の成績や美術学校入試で落ちて顔向けができなくて逃避した話、浮浪者施設で暮らしていた話、兵役忌避疑惑でミュンヘンからオーストリアに連れ戻されそうになった時の必死な弁解、危険思想と思われて軍隊で出世できなかった話など、自伝的な「わが闘争」では述べられていなかったことを知ることができてよかったです。「わが闘争」で書かれていた大戦時のドイツの宣伝のまずさは本当のことだと思っていましたが、ドイツ国民に戦況が不利であることなどを悟らせないなど、むしろ宣伝に成功していたという話は参考になりました。(第三章 ヒトラーの家庭)(第四章 青年ヒトラー)(第五章 ウィーン時代の思想)(第六章 ヒトラーの生活と第一次世界大戦)

    ・何となく、ヒトラーという個人がナチスや当時のドイツを引っ張っていったような印象があり、研究者ですらそういう視点でしか見られないような人がいるらしいですが、初期ナチス党の状況やその他の党派の状況や趨勢、初期のドイツ労働者党に最初からトゥーレ協会という大きなスポンサーが存在したこと、レーム、エッカート、マイェルなどの支持者がいてこその出世だったこと、ヒトラー自身は自分を「指導者」のために道をひらく役目だと認識していて、ナチスのトップになった動機も自分の動きが制限されることが嫌だったことなどは、ヒトラー個人に焦点を当てすぎていていては見えてこないことだなと思い返しました。(第七章 初期ナチス党とヒトラー)(第八章 宣伝家ヒトラー)

    ・ヒトラーがほとんど介在せずに成功した北ドイツの事例は、ナチスが状況に応じて適切な手を打ち、方針そのものすら柔軟にしている、うまく機能している政党という印象を受けました。(第九章 北ドイツ農村におけるナチスの成功)

    ・ナチス政権においても労働者の権利がそれなりに強かったこと、打った施策に妥当なものも多かったことなどは、偏見で目が曇っていたら見ることができないことだなと思いました。(第十章 ナチスの内治外交)

  • ドイツの歴史がメイン。ヒトラーとドイツの関係

  • 4121004787 288p 1995・5・30 22版

  • 題名にだまされる。「アドルフ・ヒトラー」個人のことを書いた本ではありません。

    副題「独裁者出現の歴史的背景」そのまんまの内容。

    反ユダヤ主義、民族至上主義、反自由主義はナチズム独特なものではなく、彼の出生地、オーストリアと南部ドイツのバイエルンに横溢していたことがよくわかる。

    結局、ヒトラーじゃなくてもあーいう事態にはいずれなったのではないかと考えさせられる。

    今だって、バイエルンはドイツの政治の中でもっとも保守的・右翼的な勢力の牙城だもんね。

  • 「ワイマル共和国」が制度面から「なぜドイツに(略)」を説明しているのに対してこちらはちょっと歴史よりかと思われます。アイコンとして・機能としてどうしてヒトラーが受け入れられる素地となったのかという点に関心を持つとこちらなのか…どっちにしても中公新書の活字の書体と文字間隔はどうも苦手で「ワイマル共和国」同様なんかすいすい進まない本でした。ヒトラー自身にはあまり興味はなかったのですが、なぜ「反ユダヤ主義」が浸透したのかという点の記述が非常に参考になったように思います。

  •  ヒトラーの出現とその思想背景などバックグランドを探るものが論点のメインであり、ヒトラーそのものに直接関する事は少ないので注意を。しかし、おそらくこうした構成主義的な立場から著者がアプローチしたのは、これが初版される時代にはヒトラーに対する誤解や多くの過ちがあったことだろう。それは著者が本書の中で度々取り上げる、カリスマ性や偉大な指導者としての誇張、もしくはヒトラーを人格破綻者、精神障害者、禁断の子ども(父と母がおじと姪の関係にあり、そこで生まれた為に障害を持っていたとする説)などを排する為の試みだったのだろう。ヒトラーがオーストリア・ハンガリー帝国の出身で、その為同国の政治指導者二人の思想の影響を受けたというのはおもしろい。ただ、結局はボンボンだったんだろうね、中途半端な。だから、下からの革命家(彼の主張に則れば反革命。同じだけどね、見方を変えれば)やカリスマ的指導者としての演出が必要だったと。

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