犯罪心理学入門 (中公新書 666)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121006660

感想・レビュー・書評

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  • 日本の犯罪件数(刑法犯)は近年減少傾向にあるそうだが、概ね60万〜70万件前後と聞く。大半は軽微な窃盗犯でその比率は犯罪件数の半数以上を占めているようだ。検挙された数であるから、実際には本書の中でも触れられている、キセル乗車や遺失物を届け出ない(道端で拾った一円玉をわざわざ届け出ない)等を含めるとその数は一気に増加する。いわゆる魔が刺したなどと言うが、ちょっとした小悪魔は誰の身近にも潜んでいる。
    近年減少傾向にある犯罪件数ではあるが、重大犯罪の率は増加していると言われる(私自身が統計学的なデータは調べてないので実際どうでしょう?)。まあ確かにワイドショーやネットが採り上げるような話題性の高い事件は情報溢れの現代社会では否応なしに外から感覚を刺激してくる。
    その様な犯罪を心理的に原因について紐解いていくのが本書の全体的な内容だ。とは言え筆者は精神医学者で心理学の専門家ではないとの事。私の様な法学専攻(大して勉強もしてこなかった)の人間からするとその違いも明確には判らないが、心理学が書いて字の如く人の心や思考をベースにアプローチする学問であれば、精神医学は人の脳を医学的な見地で分析調査し解明していく、そんなところだろうか。
    そもそも犯罪を研究する学問は2種類のアプローチがあり、一つは前述した様な犯罪者の身体的精神的な特徴を分析する「犯罪生物学」と、犯罪に至るまでの社会的な状況や犯罪者本人の置かれた立場などから分析する「犯罪社会学」に分けられる。どちらか一方が原因で犯罪に至る事は稀で、背景には犯罪者本人の特性に、犯罪者が置かれた社会的な状況がきっかけとなって表面化される事が大半だ。だが事実、先天的に異常を抱えて生まれてくる人もいるので、その様な場合は傾向的には放火や殺人といった重大犯罪、中でも多人数を殺害する様なセンセーショナルな事件に至る事もある。
    本書はその様な特徴を持つ重大事件から比較的小規模な犯罪事例を多数挙げながら、精神医学的・心理学的なアプローチで原因に迫る。
    究極的には全ての犯罪事例を超多角的に漏れなく分類化出来れば、将来発生する可能性のある犯罪防止が可能になるが、個人(犯罪者)の周辺の人々含めプライバシーの問題もあるため不可能だ。本書は1982年が初版だから、それから40年以上が経過し、近年量子コンピュータの様な技術も発達し、街の至る所にある監視カメラが膨大な情報を収集する、世界中の医療機関が医療データをネットワークで繋ぐことのできる世界においては、前述した2つの犯罪学も一層進化している事は間違いない。
    いずれ生まれてすぐに、先天的な犯罪予備軍に分類されてしまう様な恐ろしい世界を想像する。その一方で社会的にそれを知らず知らずのうちに抑止する力が働く。あり得そうであり得ない世界を想像しながら読み進めるのも面白い。

  • 犯罪者がどのように産まれるのか、どのような心理状況なのかがよく分かった。
    専門家の言う事だから多分概ね合ってるんだろうけど、「子供の頃の~経験が原因でこの凶悪犯罪を起こしてるのだろう」みたいに、犯罪の原因を上から目線で断定してるのは少しイラッとした。

    病気や周りの環境のせいで犯罪を起こすってなんか残酷だね。逮捕されるのも、親ガチャ環境ガチャじゃん。

  • ? 二人の犯罪者
    ? 犯罪心理学の方法論
    ? 知能と性格
    ? 心の病
    ? 犯罪の精神分析
    ? 社会学の理論
    ? 現代社会の犯罪心理学


    犯罪を行う人間の心理的な背後を分析する犯罪心理学について。
    第6章の「社会学の理論」はなかなか面白かった。

    「なぜ我々は犯罪を犯すのか?」という問いはよくよく考えると「なぜ我々は犯罪を犯さないのか?」という問いにも繋がる。もちろんそれは倫理的な分野の話に入り込んでいくのだが、一般の人々でも普通に犯罪を犯す可能性というのはごく当たり前に存在している。
    犯罪を犯した人間が、そのような普通の人々と何が違っていたのか、ということを分析できれば犯罪の抑制に繋がる可能性もある。
    その人間の性格や、家庭環境をふくむ歴史が大きく影響することは間違いないだろう。

  • 学生時代に数度よんだ。
    心理学に興味を持つようになった端緒となる本

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  犯罪心理学で有名な福島章さんの本。犯罪心理学とはどういうものか、という本。

  • 様々なケーススタディを元に、犯罪がどのような心理状態で行われるのか、犯罪者の生い立ち等との関係を分析していく。

    私たちは普段、テレビのニュースなどで「凶悪犯、〇〇を惨殺」というような刺激的な犯罪をかいま見る時、無意識に「犯人が悪い。死刑にすべき」と短絡的に思ってしまいがちだが、実は犯罪の背景には犯罪者の生い立ちが深く関係していることもある。表面上の報道だけですべて感情論になってしまうのではなく、その背景にある犯罪者の生い立ちや性向を知ることで、冷静に事件の報道を見ることができるのではないか。

    裁判員制度時代には、冷静に事件を見る目が必要となる。感情論的に、凶悪犯罪だから死刑というような短絡的な判断ではなく、犯罪の背景に潜む事情を斟酌して事件を判断することが必要となる。

    その意味で、本書は参考となる。

    また、「犯罪者」の定義と、私たちが実際認識する場合の「犯罪者」とに齟齬があるとの指摘は「なるほどな」と思った。つまり、「犯罪を犯した人」が「犯罪者」なわけですが、実際私たちが「犯罪者」と聞いて認識しているのは「凶悪犯」のような感じであるということ。

    (2009年6月11日)

  • 想像していたものと違う本だった。
    けど読みやすいし、頭も使わなくて大丈夫。
    参考程度に読むのがおすすめ。

  • 未読

  • ネタは古いが、犯罪者の心理、どうして犯罪を起こすようになったのかといった点についてたくさんの事例をふまえて解説してある。

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