- Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121006868
感想・レビュー・書評
-
医師の筆者が看取りを行った人々の記録。
石橋湛山やエーザイの会長などあるが、その人の死との向かい合い方にまで迫っているものは少ない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最近死について考えているときに見つけた本。
上手い題名である。
著者は聖路加の内科医長を勤めた偉いお医者さん。
自他共に認める医学会の重鎮。
その彼が立ち会った死に行く患者達の記録。
もちろん彼はクリスチャンである。
ぼくが期待したのは、死に行く人々がどうやって死を自覚し、それを受け入れたのか。
医者にしか許されない、そういう生の記録である。
だが、杞憂があったことも確かである。
その杞憂とは、立場上有名人の死に数多く立ち会っている。
目次を見ても、ほとんどが有名人の死で占められている。
医者の立場で有名人に会うのは、当然のことながらその人が病を得たときであり、それまでその人を知らないはずである。
なのに、その人の功績を一医師が語るのは、オカシイのではないか?というのがぼくの杞憂の正体である。
そしてその杞憂は残念ながら当たってしまった。
有名人だから、アンタは自宅まで何度も往診したのだろう?
普通の人だったら、そんなサービスはしなかっただろう?・・・って。
そして、もうひとつの杞憂はキリスト教の宣伝である。
この先生は何冊も本を書いているようだ。
この本を書くのにも、本人は誠意をこめて書いたと思っているはずだ。
だが、死についての本質に全く切り込んでいない。
宗教人が陥り易い自己陶酔のパターンだ。
実に不満だ。
この本で登場する数ある有名人の死よりも、彼が初めて立ち会った16歳の名も知れぬ女工の死が、一番深く心に残ったのは皮肉である。