書き替えられた国書―徳川・朝鮮外交の舞台裏 (中公新書 694)

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著者 : 田代和生
  • 中央公論新社 (1983年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121006943

書き替えられた国書―徳川・朝鮮外交の舞台裏 (中公新書 694)の感想・レビュー・書評

  • 1983年刊。著者は慶應義塾大学助教授。

     対馬藩(というより対馬在住者)は日朝間の交易・仲介により生計を立てていた。田畑も少なく、鉱物資源も多くない島の実情だ。
     その基盤は日朝の平和であるにもかかわらず、織豊政権期、その基盤を破壊する文禄・慶長の役が起き、江戸期初期はその修正作業に費やされた。

     とはいえ、政権相互に横たわる面子が平和希求を阻害するため、対馬藩は、その面子を守るべく苦肉の策、いや姑息な手段を弄する。

     本書が描くのは、江戸初期の日朝修好と幕藩体制ヒエラルキーの相克の中で足掻く小藩の苦闘である。

  • 江戸時代、日朝の国境に位置する弱小対馬藩が、将軍と朝鮮国王の文書偽造をくりかえしていたという、前代未聞の国際事件を解き明かす本。歴史記録にあくまで忠実にもとづきながら、ダイナミックな外交の展開を描き出してみせており、NHK、黒田勘兵衛なんかよりこっちを大河ドラマにしたらいいのに!!って思うほどの面白さです。
    朝鮮に近く土地が貧しい対馬藩は、室山時代末期までには、朝鮮貿易の唯一の窓口として特権的な地位を占めるに至りますが、秀吉の2度にわたる朝鮮侵略で貿易が途絶え、大打撃を受けることに。やがて徳川家康の政権が樹立すると、日朝の国交回復を死活問題とする対馬は、朝鮮王の出した条件を家康が満たしたと見せかけるために、幕府の国書を偽造してしまいます。それ以後も、つじつまをあわせるために朝鮮王と将軍両方の文書偽造を幾度となく繰り返しますが、やがて藩の内紛のため偽造は幕府の知るところとなり、将軍の前で裁判が開かれることに。
    本書が素晴らしいのは、対馬藩の外交担当者、宗家と重臣の関係、対馬藩と江戸幕府および朝鮮王朝との関係、日本と朝鮮の関係、そして二国を影響下に置く中国との関係と、異なるレベルのミクロとマクロの複合的視点から、刻々と変化する諸主体のパワーダイナミズムを、見事に描き出している点です。
    偽造という、本来あってはならない手段が、実は建前と儀礼を旨とする国家間外交をうまく潤滑させる歯車として機能していたこと、それが、対馬藩を二重三重にとりまく政治構造の変動のなかで崩壊していった過程、そして、なぜ才知にたけた柳川調興が文書偽造の暴露に打って出て負けたのかという推理まで、実に説得力がある。偽造に薄々気づきながら対馬藩にまかせた朝鮮、処罰を軽く済ませて対馬藩に引き続き外交をまかせた徳川幕府の判断も重要で、これぞ外交の知恵というもの。
    中央の視点ではなく、国境の島に視点を置くからこそ見えてくる国際関係や外交のあり方は、現代の政治家や外交官にも教科書として読ませたいものです。いやほんと、ドラマにしないかねえ、NHK。

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