地政学入門―外交戦略の政治学 (中公新書 (721))

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著者 : 曽村保信
  • 中央公論社 (1984年3月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121007216

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地政学入門―外交戦略の政治学 (中公新書 (721))の感想・レビュー・書評

  • 地政学入門、というより、地政学史入門、と表現したほうがしっくりくるような気がする。著者の、地政学に対する愛着と思い入れを感じる。

    著者は、地政学とは、との問いに、こう答えている。
    (厳密には、「B」に、こう答え「させて」いる。)
    「サア、それは答えるのに非常に難しい質問ですね。まず、ひとくちにいって政治学の一種であることは確かです。それもかなり手の込んだ現実的な政治学の形態と言えるでしょう。ふつう政治学では、よく日本の議会政治のあり方とか、またそれと外国の政治との比較とかいったことを問題にします。が、地政学ではそれもさることながら、常に地球全体を一つの単位とみて、その動向をできるだけリアル・タイムでつかみ、そこから現在の政策に必要な判断の材料を引き出そうとします。つまり、常に地球を相手にする政治学だから地政学だというのだと、まあそう簡単に言っておきましょうかね」

    この地政学の祖として位置づけられるのが、ハルフォード・マッキンダー(英、1861-1947)である。彼が記した『デモクラシーの理想と現実』(1919)は、「現代地政学の古典中の古典」であり、アメリカ合衆国が第一次世界大戦に参戦した際に掲げた「デモクラシーのために」というスローガンに対して、現実的には、大陸(この場合はユーラシア~アフリカの一体的なもの=世界島world island、を指す)の‘ハートランド’が、最大のハードルとなることを示唆している。彼の出身であるイギリスの視座に立ち、当時賞賛されていた(そしてイギリスにとって最も誇るべき国力である)海軍力(=シー・パワー)を脅かす存在として、大陸・内陸=ハートランドの力、ランド・パワーを唱えた。言い換えれば、英国はこれまで、そのシー・パワーを利用して、大陸(ハートランド)を独占する国家権力が出現しないよう勢力均衡balance of powerを維持してきたが、二十世紀に入ってからは、もはや英国独力では均衡の継続が不可能となり、世界の安定のためには、英国に代わる(或いは英国を含む他国籍の)新たな海洋勢力sea powerの編成が必要だ、と論じたのである。常に彼は、均衡balanceを平和、自由の手段として位置づける。これこそが海洋国家・英国のお家芸であろうし、我々日本も学ぶべきところは多いように思う。

    また、彼は、さらに突き詰めた考察として、「西欧世界とその文明の発達は、とどのつまり内陸アジアからの衝撃ないし圧力に負うものであった」(本書P40)という、「まさにコペルニクス的転回のような」理論を展開した。これも、あくまで西洋主義(欧州主義)的な視座を離れてはいないが、それでも「向こう側」から世界を見たという点では特筆すべきではあったのだろう。この考察も、結局は、いやだからこそ、均衡が重要だ、という論旨に繋がっているように思える

    一方、地政学におけるランド・パワー側の雄が、ヒットラー、ナチス・ドイツにも多大な政治的影響を与えたと言われるカール・ハウスホーファー(独、1869-1946)である。本書では、ハウスホーファーの地政学に影響を与えた要素として、①フリードリヒ・ラッツェル(1844-1904)が提唱した「生活圏」(lebensraum)の思想、②マッキンダーのシー・
    パワーとランド・パワーの対比論、③日本の大陸政策の具体的な展開(韓国併合の過程)、の3点を挙げている。

    このハウスホーファーの理論そのものについては、本書ではあまり詳細には触れられていない。但し、理論の骨格はマッキンダーとの相似形であり、であるからこそ、ハウスホーファーは「ドイツはソ連と共同すべきである」(両者で‘ハートランド’を占有すべきである)と主張したのであり、その点でヒットラーと相容れなかったのであろう。... 続きを読む

  • 地政学の入門書として30年売れているロングセラー。30年も前だから、ソ連は崩壊しておらず冷戦も終わっていない、フォークランド紛争が終わってしばらくしたころ、といったあたり。ちょうど「パイナップルARMY」の世界と思えばわかりやすい。だから、当然に最近の情勢は全くカバーされていない。
    とはいえ、地政学に特有の概念や考え方を学ぶための入り口としてはいい。あるいはわ例えだ安保法案だとか欧州の難民問題だとかをそうした概念や考え方を用いて考えてみても、また違った見方ができる。まあ、生兵法は怪我のもとなので、安易な当てはめは厳禁だけど。

  • P169の第6図は非常に面白い。この縮尺で見ると、対ソ連の封じ込め政策がよくわかる。

    p127の日本のアジア主義が、救いがたい業と表現されているのが印象的。人口減少が明確で、日本国内市場の将来性が薄れるなかで、経済的にはアジア主義は最近のベーシックなトレンドと言える。

    最後はちょっと尻切れトンボ的な印象。

  • 冷戦時代の地政学の本。南沙諸島問題その他の直接の解説にならないが基礎知識と考え方はわかる。

  • <目次>
    はじめに
    序章 地球儀を片手に
    第一章 マッキンダーの発見
     1 地政学の起こりと古典
     2 英国の海上権の衰退
     3 西欧シー・パワーの起源と由来
     4 ハートランドの動向
     5 ヨーロッパ半島の運命
     6 自由社会の処方箋
     7 最後の論文
    第二章 ハウスホーファーの世界
     1 ハウスホーファーと日本
     2 生活圏の哲学
     3 広域の思想
     4 太平洋の地政学
     5 大東亜共栄圏との関連
     6 悲劇の結末
    第三章 アメリカの地政学
     1 モンロー主義の発展過程
     2 西半球防衛の展望
     3 汎米主義と二つのアメリカ
     4 アルフレッド・マハンの遺産
    終章 核宇宙時代の地政学
     1 ソ連と地政学
     2 アフリカおよび中近東の地政学
     3 危機の狐
     4 インド洋―世界の地中海
    参考文献について

    ***

    地政学とは地球全体を常に一つの単位と見、その動向をリアル・タイムでつかんで、そこから現在の政策に必要な判断の材料を引き出そうとする学問の謂であり、かなり高度な政策科学の一種である。従来、ともすれば誤解されがちな観念論でも宿命論でもない。国際政治学が国際関係を静態モデルの連続として、その間の変化を細かくとらえようとするのに対して、地政学は国際関係を常に動態力学的な見地から見ようとするのである。
    (本書カバーより)

    ***

    地政学の古典的な入門書。
    いきなりマッキンダーを読むのは厳しそうでしたのでこちらから挑戦してみましたが、私の場合は一読では「なんとなく読み終わった」という感じです。
    もう1回、今度は地図とノートを片手に読み直そうと思います。

  • 今のように混沌とした世界がどうなっているのか知りたくて、ではなくてw、地政学を知りたくて読みました。次は何読もうかな

  • 序章 地球儀を片手に
    第一章 マッキンダーの発見
    第二章 ハウスホーファーの世界
    第三章 アメリカの地政学
    終章 核宇宙時代の地政学

  • 1984年刊行。著者は東京理科大学教授。◆英人マッキンダー、独人ハウスホーファー、米国モンロー主義、ソ連の戦略、これらを通底するlandパワーとseaパワーの相克関係、これらが叙述テーマだが、まさに近代国際政治史の一面を照射。中でも欧米近代史を判っていた方が読み応えがあるかもしれない。◆ハウスホーファーの見解を戦前日本(軍部?)が摂取した可能性に触れられるが、その不十分さも鋭く指摘(特に日中戦争の不毛さ)。また、日本はlandパワー国にはなり切れない点も感得可能かな。◆ソ連(=露)内陸には大河が多数。
    それらは何れも外洋航海可能な3000t級艦船の航行可能。つまり、物資輸送(武器輸出・原料輸入など)という観点において、ソ連内陸から外洋へのsea-roadが開かれており、これは他国(というよりlandパワー国家)には余り見受けられない特異さという点に注目。

  • 久しぶりに大学院時代の学友と再会をした。せっかくなので継続的に会おうという流れになったのだが、その肴として一緒に本でも読もうかということで出てきたのが地政学。

    実際に読むのは別の骨太な本なんだけど、その予習として読んでみたのがこの本。だってタイトルが「地政学入門」なんだもの。

    というのは冗談で、マッキンダーとハウスホーハーを取り上げてる、ってのが理由。ざっくりと地政学がわかるんじゃないかと思ってる。そのため期待度は高め。

    章立ては
    序章 地球儀を片手に
    第一章 マッキンダーの発見
    第二章 ハウスホーファーの世界
    第三章 アメリカの地政学
    第四章 核宇宙時代の地政学
    で構成されている。

    特に今気になっているのはマッキンダーの地政学。

    要するに、
    海上貿易国家の立場からハートランド、つまり大陸を支配する国家の出現を防ぐ、それがマッキンダーのハートランドの理論。そこでは、第一次世界大戦はユーラシア大陸のハートランドを制覇しようとするランドパワーと英国のようなシーパワーの闘争であり、東欧を支配する強力な国家の出現を許してはならない。
    その手段としての勢力均衡であり、国際連盟だ!
    といったところかな。

    この本自体が30年程度昔の本であり、マッキンダーの主著は100年ほど昔の本。そのため、記載内容は古臭いことも多い。
    しかし、イギリスが大陸を支配するドイツやロシアへどう対応したかという教訓は、今の海洋国家である日本にとっての大陸の脅威をどう考えるかの参考になるんじゃないかな、と思う。

    あ、それなら、この本をガイドにマッキンダーの地政学を読むほうがいいのかもね。まずはこの本で予習して、考える物差しを準備しとこう。

  • 30年経っても色褪せない、深い洞察に感嘆した。
    天気予報のアメダスのように、ある時点の過去10年からこの先10年を考察する視座を与えてくれるのが地政学なのかも。

  • 【1983年初版の新書。未だ色褪せない、地理と歴史、時間的、空間的に国際関係を考察する地政学の正に入門書】
    国際政治、国と国の間の力学を地理と歴史から説明しようという試みである地政学。その入門書に挑戦。
    マッキンダー、ハウスホーファーという二人の学者の著作を中心に躍動する地政学の魅力を存分に紹介する。
    陸の力と海の力。海の代表は旧大英帝国。陸についてはヨーロッパとアジア、ユーラシア大陸を制する者は世界を制するという理論。ナポレオン、ヒトラー、旧ソレンなど何度も試みがある。ソ連に反抗する勢力がNATO。正に北大西洋というシーパワーによるランドパワーを抑える組織。
    中東の戦略的な位置についても多く記載。陸と海の勢力が衝突する場所でありかつ宗教的にも資源的にも重要な場所である。
    本書はヨーロッパの事例が多い。だが、本書を読むことで太平洋についても発送を新たにすることができる。
    近年の中国の海洋進出。これは大陸国家がシーパワーを得ようとする動きだろう。日本、フィリピン、ベトナムなど海洋国家は団結してこの動きに警戒する必要があるだろう。
    逆に中国から見れば日本の動きが気になるところだろう。海洋国家日本が大陸に勢力を広めようとすれば朝鮮半島が足掛かり、それは過去の歴史が証明している。日本を押さえ込むためには中韓関係が重要なのだろう。
    新書ならではのコンパクトかつ分かりやすい記述。混迷する国際情勢を知る手がかりとして、実に有用の本である。
    これからは歴史書と共に地球儀片手に国際関係のニュースをみてみよう。
    知的好奇心大満足の一冊でした。

  • 外交に関するニュースや、外国の政府の高官の発言などで
    「地政学的に」というキーワードがありますよね?
    これまでは「あーそうなのか」という感じでした。

    ふと、以前から気になっていた地政学の本書を買って読んでみました。
    過去の歴史や民族問題、商工業の発達など、
    さまざまな要因を例として地政学を説明する良書だとおもいました。

    ニュースをみていてふと疑問におもう、
    「南シナ海はなぜ軍事的に重要な場所なのか?」
    「朝鮮半島は地政学的に重要なのは本当か?」
    「日本は地政学的に重要な場所ではないって本当?」

    という答えが書いてあるわけではありませんが、
    読んで理解すればだれでも自分で答えを導き出すことが可能です。
    自分は、たとえば「地政学的に重要ではない」という点について、
    計り知れないほどのメリットがあることに気がつき、
    本書のような新書に出会えたことをうれしく思いました。

    最近いろいろ地政学の本が出てるのですが、
    自分はこれ一冊であとは『100年予測』のシリーズで十分かな。

  • 1983年の本なんですよ。戦後38年の年。そして冷戦のさなか。だからなのか、記述の深さや広範さが今にないくらいでした。それはつまり、まだ平和のため、いや金のために目がくらんでボケーっとする前夜の時代だからなのか、なんて思いましたね。このあいだも国会議員の人の発言がありましたが、「八紘一宇」なんてものは体の良いスローガンであり、ただ石油などの資源を確保するために東南アジアへ進出するために、国民を納得されるためのイデオロギーとして開発された言葉だとしっかり書かれていたりします。今現在なんて、戦後の記憶が薄れてきていますから、またバカな解釈をして国民を踊らせようとしているんだか、自らが踊っているんだかわからない発言をする政治家がけっこう出てきているように見える。政治家に限らず、識者と呼ばれる人たちにもいる。その言葉の表面だけをなぞって、文脈も考えないのはどうだろう。本書には、地政学としては、こうこうこういうものが地政学だという、本当に地政学にフォーカスした説明って言うのはありません。ただ、19世紀から第二次世界大戦くらいまでを扱って、その当時に出てきたのが地政学ですから、それがどう脚光を浴び、世界に影響を与えてきたかを、細かい歴史とともに見ていくというのが、おおまかな本書の流れです。

  • 大学時代ほとんど触れなかった分野、地政学。
    今更ながら基礎だけでも触れておこうと思い手にとったのが本書。

    地政学の分野の有名所、イギリスのマッキンダー、ドイツのハウスホーファー、アメリカのマハンについて彼らの理論を、
    その思考の背景となった各国、地方の歴史や政治・経済状況などと合わせて解説しています。

    まさに入門書。政治学専攻してた人が卒業後に読んでなるほどな、とか思うのもレベルが低すぎるのかもしれないけど、アメリカのモンロー主義から続く外交戦略の性格とマッキンダーのハートランド理論の関係を説明するところとか、なるほどなーと思った。

    日本では取り上げられることの少ない分野という印象だけど、
    現代史を学ぶときにはむしろもっと使った理解しやすいんじゃないかと思う。
    地理、歴史、経済など色んな分野の総合学問だから難しくはあるけど、
    この本ぐらいの内容なら高校ぐらいでやってもいい気がする。
    単純な知識だけ詰め込んでも、日々テレビや新聞で流れるニュースをどう理解していいか全然分からん!という中学高校あたりで考えてたことを読みながら思い出してました。

  • 序章  地球儀を片手に
    第一章 マッキンダーの発見
    第二章 ハウスホーファーの世界
    第三章 アメリカの地政学
    終章  核宇宙時代の地政学の五つの章から成り立っています。

    第二章に「第一次大戦が終わった後の日本は商船隊も海軍も質量共に英米に次ぐ世界第三位のシー・パワーとして世界に登場した」ものの「当時の国民には日常生活に関係の乏しい世界の海に就いての関心が欠けて」いたため「海上交通と貿易に依存する島国でありながら、完全に生存の条件が異なるドイツの近代化様式に学ぼうとしたことは(中略)かえすがえすも不幸なことだった。」とありますが、この本はここだけ読んで「うん。そうだね。」と、読むのを辞めても特に後悔しない一品かと思われます。

    入門書、です。あくまで。

  • 地政学は面白い!!日本でちゃんと大学で教えるべき

  • 地政学入門に最適。ここから古典に入れば良い。地理の知識は必須。

  • 地政学には興味があったのだが、理論を紹介するにとどまり根拠が提示されないのでこの本だけでは信じるか信じないのかの世界に見える。あと、地理の知識足りてないなあ。

  • 中学時代に友人が熱っぽく地政学について語っていたのを、大学の先生が講義で地政学について語っているのを見て、思い出し、ググったら入門書として評価が良さげだったので、読んでみた。

    科学以前に学問とさえ地政学を感じることはできなかった。疑似科学とかマルクス流の何やらみたいなものと同じ臭いを感じた。言っていることが分かっても何故それが正しいのか全く分からなかった。
    政治学について全くの素人が読むには不適切だったのかもしれない。

  • これを戦争でくくっていいのか分からないけれど(笑)

    古い本なのだが、色あせていない。
    それが「地政学」なんだけども、ぞっとするような学問だなと思った。

    難しくてほとんど分かっていない。世界史も弱いし地理も(泣)
    今後本を読んでいく中で、時折読み返していきたい。

  • 地政学の歴史についてわかりやすく説明する。
    イギリスから始まり、ドイツ・アメリカへと広がった
    この学問。リムパック・ハートランドといった用語
    が出てきて簡潔に説明する。

    もう少しわかりやすくノートにでも取って勉強すれば
    よいかも。

  • 1984年の出版、また地政学入門とあるように、有名な地政学理論を紹介した本だと思う。

    文章もやや古くなるが、地政学のための入門書としては、類書もすくないので良い本だと思う。

  • 入門とタイトルにあるが、そもそも地政学自体が地理は当然歴史、軍事等広大な範囲の知識を必要とするため、本書のみで地政学に入門を果たすことは難しいように思う。

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