織田信長: 中世最後の覇者 (中公新書 843)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121008435

作品紹介・あらすじ

徹底した合理性、非情なまでの現実主義、海外への興味と優れた国際感覚で、苛烈な戦国乱世を勝ち抜きながら、天下平定を目前にして悲劇的最期を遂げた信長の軌跡は、中世末期の現実に裏打ちされた意外に慎重なものであった。近世の開扉者にはなりえなかったものの、ときに狂いながら、秀吉以上の斬新さで、中世的な社会矛盾をぎりぎりまで煮つめて、領主支配の再編・強化に苦闘した武将の魅力と、その歴史的位置を検証する。

感想・レビュー・書評

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  • ◇目次
    ・はじめに
    ・信長の風土
    ・朝廷との関係
    ・家臣団の統率
    ・村と百姓の支配
    ・織田政権下の都市と商業
    ・信長の行動と思考
    ・天下人信長とその挫折

    本書は織田政権を従来の近世の画期として見るのではなく、中世の枠組みの中で展開した政権として評価したものであり、現在の織田政権評価にも影響を与えているろうさくである。
    信長の領地支配についても、在地領主制は必ずしも否定していないし(政権後半期の大和国一国支配の在り方は次々の豊臣政権が行った大名の「鉢植え」の先駆と捉える向きもある)、対朝廷についても官位・官途の制度的枠組みに縛られているあたりは中世的な思考であると言える(後の豊臣政権で官位・官途の武士・公家の序列体系を再構成したのに比べればプレ近世的といえるかもしれない)。
    直轄地安土以外では座組織の存続を認めたり、抵抗しない寺社勢力の自治都市の特権などは必ずしも否定していない。

    本書は織田政権下の評価を考える史学史の中でも、内容おさえておきたい一冊でありオススメする。

  • 簡潔だが、論旨は強い

  • 昭和62年刊行
    本書で描かれた信長は、従来の信長像と異なり、
    彼を近世ではなく中世最後の段階の人物として
    描いている。

    既に絶版となっているようであるが、本書を読む
    と基本的な事がわかる。
    室町以降、将軍は上皇に準ずる待遇を受けていた
    こと、近世に石高制が採用されたのは、貨幣の流
    通統制の不安定さが重要な原因だったことなど、
    は面白い。

    一般には兵農分離と楽市楽座を進めたと言われて
    いるが、それは限定的なものであったという。
    戦国の武士は、城下町に屋敷を構えることはあ
    っても本拠の村に屋敷をかまえ、小天地の主であ
    ったこと。楽市楽座というよりは、むしろ既存の
    座を安堵した例が多いことなど、指摘している。

    長篠の戦いの記述などは、いささか古びている部
    分もあるが、おすすめな一冊である。

  • [ 内容 ]
    徹底した合理性、非情なまでの現実主義、海外への興味と優れた国際感覚で、苛烈な戦国乱世を勝ち抜きながら、天下平定を目前にして悲劇的最期を遂げた信長の軌跡は、中世末期の現実に裏打ちされた意外に慎重なものであった。
    近世の開扉者にはなりえなかったものの、ときに狂いながら、秀吉以上の斬新さで、中世的な社会矛盾をぎりぎりまで煮つめて、領主支配の再編・強化に苦闘した武将の魅力と、その歴史的位置を検証する。

    [ 目次 ]
    信長の風土
    天下布武
    朝廷との関係
    家臣団の統率
    村と百姓の支配
    織田政権下の都市と商業
    信長の行動と思考
    天下人信長とその挫折

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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
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    [ 参考となる書評 ]

  • 近世最初の覇者ではなく中世最後の覇者として捉えて信長を語った書ということになってるが、天下を取った冷酷無比な男の伝記が単に語られるのではなく、この社会・経済・文化・宗教を含めた時代背景などの様々な面から、信長の功績を検証しているように読めた。密度の濃い内容で、特に前半は固有名詞もたくさん登場するし、(著者に申し訳ないが)文体に魅力が欠けていて、読み進めるのが辛かった。何箇所かで述べられる信長時代と秀吉時代の社会の比較は面白い。

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著者プロフィール

大阪大学名誉教授

「1997年 『懐徳堂とその人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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