張作霖爆殺―昭和天皇の統帥 (中公新書)

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著者 : 大江志乃夫
  • 中央公論社 (1989年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121009425

張作霖爆殺―昭和天皇の統帥 (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • 張作霖爆殺事件を軸に、①陸軍の謀略の概要、②田中義一首相の政治的対応と陸軍の反駁、③田中と陸軍の派閥概要、④改正治安維持法とその改正過程・統帥権独立と帝国憲法との関係(違憲性如何)、統帥権の意義と他の天皇大権との関係、⑤各種法令に基づく統帥権の制度的内容、行使手順、⑥戦前昭和時代に至る政治状況を、詳細に検討したもの。文献検討も細かく、書き散らしではないことがわかる。個人的には、帝国憲法の解釈論から導かれる統帥権の内容、統帥権独立の違憲性如何、改正治安維持法の違憲性如何(内容・改正手続両面)が興味深い。
    帝国憲法の解釈論については、もう少し勉強しないと、とても本書の意義を捉まえることは出来ないだろう。また、帝国憲法下の解釈を駆使すれば、統帥権の独立が所与の前提でないかもしれない点には注意。◆伊藤博文「憲法義解」、美濃部達吉「憲法撮要」、松下芳男「日本軍閥の興亡」、中野登美雄「統帥権の独立」、栗屋憲太郎「東京裁判論」、大江志乃夫「統帥権」。◆1989年刊行。著者は茨城大学人文学部教授。

  • 1989年の改元の時に著された本。天皇陛下の戦争責任という重いテーマに対して制度面から論理的に演繹することを試みている。言いたいことは理解できたが、冷静な論述であるからか、心に響いては来なかった。

  • 軍部が都合のいい状態にできた…
    その時点で日本がやがて、暴走し、
    戦争へ突っ込んでいったのは必然といえるでしょう。

    この事件がうやむやにされたり、
    主犯たちを厳罰にできなかったのは、
    やはりある種の抜け道があったからだな、
    と思いました。

    やはり実際に軍に赴いたりしている彼らと
    指示をするだけという存在だと…
    どうしても目上の人は邪魔になるのかも
    しれませんね。

    これらには数々の対応ミスもあったようですが、
    いつの時代にもあるものですね。
    そして、現代でもそれが許容されるのは…
    人って何も学ばないものです。

  •  本書は、1928年(昭和3年)の「満州某重大事件」ともいわれた「張作霖爆殺」事件前後の詳細な考察書であるが、「昭和天皇」や「田中義一総理」そして「軍部」や当時の「国家システム」をも分析した秀逸な本であると思った。
     「昭和天皇」が田中義一総理を批判して内閣倒壊に追い込んだことや、「昭和天皇」が後に「独白録」でその事実を「若気の至りであった」と回顧していることは広く知られているが、当時の複雑な「軍部」との関係にも踏み込んだ本書は、読み応えのある迫力に満ちている。
     本書では当時の「軍部」が「大陸政策」をはじめとする国家政策に強大な影響力を行使していることが明らかにされているが、シビリアンコントロールが当然とされる現代から見ると、なんとも違和感が残る。
     本書では、「天皇がかけちがえたボタン」として軍事的君主としての「天皇」に批判的な考察を展開しているが、これはむしろ、「明治国家システムの欠陥」であって「昭和天皇」の責任とするのはちょっと酷ではないかとも感じた。
     本書によると「昭和天皇の皇位継承」をいろどった事件は「昭和金融恐慌」「張作霖爆殺事件」「治安維持法改悪」であったとある。なんとも「暗い時代」である。
     本書を読んで、この時代には日本はもはや昭和20年の敗戦による「大破綻」は避けられない道に踏み込んでいたようにも思えた。だとしたらば、日本の「ポイント・オブ・ノーリターン」はもっと前の時代に遡らなければならないのだろう。
     本書は、この時代をよく知ることができる良書であるが、読後感はなんとも暗く重い。
     本書では、当時「陸軍」が「陸軍のためであり、国家は眼中になかった」という愚かな組織であったことを突きつけられるように確認できるが、「国家としての利益」よりも「所属組織」に忠誠を誓うこの人々のあり方はひょっとしたら現在でも同じかもしれないとも思えた。

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