- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121009562
感想・レビュー・書評
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[「楽都」で火花、散らしてきました]世界に冠たる音楽の都であり、優雅で気高い雰囲気に満ちた都市というイメージがあるウィーン。その地に降り立った著者は、とびきりに「高慢」な人々の態度や振る舞いにカルチャーショックを覚える。そんな彼がショックを克服しようと思い立った方法、それは、ウィーン人に背を向けることではなく、徹底的に立ち向かうことであった......。自身のウィーン経験の酸いも甘いも語り尽くした留学記です。著者は、哲学やコミュニケーション論を専門とされる中島義道。
苛立ちをテーマにして一冊書こうと思わせるほどにその記憶が鮮烈だったというのがまず面白い。そして書かれているエピソードが、自分に降り掛かってきたら最悪だとは思いつつも、(中島氏には申し訳ないが)他人事なのでこれまた面白い。初版は1990年なので今はだいぶ変わっているのかもしれませんが、隣人と、家主と、そしてその先に控える文化との徹底的な攻防に、外国で暮らすということの奥深さを垣間見たような気がします。
そんな中で特にキラリと光るのが、中島氏が指摘するヨーロッパ的高所に立ったところから日本を批判する日本人の不自然さ。「今でもそういう人いるなぁ」と感じたのですが、筋が通っているようで実は二枚舌になっている態度をグサりと問題提起しており、異文化と自らの文化をなんとなく比較するということに潜んでいる危うさを見事に浮き上がらせているように思いました。
〜「真理よりも権利」という私の実感したヨーロッパ人の態度を、ここで私は最も鮮明に見たように思った。〜
続編も出てるとのこと☆5つ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(2003.04.16読了)(2002.03.23購入)
(「BOOK」データベースより)
東大で二つの学部を卒業したものの、社会不適応を繰り返す中島青年。明日死ぬなら何をしたいか?せめて重度の「哲学病」を全うしたい、との願いのみ。三十三歳、逃げ場無し。ウィーンで自分を変えられるかもしれない…。だが、待ち受けていたのは頑固・高慢・偏見に凝り固まったヨーロッパだった。家を借りる、試験を受ける、映画を観る、とにかくすんなり事が運ぶためしはない。泣き寝入りもままならず、青年は決意する。ヨーロッパ人と顔突き合わせ喧嘩することを。戦うことと、哲学することはどこか似てる。自分自身になるための、怒りと涙と笑い溢れる奮闘を綴る、ウィーン喧嘩留学記。
☆中島義道さんの本(既読)
「〈対話〉のない社会」中島義道著、PHP新書、1997.11.04
「私の嫌いな10の言葉」中島義道著、新潮社、2000.08.30
「働くことがイヤな人のための本」中島義道著、日本経済新聞社、2001.02.19
「生きにくい……」中島義道著、角川書店、2001.07.30
「ぼくは偏食人間」中島義道著、新潮社、2001.08.10
「不幸論」中島義道著、PHP新書、2002.10.29 -
本書は著者である中島義道氏が、30歳にしてドイツのウィーンに留学した経験が叙述された内容となっている。特にウィーン人のウィーン的人間性のようなものを中心に書かれているのだが、、、こんなにすごいものなのかと正直驚いた。詳細な内容は本書を読んでもらえば分かることだが、公然と明確に自身に非があったとしても、私は間違っていなかったと頑なに主張する。「私は完璧であり、あなたが間違っている」と。そんなことを毅然と言える日本の一般人などまずほとんどいないだろう。たまに見かけることはあるが、ウィーンでは日常的にそのような場面に遭遇するらしい。しかし、そのようないわゆる「頑固さ」というものは日本人にも少しはあってもいいのではないかなと思ったりする。そういう意味では、ウィーン人というのは人間的なものを包み隠さず表出しているという点において、個人的に少し羨ましく感じた。このような自己中心的な人が日本社会にいたとしたら、間違いなく社会不適合者、或いは情緒不安定とか、ひねくれ者とか言われるのだろう。だが、自分の信じる価値観に対して確固とした自信がある、たとえそれが間違っていたとしても。このような”思い込み”により、人は自分以外の価値観を度外視した考えで生きることになる。そっちの方が幸せなんだろうか、自分がいかにおかしな人間かということを自覚せずに生きているほうが幸せなのだろうか。このような”いい”意味で頑固な人間になれれば、周りを気にせず生きられる。こんなウィーン的価値観も一概に悪いとは言えないのではないかなと、そう個人的に感じた。
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最初に読んだときはふーん、こんなものかと思ったけれどドイツに来て再読したらうなずけることばかり。
私も格闘します!