物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)

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著者 : 藤沢道郎
  • 中央公論社 (1991年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121010452

物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • 10人の人物を中心として描きながらイタリアの歴史を書いたもの。書かれている時代はローマ帝国が蛮族に蹂躙され分裂していく四世紀末から、イタリアがついに統一される20世紀初頭まで。人物を描いているが、単なる人物略伝ではない。その人物の生きた各時代のイタリアを描き、全体として通史となるように目されている。著者の言うように、これは政治史や文化史に限定されたものではなく、全体的なパースペクティブを描こうとしたものだ(p.327)。

    章題になっているのは皇女ガラ・プラキディア(c.390-450)、女伯マティルデ(1046?-1115)、聖者フランチェスコ(1182-1226)、皇帝フェデリーコ(フリードリヒ2世)(1194-1250)、作家ボッカチオ(1313-1375)、銀行家コジモ・デ・メディチ(1389-1464)、彫刻家ミケランジェロ(1475-1564)、国王ヴィットリオ・アメデーオ2世(1666-1732)、司書カサノーヴァ(1725-1798)、作曲家ヴェルディ(1813-1901)。

    取り上げた人物とその時代背景がうまく絡みあうように書かれているものはとても面白い。例えばヴェルディの章は、ナポレオンの侵略がもたらしたイタリアの近代化(p.290f)、そして青年イタリア同盟のマッツィーニが大きく描かれる。ヴェルディのオペラも、『ナブッコ』がイタリア統一への熱狂の中で理解されたこと(p.308)、そもそもヴェルディの名前自体が、イタリア統一へ向かうサルディーニャ国王ヴィットリオ・エマヌエーレとのダブルミーニングとされた(Vittorio Emanuelere d'Italia)こと(p.320)として描かれる。

    フェデリーコと聖フランチェスコの辺りもよく書けている。イタリア統一に熱心に取り組んだフェデリーコは教皇庁に対抗できる官僚組織を作るべく、知識人を育てるために1224年、ナポリ大学を設立した(p.93)。結局は自治都市の経済力と、修道会を利用して新しい聖人信仰の道徳感情をうまく利用した教皇庁(p.111f)の前にイタリア統一の夢は絶たれる。聖フランチェスコとフェデリーコはまったく対照的な形で、その当時の社会の水準を超絶した存在だという評価も目を引く(p.101)。

    また、ルネサンスにおけるフィレンツェとミラノの対抗意識(p.152f)もなるほどと思ったところ。フィレンツェは少なくとも形式的には自由な民主国家で経済力を誇り、共和制ローマに歴史を結びつける。一方、ナポリは君主の独裁国家で軍事力を誇り、帝政ローマに歴史を結びつける。この対抗意識は美術や建築にも及ぶ。フィレンツェ大聖堂の巨大な円蓋と、ミラノ大聖堂の無数の尖塔がそれだ。また、ルネサンスの時代といえば、ペストの流行。ペスト菌の宿主の蚤が寄生するのはクマネズミであり、これはもともとヨーロッパにいない動物だったようだ。十字軍の船に乗って東方からペスト菌を持ってやってきた、なんて話がある(p.131f)。

    ヴェネツィアの扱いが小さいという印象を持った。ジャコモ・カサノヴァという不思議な人物とともに18世紀のヴェネツィアが描かれている。ヴェネツィアは何よりも治水事業が大事で、潟に流入する河川の土砂で陸地にならないように、かつ海の侵食によって外海と接続してしまうことも避けなければならない。これが安定した政治体制を要請した(p.261-265)。18世紀のヴェネツィアは文化的に最後の輝きを放つ時期だが、それ以前の海洋国家としての姿がほとんど出てこない。また、オスマン帝国との話もなく、レパントの海戦も出てこないあたりがやや不満を感じる。人物中心に描くとなると、強大なリーダーを持ったわけでもないヴェネツィアは埋もれてしまうのだろうか。

  • 読みやすかった。

  • 名作。ただ6年前に買ったときは読みきれなかった。古い本なので新書のわりに文体が格調高く,ある程度の歴史の知識がないと読めない。10人の人物を主軸にしてイタリア通史を描く手法も,わりとマイナーな人物が多く,またローマ帝国崩壊からリソルジメントまでに時間が区切られているため,観光や授業準備目的で(「何かの役に立たせる」という目的で)イタリアの歴史をざっくり捉えたい人には案外向かないんじゃないかという気がする。記述に少し古さを感じるところもある。
    この本は「物語」とついているがそれは「読みやすい」という意味ではなくて,あとがきにもある通り筆者の明確なポリシーにもとづいて「歴史の再構築」を目指して描かれている。だからそれにちゃんと乗れるだけの心構えがあればこんなに面白い新書もないと思います。10人の人物はそれぞれ全く違う個性を持っていて,また舞台となる都市もラヴェンナ,カノッサ,アッシジ,パレルモ,ナポリ,フィレンツェ,ローマ,トリノ,ヴェネツィア,ミラノと多彩。あらゆる歴史分野に目配せしながらイタリア愛を感じさせ人物の魅力も全体の一貫性も保てているのは神業級。積まれた新書を消化するキャンペーン11。

  • イタリアの歴史に、知識不足な私には、教科書の試験に出る単語を思い出すぐらいの作品でしかなく、思い入れが生まれるような物語ではなかった。
    司書カサノーヴァは、興味が出たが。

    私以外の人達の評価・感想を見たら、自分にはイタリアの歴史に関する知識が不足している事を痛感させてくれた作品。

  • 読了。

  • ○この本を一言で表すと?
     十人の各時代の人物を軸に歴史を物語風に語った本


    ○この本を読んで面白かった点・考えた点
    ・「物語○○の歴史」シリーズの中ではスペインに次いで「物語」が強く、しっかり歴史についても述べられているなと思いました。物語を繋ぐ描写で前章の何年後の物語かということを記載してから始めるのは歴史の連なりがうまく表現され、さらに物語風になっていると思いました。

    ・ゲルマン民族の大移動からゴート族やヴァンダル族と関わってきた歴史が書かれていて、ただ一方的に攻められていたのではなく、同盟を結んだり、部下として使ったり、敵対する以外の方向でも関わってきたことを知ることができました。ガラ・プラキディアが何度も夫に死なれて様々なところをめぐるのは、日本の戦国大名の姫と似ているなと思いました。(第一話 皇女ガラ・プラキディアの物語)

    ・十一世紀ごろの貴族と教会との関わりの一つの形として、ベアトリーチェとマティルデの後ろ盾となったイルデブランド(教皇グレゴリウス七世)の存在が興味深いなと思いました。そのグレゴリウス七世が皇帝ハインリヒ四世に「カノッサの屈辱」を味わわせたこと、そのハインリヒ四世が過去に庇護を求めたベアトリーチェ母娘を追い払ったことなどは、すごい恩讐関係だなと思いました。(第二話 女伯マティルデの物語)

    ・聖者フランチェスコのことは、具体的には知りませんでしたが、そういう聖者がいたということは割と有名な気がします。そのフランチェスコの経歴は初めて知りました。十二、三世紀当時、異端派がかなり勢力を強め、カトリック批判が行われているところを、同じように異端に近いフランチェスコを当時の教皇イノケンティウス三世が重用することで対抗したのは、かなり典型的な「毒をもって毒を制す」だなと思いました。そのフランチェスコが死んだ後でその思想を厳格に継いだ厳格派と妥協した穏健派が争いになり、厳格派が弾圧される側になったというのは、組織化しないという方針を継いだ側が立場としては弱かったというある意味自明な流れで、宗教的というより政治的な流れだなと思いました。(第三話 聖者フランチェスコの物語)

    ・多言語を扱えて、肉体的にも優れていた皇帝フェデリーコが、アラビア語も扱えて当時はヨーロッパより進んでいたイスラム教世界の君主アル・カミールと交流し、科学的な知見の実験を行っていたりしているのは、とてつもなく多才だなと思いました。しかし、早過ぎる天才が理解されないという歴史上の典型事例そのものに該当し、後を継ぐ者がなくホーエンシュタウフェン家最後の皇帝となったというのは、まさに「物語」だなと思いました。(第四話 皇帝フェデリーコの物語)

    ・名前だけは知っていた「デカメロン」の著者ボッカチオの経歴は初めて知りました。十四世紀のペスト禍の規模がすごいなと思いましたが、その中で生に溢れた物語を書いたというのはすごいなと思いました。(第五話 作家ボッカチオの物語)

    ・有名なフィレンツェのメディチ家が隆盛を誇るようになったその基礎を築いた人物の物語でした。都市国家が共和政を敷いているということは知っていましたが、どのような体制だったかということはあまり知りませんでした。やはり時代的に平等な制度ではなく、既得権益者がかなり強かったというのはやはりという気がしました。その中でメディチ家が既得権益者外から支持を得ていたというのは意外でした。(第六話 銀行家コジモ・デ・メディチの物語)

    ・コジモの孫のロレンツォ・デ・メディチに見出されたミケランジェロが、かなりの偏屈者であったこと、レオナルド・ダ・ヴィンチと対立していたこと、メディチ家と対立するサヴォナローラを支持して板挟みになっていたことなど、かなり複雑な人間関係だなと思いました。宗教改革等のかなりの激動の時期に芸術家として生きることの大変さのようなものも伝わってきました。(第七話 彫刻家ミケランジェロの物語)

    ・うまく立ち回ることで公から王になることができたヴィットリオ・アメデーオが、晩年は息子に王位を譲った後でまた王になりなくなって忌避されたというのは、老いてから身を退かない者が受ける報いを自業自得で受けているなと思いました。(第八話 国王ヴィットリオ・アメデーオの物語)

    ・いかにもイタリア人っぽい色男の物語で、ヴェネツィア、パリ、ロンドンで浮名を流しまくってやり過ぎて追われて流浪するというカサノーヴァをイタリアを語るための十人の内の一人に選んだのは面白いセンスだなと思いました。(第九話 司書カサノーヴァの物語)

    ・イタリア独立に至る話と、作曲家ヴェルディの話を交錯させて語っているのは面白い手法だなと思いました。近代の作曲者一人を取り上げても奥さんを亡くして意気消沈していたところを女優の支援でオペラを仕上げ、その女優と結婚して、と劇的になるのだなと思いました。(第十話 作曲家ヴェルディの物語)


    ○つっこみどころ
    ・地名や人名がいろいろ出てきますが、都度地図や表が出てくるわけではなく、位置関係や人間関係の把握が難しかったです。少々ページ数が増えても挿入してくれるとより理解できたと思いました。

  • 紀元後2000年を8人の人物の時代史を描くことにより、イタリアそのものの歴史を分かりやすく提示してくれるものです。ラヴェンナ、アシジ、フィレンツェ、ナポリ、トリノなどの都市の歴史も同時に学べます。つまり西ローマ帝国滅亡の直前の皇女ガラ・プラキディア、十字軍が始まった頃の女伯マティルデ、教皇全盛期時代の聖者フランチェスコ、皇帝派と教皇派が争った時代の名君・皇帝フェデリーコ、作家ボッカティオ、銀行家コジモ・デ・メディチ、彫刻家ミケランジェロ、国王ヴィットリオ・アメデーオ、司書カサノーヴァ、作曲家ヴェルディ。政治、経済、そしてその後も長い間、文化先進国としてヨーロッパをリードしたイタリアが都市国家の対立・抗争に明け暮れている間にスペイン・フランス・オーストリア等の諸外国の支配に悩まされ、追い越され、ついに国家統一されるまでの歴史を語ったものです。VERDIの綴りがイタリアの愛国心を鼓舞し、「ナブッコ」の「黄金の翼に乗って」の大合唱と共に、イタリア統一戦争が繰り広げられて行ったという記述には感動でした。今までよく知らなかった天才色事師カサノーヴァなども大変興味深かったです。

  • (1993.09.30読了)(1991.10.31購入)
    解体から統一まで
    (「BOOK」データベースより)amazon
    皇女ガラ・プラキディア、女伯マティルデ、聖者フランチェスコ、皇帝フェデリーコ、作家ボッカチオ、銀行家コジモ・デ・メディチ、彫刻家ミケランジェロ、国王ヴィットリオ・アメデーオ、司書カサノーヴァ、作曲家ヴェルディの10人を通して、ローマ帝国の軍隊が武装した西ゴート族の難民に圧倒される4世紀末から、イタリア統一が成就して王国創立専言が国民議会で採択される19世紀末までの千五百年の「歴史=物語」を描く。

  • 読むの楽
    そんで面白い

  • イタリア史のそれぞれの時代を10人の人物に代表させて、というアプローチ。イタリア初心者にはパースペクティブが掴みづらいという弱みは残るけれど、ミケランジェロとレオナルドダビンチの確執や、メディチ一族の衰勢など、物語として面白く読める。なかなかの名文で、語り口に風格がある本を久しぶりに読んだ。こういう先生に教わってみたいとふと思った。

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物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)の作品紹介

皇女ガラ・プラキディア、女伯マティルデ、聖者フランチェスコ、皇帝フェデリーコ、作家ボッカチオ、銀行家コジモ・デ・メディチ、彫刻家ミケランジェロ、国王ヴィットリオ・アメデーオ、司書カサノーヴァ、作曲家ヴェルディの10人を通して、ローマ帝国の軍隊が武装した西ゴート族の難民に圧倒される4世紀末から、イタリア統一が成就して王国創立専言が国民議会で採択される19世紀末までの千五百年の「歴史=物語」を描く。

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