現代思想としての環境問題: 脳と遺伝子の共生 (中公新書 1075)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121010759

作品紹介・あらすじ

環境問題はいまや世界的関心事であり、政治・経済・文化(倫理)、科学等の次元から論じられるが、という二項対立を越える議論は数少ない。本書は「環境と人間は生物の進化の織りなすDNAメタ・ネットワークとして一体化する」という立場から、環境問題とは情報の肥大化した文化によって人間が危機に立っていることを意味するとして、コンピュータに希望を見る。生命をめぐる現代思想を軽快に駆け抜けて展開する論考。

感想・レビュー・書評

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  • 【目次】
    まえがき [i-v]
    目次 [vi-viii]

    第一章 見取図 001
    1 現状 
    2 思想的背景(1)――自然と人間 
    3 思想的背景(2)――さまざまなる二項対立 

    第二章 環境 033
    1 環境問題複合体における環境、あるいは人間にとっての環境 
    2 生態学の環境、あるいは人間を含んだ環境 
    3 進化論の環境、あるいは人間に織り込まれた環境 

    第三章 エコロジー 059
    1 二つのエコロジー 
    2 エコロジーと環境問題 
    3 さらばガイア 

    第四章 人間 085
    1 さまざまな環境世界 
    2 霊長類の環境 
    3 環境の誕生 

    第五章 DNAと文化 111
    1 DNAメタ・ネットワーク 
    2 文化の生物学 
    3 人間の文化 

    第六章 コンピュータ 137
    1 コンピュータと環境の三角形 
    2 コンピュータと生命 

    あとがき [158-164]
    謝辞 [165-166]
    参考文献 [167-187]
     1 環境問題 
     2 生態学 
     3 進化生物学 
     4 人類の進化 
     5 動物行動学 
     6 エコロジー 
     7 機械、コンピュータ
     8 科学と一般社会の関係 
     9 その他

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 環境問題の理念と理屈に関するもの
     
    1)環境問題を政治的社会的経済的要因、
    コンピュータと関連させる。

    2)進化論との関係を鮮明にする。

    見取り図、環境、エコロジー、
    人間、DNAと文化、コンピュータ

    ○キーワード
    地球温暖化、オゾン層、酸性雨

  • 環境問題は、政治、経済、文化や倫理、自然科学、そして科学論という諸領域にまたがる複合体を形成している。だが往々にして、こうした複雑な環境問題を、自然/人間という単純な二項対立に還元した上で議論を展開するということがある。著者は本書の中で、従来の単純な二項対立的の枠組みに囚われることを拒否し、自然‐人間‐機械の三者が相互に織りなすネットワークの中で環境問題の所在を突き止めることをめざそうとしている。

    R・ルウォルティンは、生物体は環境を改変して遺伝子頻度に影響を及ぼすと主張した。つまり、生物体は環境の産物であると同時に、環境の生産者でもある。さらに心理学者のJ・オードリン=スミは、「行動とはニッチを形成する表現型である」と定義し、生物体は適応度の高い遺伝子型だけでなく、遺伝子型の適応度を高める環境を子孫に残すことができるという立場から、環境と表現型の共進化というモデルを構築した。

    とりわけ人間は、文化的活動によってみずからを取り巻く環境を大きく改変する。それゆえ、人間は自然の一部であるだけでなく、人間の中に自然が含まれているという視点を持つことが必要になる。著者は、こうした人間と自然とが相互に含み込まれているようなネットワークの中で、環境問題群を考察する必要があるのではないかという。

    さらに著者は、機械、それもとりわけ、人間の文化活動を大幅に改変するコンピュータを、もう一つの契機として取り入れようと試みる。人間は大きな脳を獲得して文化を築くことで、遺伝子よりもはるかに急速に環境の変化に適応することが可能になった。この意味で、脳の機能は遺伝子の外部パッケージだとみなすことができる。これと同じように、コンピュータは脳の外部パッケージの役割を果たしている。さらに人工知能の研究によって、遺伝子とコンピュータとの新たな関係が作られていることに、著者は言及する。

    こうして、自然、人間、機械という三者が織りなすネットワークの中で、いわゆる環境問題と呼ばれるさまざまな問題が生じていることを明らかにし、その解決の道筋を探ってゆくことが求められていると、著者は論じている。

  • [ 内容 ]
    環境問題はいまや世界的関心事であり、政治・経済・文化(倫理)、科学等の次元から論じられるが、〈自然対人間〉という二項対立を越える議論は数少ない。
    本書は「環境と人間は生物の進化の織りなすDNAメタ・ネットワークとして一体化する」という立場から、環境問題とは情報の肥大化した文化によって人間が危機に立っていることを意味するとして、コンピュータに希望を見る。
    生命をめぐる現代思想を軽快に駆け抜けて展開する論考。

    [ 目次 ]
    第1章 見取図(現状;思想的背景)
    第2章 環境(環境問題複合体における環境、あるいは人間にとっての環境;生態学の環境、あるいは人間を含んだ環境;進化論の環境、あるいは人間に織り込まれた環境)
    第3章 エコロジー(二つのエコロジー;エコロジーと環境問題;さらばガイア)
    第4章 人間(さまざまな環境世界;霊長類の環境;環境の誕生)
    第5章 DNAと文化(DNAメタ・ネットワーク;分化の生物学;人間の文化)
    第6章 コンピュータ(コンピュータと環境の三角形;コンピュータと生命)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 358夜

  • 十五年ほど前の著書になるが、その意見の射程は十分今に届いている。
    むしろある程度環境問題の内実や、”エコ”という概念が蔓延した現代だからこそ効果を発揮するように思う。
    しかし、最後にコンピュータの環境問題に対する有効性が述べられているが、コンピュータを含む情報環境は当時から予想を上回る進歩をしており、その提案が現在どう現実味を帯びているかを詳しく計れないの、僕たちの知識がないせいか、それともこの提案の有効性が時代とずれてしまっているか。
    それでもやはり確実なことは、環境に関して考えるのではなく、”環境問題”という曖昧な問題のあり方を問うべきであるということである。
    そこには近代的思想の限界が見えてくる。

  • 理解及ばず。

    ニッチ: n次元超空間(三次元、気温、湿度、日照時間…) エドモンド・バッチントン

    〇環境認識の違い(資源か否か)

    環境の破壊とは、…DNAメタネットワークとしてのあなた自身の危機(114頁)

    遺伝的進化
    文化的進化

    両者のギャップが破壊を引き起こす

    遺伝子(生命)→脳・ミーム(文化)→機械(コンピューター)→遺伝子?

  • ガタリの3つのエコロジーなどの話なども踏まえ、環境問題やエコロジーという言葉を鋭い視点で語っている。

  • 環境とわたしとの間に

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著者プロフィール

東京大学大学院情報学環教授、理化学研究所革新知能統合研究センター・チームリーダー。もともとの専攻は霊長類学だが、現在は科学技術と社会の関係についての研究考察が専門領域。人類進化の観点から人類の科学技術を定位することが根本の関心。著書に『科学とはなにか』(講談社)など。

「2024年 『抑圧のアルゴリズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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