- Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121010995
作品紹介・あらすじ
江戸には江戸の文化を成熟させた先人がいた。その果実は、現代と全く異なる味わいがあるからこそおもしろい。著者は、江戸の文物を部品に一人乗りのタイム・マシーンを組立てて江戸観光を企てる。着いた時代は伝統の「雅」と新興の「俗」の両文化が見事に融和した壮年期の江戸。中央はもとより地方にも足を延ばし、一癖も二癖もある多彩な人々を訪れ、出版事情を探り、文人大名の蔵書も拝見。まずはこれを評判記に刻んで御報告の仕儀。
感想・レビュー・書評
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何年ぶりかの再読。
近代以降の視点でなく江戸時代の視点から江戸文学を見た時、元禄文化と化政文化の2つに山があるのではなく、真ん中あたりの18世紀がもっとも栄えた時代であるとする考え方。改めて読んでも明快。
「巻ノ二 江戸の中央と地方」では、主に九州の出版状況や文人について紹介。
巻ノ三以降は、どちらかというと著者の関心を引いた色々な人物や話題があれこれ取り上げられる。通読して何かを論じるという感じではないが、江戸文学の持つ色々な面に触れることができる。
「巻ノ三 廓の素顔」では遊女評判記を論じた後、中国明清の同様の書物、さらには18世紀英国の遊女評判記(風書物)まで紹介される。中国はともかく英国の書物が、江戸文学に影響している訳はないのだが、古典文学を通じて他国の文化にも目を向ける視点の広がりが新鮮。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江戸時代の文化の諸相を、軽妙な文章で紹介している本です。
著者は、18世紀の江戸で花開いた文化の特徴を「雅俗融和」と表現し、この時期こそが江戸文化の最盛期だという見方を示しています。その上で、文学や芸術、遊郭文化や庶民の生活など、江戸文化にまつわるさまざまな話題に触れつつ、その魅力に読者を誘います。
書誌学的な研究の中で出会うさまざまな楽しみや苦労を綴った「和本礼賛」というタイトルを持つ最終章も、おもしろく読みました。 -
「江戸の文化」ではあるが「江戸時代の文化」が、「雅」と「俗」の対比で理解していこうとする点に特色があるようである。
「雅」について「伝統文化」を言い、「俗」とは「新興の文化を指す」(7p)のうえに、この二つはついに「価値の転換はついに起こらなかった」ことを明確にする。
地方大名の見識。実はそこが思いのほか豊富であって、とりわけ九州で輝く地方の才能を評価している。
自己の思想と哲学を文筆で知らせる、あるいはその蔵書を通じて見識を世にとう側面は、地域政権の見識として注目されるに違いがない。
中野氏について先に、岩波新書『和本のすすめ――江戸を読み解くために』にを読んでした。こちらは、肩ヒジをはらずに読むことができて、「いかに」と考えてみた。
巻末の解説によると、朝日新聞、西日本新聞、毎日新聞などで掲載したコラムということで、長短、文体のリズムも紙面むけのソフトさが感じられる(中公新書 1992年)。 -
11.3.31
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1099 2冊あり
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江戸の文化・風俗を雅俗の両面から検証・紹介している著書・・・・・著書というよりは、著者の江戸時代に対する嗜好と思い入れを、自由奔放に綴ったエッセイ集である。江戸文化への教科書的解釈に対する批判やユーモラスな独自の解釈等、歯切れの良い口調が楽しめる。
--- 2008.08.10