- Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121011176
感想・レビュー・書評
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若い頃に興味深く読んだはずだったのだが、今回は刺さらなかった。違う本のことだったのか…?
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日本人は、なぜコメを食べるようになったか?という問題意識の中で、コメのルーツを探る。
ネパールと雲南と日本、北海道を結んでコメ食を基盤とする生活と文化が成立した。豆類、雑穀からコメへ。主食の変化は食生活のみならず栽培植物の品種、栽培技術、宗教儀礼、生活様式、さらには社会構造と深く関わっている。
「食文化は人間の生存・生活の最も基礎をなすものである。何を、どのように料理して食べているかという問題は、その民族のおかれている自然条件とそれによって規定される植物の品種・分布や栽培技術・方法と深くかかわる。」食文化とコメは深く関わっている。照葉樹林文化を提唱した中尾佐助の『料理の起源』の研究内容の説明が、かなり進化してまとめられている。
コメは、海抜2000メートルを超えると栽培ができなくなる。その中で、どんな食を展開していくかを調査する。
2000メートル以下はイネを作り、コメを食べる。その上からは、オオムギ、ヒエなどを食べ
3000メートルを超えるとコムギやジャガイモを食べることになる。
ネパールに暮らす少数の山岳民族であるシェルパ族は、海抜3500メートルで生活する。ツァンパ、ジャガイモ、乳製品を食べていたが、山登りのガイドなどをして、収入がふえれば、いつの間にかコメをたくさん食べるようになった。住んでいる地域では、コメを栽培できないが、山を下って、コメを買いに行くという。つまり、コメがおいしいからそのような食生活に発展した。
少数民族の食もタイ族などは、コメが主食になっている。陸稲から水稲に変化していったのは、面積あたりの収量が多いこと。それが人をやしない、豊かになる方策でもあった。
陸稲を栽培するプーラン族の農業の手法は、焼畑農業だった。焼畑をすることで、土地を豊かにしていたのだ。まったく原始的な栽培においては、肥料は使用されずにすすんでいく。無農薬無肥料の栽培方法である。
インディカ米とジャポニカ米の違いは、インディカ米はコメ自体があまりおいしくないので、コメをうまく食べるために香辛料を使うカレーなどを開発していった。
ジャポニカ米は、おいしいので、結局それに対応する副食が、発達した。
この考察は、意外とおもしろい考え方でもある。
この本によれば、イネの野生種の25系統が赤米、白米1系統といわれ、コメにはもともと色や香りがついていて、その色、香りを淘汰して、白いコメにしていったのが稲作の歴史とされる。
イネの系譜から見れば、紫米は、モチ米で、調理の方法も洗う⇒甑(こしき)に入れる⇒鍋の水を熱して蒸気を当てる、という「蒸飯法」である。タイ族のパイナップルご飯は、紫色をしてもっちりして甘みがあり美味しい。
日本に目を転じると、コメの栽培の歴史は、北進にある。日本人は、なぜコメを主食に選んだか?
という質問に対して、「一度コメの味を知った民族は、決してコメを棄てていない」という。
日本は温暖なモーンスーン気候であり、コメを栽培することが簡単だったという背景もある。
また、ジャポニカ米は、インディカ米と比べて耐寒性を持っていたこともというより、耐寒性を持つものを育種していった。そして、日本の土壌が、酸性であることも耐寒性を持つオオムギやコムギが、酸性土壌には、稲と比べて、弱かったことも大きく普及しなかった要因でもある。北海道はコメの生産量が新潟県の次の第2位となっている。耐寒性の育種の成果である。
日本人は、コメの白さを重視していた。それは、コメへの思い入れや、神に捧げる食べ物として、大きなファクターになっていたのかもしれない。稲魂信仰につながる。古代から春になると山から「稲魂(うかのみたま)」という神様が田んぼにやってきて、農作の吉凶を見守り冬になると山に帰ると信じられていた。
コメの傑作は、寿司でありその寿司の起源は中国だった。日本では、ワサビがあり、それがサカナをナマ食にしても臭みがなくなり、細菌類の繁殖を抑制する。コメをおいしく食べる方法としての寿司がさらに発展していった。
この本を読んでいるとコメがどうやって歩んできたか。そして、コメがどのような方向へ進むかが、
ある程度の将来の姿を明らかにしているような気がした。民族の食として米が食べられるようになったが、コメの消費はどんどんと低下している現実をどう見るか?も問われる。 -
米をありがたく食べていない自分がばかみたいだな。
粳やハイブリッド米についても知らなかった。 -
米食や草食を考察するこの手の新書にはなんだか大抵「僕は米党ですけどね」的な著者のひとことが入る。いんだけど・・・。遺伝の考察をしながら「僕は二重まぶたの女性が好きですけどね」と言うような感じに似て・・・ないか。