鄭和の南海大遠征: 永楽帝の世界秩序再編 (中公新書 1371)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121013712

作品紹介・あらすじ

十五世紀はじめ、宦官の鄭和は永楽帝の命を承け、二万七千名の乗組員からなる大艦隊をひきいて、七回にわたり南シナ海、ジャワ海、インド洋を結ぶ航海を行い、ダウ船・ジャング船交易圏を明帝国の政治的ネットワークに転換する試みに挑んだ。明帝国の農本主義と海禁政策を採りモンゴル帝国以来の海と陸の大ネットワークから帝国を切り離し、中華秩序の再建を策したのである。鄭和の事跡を永楽帝がめざす世界秩序再編の視点で捉える。

感想・レビュー・書評

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  • 鄭和。

    中国史上1番有名な宦官であると思う。

    南海遠征を達成した宦官であるが、その前半生は不明であり、永楽帝の操り人形のイメージ。

    今回の本では、永楽帝のもとで懸命に働く宦官鄭和の印象そのままだった。

    外交官としての側面が大いにあるとは思うのだが…

    少し、鄭和などの中国史に出てくる人物でも勉強しようかと思う。

  • タイトルである「鄭和の南海大遠征」は一部であって、むしろ副題の「永楽帝の世界秩序再編」の方が内容に近い。宋代からの海のシルクロード形成、モンゴル帝国の興亡とユーラシア・ネットワークの再編を前史とし、明の対外政策の変容、東南アジアからインド洋にいたるムスリム商人のネットワークとの接続の中に「遠征」を位置づける。参考文献リストあり。

  • http://naokis.doorblog.jp/archives/Zheng_He_Ming_Voyages.html【書評】『鄭和の南海大遠征―永楽帝の世界秩序再編』 : なおきのブログ

    <目次>
    第1章 海のラクダの時代への転換と二つの「大航海時代」
    第2章 モンゴル帝国の攻防とユーラシア・ネットワークの変動
     1 草原からの衝撃
     2 一体化する海と陸の大動脈
     3 帝国の崩壊と切り離されるユーラシア
    第3章 大地からのうねりと中華秩序の再建
     1 農業帝国の復興と切り捨てられる海
     2 京かされる皇帝独裁体制と永楽帝の登場
    第4章 中華帝国の世界秩序をめざし陸・海に派遣された宦官たち
     1 広がる明帝国
     2 チベットへ、内陸アジアへ、東北へ
     3 鄭和は日本を訪れたのか
    第5章 時代の激浪と鄭和の生い立ち
     1 ユーラシア・ネットワークに組み込まれた雲南
     2 崩れるモンゴル帝国と「色目人」鄭和
     3 宦官としての地位を築いた鄭和
    第6勝 大海を渡った27000人の艦隊
     1 鄭和艦隊の乗組員の構成
     2 海の世界を驚かせた巨大艦船
    第7章 鄭和艦隊の航跡
     1 インド西海岸カリカットをめざして 第一回航海へ
     2 とんぼ返りの第二・三回航海
     3 ペルシア湾をめざす航海
     4 面として広がる第五・六回航海
    第8章 ジャンクによる壮大な海の時代の終焉
     1 北京遷都と艦隊派遣の中止
     2 萎む中華帝国と陸にあがった鄭和
     3 艦隊最後の航海と鄭和の死の謎
    第9章 大艦隊派遣を支えた造船業と航海技術
     1 世界一を誇った明代初期の造船技術
     2 航海を支えた航海技術と地理的知識
    第10章 「大航海時代」以前のアジアの海 鄭和艦隊を支えた海洋世界
     1 鄭和艦隊が用いた「海図」とインド洋・南シナ海世界
     2 中国商人の海域
     3 マラッカ海峡 東西の両交易圏を結ぶ水路
     4 インド亜大陸周辺の海域
     5 ペルシア湾・紅海海域と東アフリカ
     6 平和な海域と諸都市の繁栄
    あとがき
    引用・参考文献


    2016.08.21 現在の中国の海洋侵出を理解する上で、鄭和の大航海を振り返る必要はないだろうか?
    2016.08.28 借りる
    2016.09.06 読了

  • 1997年刊。著者は北海道教育大学教育学部教授。


     所謂コロンブスらの大航海時代に先立ち、世界史的には二つの大航海時代があったと著者は規定する。
     その一はイスラム世界によるものだが、もう一つは元~明朝にかけての中国発の大航海時代であると。
     本書は空前の陸上大帝国を創出したモンゴル帝国が陸のみならず、海のシルクロードを生み出し、それが、後の明朝の永楽帝、鄭和の南海大航海に繋がっていく様を解説していく。

     重要なのは①イスラム商人のインド洋(特に西)での展開と、②元朝以前=宋朝期から東南アジアに居住する華僑の展開。

     一方、なぜ欧米が近代化を達成し、中国が後塵を拝したかにつき、ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄(特に下巻)」などで論考されているが、①遊牧民との対決を回避できない(周辺の広大な草原地域のため海洋国家になり切れない東アジア中国の地政学的位置)と、②朝貢システムの持つ海洋進出規模の上限(際限なき損はかぶれない)、③朝貢システムを撤廃するくらいに海外進出の必要性はなかったこと(自給自足が可能なくらい豊富な国内生産力)が本書から伺えそうかな、との感。

     確かに本書は元明期のユーラシア交易論が基本であるが、鄭和に代表させた明朝期の宦官論にも言及があり、初期の明朝政権論にも目配せが効いていると言えそう。

     なお、東アジア交易(朝貢システム)でも、胡椒の産品としての重要性は西欧が求める場合とさほど変わらないよう。何故か?は向後の疑問として残しておく。

  • タイトル通り、鄭和の南海遠征が中心の本です。が、より大きなテーマとして、当時の中国からイスラム世界をつなげた、「ユーラシアの海のネットワーク」の姿を描き出すということをしている本ではないか、と感じました。空間的にも時間的にも「その時代の海」を描き出すことに成功していると思う。面白かったです。

  • 鄭和の南海遠征について「明帝国が取った海禁政策を世界史的枠組みの中に位置づけようと」して書かれたそうだが、背景や海上の交易ネットワークについてはあんまり掘り下げられていない。概要を知るには手頃か。

  • 残念ですね。
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著者プロフィール

1942年,東京生まれ.東京教育大学文学部史学科卒業.
都立三田高等学校,九段高等学校,筑波大学附属高等学校教諭(世界史担当),筑波大学講師(常勤)などを経て,現在は北海道教育大学教育学部教授.
1975年から1988年までNHK高校講座「世界史」(ラジオ・TV)常勤講師.

「2005年 『ハイパワー世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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