物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書)

  • 158人登録
  • 3.33評価
    • (4)
    • (12)
    • (20)
    • (6)
    • (0)
  • 21レビュー
著者 : 小倉貞男
  • 中央公論社 (1997年7月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121013729

物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • フランスの植民地になった頃からヴェトナム戦争までの時代は知って
    いた。なかでもインドシナ戦争からヴェトナム戦争にかけては少なく
    ない量の書籍を読んで来た。

    だが、それだけではヴェトナムの歴史を知ったことにはならない。なので、
    古代からホー・チ・ミンの死去までを扱った本書は良い教科書になった。

    抵抗に次ぐ、抵抗の歴史だ。その昔、ヴェトナムは1000年に渡り中国に
    支配されていた。だが、ただ属国に甘んじていたのではない。

    「世に皇帝を名乗るのは中国の皇帝のみ」なんだけれど、表向きは
    恭順を示しながらも国内では「皇帝」を名乗っている。しかも、定期的
    に抵抗運動が頻発する。

    当然のように中国に潰されてしまうのだけれど、それでも抵抗は止まない。
    しかも、中国国内から移住して来た人が抵抗運動の先頭に立ったことも
    ある。

    阿片戦争で中国の力が弱まったと思ったら、今度はフランスがやって来る。
    それは阿片戦争で中国から莫大な賠償金をせしめたイギリスを見て、「俺
    たちもアジアで一儲けしよう」とインドシナへの侵攻を始めたからだ。

    フランスによるヴェトナムの植民地化は中国による支配よりも過酷だった。
    植民地からは搾り取れるだけ搾り取る。「自由・平等・博愛」を唱えてフラン
    ス革命を起こした国とは思えないほどだ。

    そうして先の大戦の際は日本軍が南進し、フランス・日本の二重支配と
    なり、ヴェトナムは更なる過酷な時代を送る。

    終戦によって日本軍は撤退したが、フランスは再度インドシナを支配しよう
    と舞い戻って来る。そして、ヴェトナムの堪忍袋の緒が切れた。

    インドシナ戦争からヴェトナム戦争へ。国内に多大な犠牲を出しながらも、
    民族の独立を求める長い戦いを続けることになる。

    インドシナ戦争からヴェトナム戦争の期間については本書は割愛されている。
    この期間だけでいくつもの作品が書けちゃうくらいだもの。

    近代まで本当に抵抗に抵抗を重ねた歴史なんだな。だから、近代兵器を
    無尽蔵に使えたフランスもアメリカも、ヴェトナムから撤退せざるを得なく
    なったんだろう。

    確か以前にヴェトナム戦争についての作品を読んだ時にも書いたと思うの
    だが、インドシナ戦争もヴェトナム戦争もイデオロギーの戦いではなく、民族
    としての独立を確実にする為の戦いであり、ヴェトナムの人々の執念なの
    だろう。

    それがよく表れているのが1945年9月2日に行われたホー・チ・ミンによる
    ヴェトナム独立宣言だろう。その一部を引く。

    「われわれヴェトナム民主共和国臨時政府の閣僚は世界に向かっておご
    そかに宣言する。ヴェトナムは自由な独立国になる権利があり、事実、
    すでにそうなっている。全ヴェトナム人民はその自由と独立を守るために、
    すべての物質的、精神的力を動員し、生命と財産を捧げる決意である。」

    気の遠くなるような時間を他国の支配下にありながら、あきらめることを
    せずに、したたかに抵抗を続けた国はヴェトナム戦争後の経済制裁を
    も乗り越えたんだ。

    フランスもアメリカも、ヴェトナムの歴史をもう少し知っていたら引き際を
    見極められたかもしれないね。

  • 複数の人物史をベースにしてベトナム史を描いている。ベトナムを物語の国と捉え生活感たっぷりに描く手法はベトナムのイメージを掻き立てるが,章タイトルの人物のエピソードから離れるとわかりにくくなる難点があってなんともいえない。積まれた新書を消化するキャンペーン⑥。

  • ベトナム

  • ヴェトナムの歴史を古代から現代まで網羅した通史書。広く浅く。とはいえ見慣れない東南アジアの知識は難しい。旅行前の勉強に役立った。

  • 公園で朝から体操をするおばさん,おじさんを見て感じた,ベトナムの人々は,強靭で打たれ強くエネルギッシュだと。それもそのはず,その歴史を知れば,納得できる。陸続きの中国の支配が1000年も続いた,その後は,フランス帝国主義による略奪,日本軍の侵略,そして1970年代まで続いた大国アメリカとの戦争。過酷な歴史を生き抜いてきた人々の祖先が,今のベトナム人だ。

    この本で,その歴史を時間を追ってかいま見ることができた。

    なお,ベトナム人の平均年齢は,20代らしい。老人社会の日本とは大違い。

  • ヴェトナム旅行の計画があり、その前の事前教養として本書を拝読。ヴェトナムという国の成り立ちがどのように作れれてきたかという大枠に骨格は理解できました。が、他の人が指摘しているように物語という割にはそれほど物語性もなく繰り返される権力者の隆盛、腐敗、革命といった流れや覚えにくい登場人物の名前なども相まって到底記憶できませんでした。また、ヴェトナム戦争に以降の近現代についての内容はほぼ省略されておりその点についても期待していただけに肩透かしにあった印象でした。近現代に限って言えば、池上彰氏の「そうだったのか!現代史」を読んだほうがよほど役立ちます。

  • 読了。

  • ヴェトナムの歴史を概観した本。範囲は中石器時代末期(紀元前2万年から2万5千年前)のソンビ文化、その後のホアビン文化の洞窟文化から始まる。終わりはホ・チ・ミンらによるヴェトナムの独立宣言(1945年9月2日)あたりまでで、ヴェトナム戦争は範囲に含めていない。特徴としては題名の「物語」にもあるように、その時代の特徴をなす人物を取り上げ、その人物の軌跡を中心に描くことにより各時代を解説している。また、ヴェトナムの歴史を北方面、中国との関わりであるA軸と、南方面、東南アジアの各国(現在のタイ、カンボジア、ラオス)との関わりであるB軸という二つの軸から見ようとしている(p.6ff)。本書は4章に分かれているが、おむね第1章・第2章がA軸、第3章・第4章がB軸にあたっている。

    考古学的資料の後、本書は伝説上のヴェトナム建国者であるフン・ヴォン(雄王)の話(紀元前2880年頃)から始まる。ヴェトナムは北部、現在のハノイを中心とする紅河デルタ地域に発展し、その後、南へ勢力を拡大していく歴史だ。その位置からして、常に中国と抗争を繰り広げている。対中国の歴史で書かれているものは、ヴェトナムの独立以降、中国王朝が侵略しヴェトナムを支配して圧政を敷き、それに対するヴェトナムの反抗を行い、中国王朝の力が弱まったあたりでヴェトナムが再度独立を取り戻し、次の中国王朝が成立すると再び侵略・支配される。実にずっとこの繰り返しだ。漢と戦ったチュン姉妹、宋と戦ったリ・トン・キエト、元と戦ったチャン・フン・ダオ、明と戦ったレ・ロイ(p.192)。こうした中でヴェトナムに身についたのが、中国王朝に対する面従腹背だ。中国王朝による支配を退けたとしても、ヴェトナムには中国王朝そのものを打破して中国を支配するだけの力はない。対等な国力どうしの争いではない。そこでヴェトナムは、力を示し自治や独立を認めさせる形で中国王朝の支配に封ぜられる道を選ぶ。相手が攻撃してくれば粘り強く反抗するが、そうでなければ自ら行動を起こすことは少ない。こうして抗争の後に恭しく使節を送るような、巧みな外交を繰り広げてきた(p.70, 88f, 121f, 129f)。

    中国との関係で見れば、紅河デルタ地域は実に守りにくい土地だ。国境線からハノイまでは約130kmほどしかない。しかもヴェトナム王朝を担い、現在も支配民族であるキン族はハノイを中心とする40~50km周囲に住んでいる。国境近辺には高地、山岳民族が居住している。こうした山岳民族が中国側につけば、あっという間にハノイまで攻め込まれる図式である(p.168f)。こうしたハノイの守りにくさが、南進への動機を生んでいた。だが南方は南方でチャンパ(占城)という有力勢力がおり、抗争を繰り広げていた。南方へは1471年、レ・タイン・トン(この治世はヴェトナムの黄金期と呼ばれる)によるチャンパ征服によって進出する。南進は15世紀に始まり、本格的な支配は17世紀となる(p.163)。

    しかしこのレ王朝が終わって1572年、マック(莫)氏が実権を奪うと、ヴェトナムは南北に分かれた内乱の時代になってしまう。この過程で南部に拠点をおいたグェン・フック・アインが、シャムとフランスという外国勢力を頼みにしたことが、その後の植民化の伏線になる(p.187f, 201f)。いわば、内乱に乗じて他国勢力につけ入れられた形だ。こうしてフランスによる植民地化がなされることになる。フランスによる支配には各地で植民地抵抗運動が起こった。特にインドシナ総督ポウル・ドゥメの圧政(p.284-295)に対するものなどが大きいが、これらの運動は各地域に分断されていたため、成功しなかった(p.281f)。こうして、ホ・チ・ミンを中心とするヴェトナム独立運動が国全体で組織されていくことになる。第二次世界大戦ではフランスと並んで日本による植民地支配もあったが、日本の敗戦からヴェトナム独立宣言までの行動の素早さは、入念に組織化・準備されていたことを伺わせる。日本のポツダム宣言受諾が8月14日で、ヴェトナム独立宣言はそれから一ヶ月も経たない9月2日だ(p.346-348)。

    ヴェトナムの政治機構を始め社会構造は、儒教を中心的規範であることを初めとして、中国の影響を当たり前だが大きく受けている。だが単に中国のコピー国家とみなせるわけではない(p.90)。稲作の国であるヴェトナムは、農村の村落共同体(「ラン」と呼ばれる)を基本単位としている。それは、ディン(亭)という集会所を中心として数十の家が立ち並び、長老により活動が指導・管理されるものだ。いかに上部の支配組織が変わろうとも、民衆レベルでヴェトナムを構成したのはこうした村落共同体であって、ここにヴェトナムの歴史の原点がある(p.137-146)。
    「ヴェトナムは社会主義の国だというが、社会の基盤は「むら社会」である。「むら社会」は民主的な運営を行ってきたので、いまもなお、機能している。ヴェトナムは「むら社会」主義の国なのである。社会主義の発展もこの「むら社会」のうえに成り立っている。」(p.356)

  • ふとベトナムに興味を持ち、例によってその国の歴史を全然知らないことに思い当たって選んでみた通史の本だが、厳しかった。
    2000年に渡る一国の歴史を一冊に詰め込んでいるのだから無理もないが、話の盛り上がりもなにもなく、中国との曲折と王朝の交代と反乱が延々と続くばかり。馴染みのない国の、馴染みのない似たような名前が全然頭に入らない。若干既視感のある、フランスがやってきてからの話はあっという間に終わってしまい、ベトナム戦争もほとんど語られず。ベトナムの歴史の中でいくつか馴染みのポイントを見つけた上で、全体を俯瞰するにはいいかもしれないが、最初に読む本としては選択ミスだった。別の本探そ。

  • 11月にハノイ(Hanoi)に行く予定なので、歴史を勉強してみる。1000年間の中国支配。ベトナム人によくあるNgyuen(グエン=漢字では「阮」)。中国支配から独立した後のグエン王朝は繁栄しましたが、18世紀から100年間のフランス植民地時代、そしてベトナム戦争。その間もずっと独立戦争しています。ようやく平和に生活できるようになったのは、ここ40年ぐらいのことなんですよね。アメリカの審査官や科学者にベトナム人が多いぐらいですから、ベトナム人(9割がキン族)は、本来優秀な人たちなのでしょう。 ベトナム訪問が楽しみになりました。

全21件中 1 - 10件を表示

小倉貞男の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
J・モーティマー...
有効な右矢印 無効な右矢印

物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書)を本棚に「積読」で登録しているひと

物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書)の作品紹介

ヴェトナムは一億人の国になろうとしている。ヴェトナム戦争では大きな犠性を払いながら独立を堅持、経済成長のダイナミズムは二十一世紀のヴェトナムの発展を約束している。このエネルギーはどこから生まれるのだろうか。ヴェトナム人のこころ、民族の象徴として親しまれている建国の王フンヴォン(雄王)から、独立の指導者ホ・チ・ミンに至る歴史群像を語り、あくなき抵抗と独立の戦いに勝ち抜いてきた逞しい国民性の根源を探る。

物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書)はこんな本です

ツイートする