日米コメ交渉―市場開放の真相と再交渉への展望 (中公新書)

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著者 : 軽部謙介
  • 中央公論社 (1997年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121013774

日米コメ交渉―市場開放の真相と再交渉への展望 (中公新書)の感想・レビュー・書評

  • 大詰めを迎えるTPP交渉だがこれと似た交渉が行われたのが1993年のガット・ウルグアイラウンドの日米コメ交渉だった。協議開始から6年、期限とされる12/15に向けてジュネーブのガット本部では交渉が繰り返され多くの分野でメドがつき始めていた。しかし、コメは違った。

    多国間交渉と言いながらそれぞれ2国間交渉の積み重ねで成り立っている。この時の焦点が日米のコメ市場開放だった。関係者の多くはコメは交渉期限ギリギリまで決着がつかないとみられていたが10/13日に日米が合意したとのスクープが流れた。「日本は関税化を認めない代わりに、ミニマムアクセスを受け入れる。」

    当時の首相は細川護煕、一方のアメリカは1月にクリントン政権に変わったところだ。米国の関税交渉は通常USTR(通商代表部)が表に出るが、農業分野では生産者団体と密接な関係を持つ農務省が前面に出る。米国でも農業分野には手厚い保護が与えられており、多大な補助金が交付されている。消費が減った牛乳を支えた結果が大量に消費されるチーズを生んでいる。

    クリントンは国内景気の回復を最大の公約にしており、「輸出を成長のエンジンにする」ためにラウンドの成功は必須のものだった。多くの人は日米欧がラウンドを主導するとみていたが、コメを抱える日本は何らのリーダーシップを示さずひたすら防御に徹していた。

    米国は着々と日本のコメを研究していた。そしてコメ交渉を最後に残し他の分野を決着させ最後にコメ開放かラウンドから去るかを突きつけると言う戦略をとった。ブッシュ政権のとった「例外なき関税化」を捨てミニマムアクセスを認めさせるという方向に舵を切る。一方で通商法301条をちらつかせ、コメ開放を認めないなら対抗措置として日本製品の輸入に制裁を科すと揺さぶりをかける。

    この年の特殊事情が冷夏によるコメ不足で、緊急輸入したコメは259万tとコメ開放反対派には大きな打撃を与えた。農水省は8月末には「関税化の猶予を条件にミニマムアクセスの受け入れやむなし」の結論を出した。関税化を認めるといくら高率であってもいつかは税率が下がる。それに為替によっても実質的な税率が変わるので政府としては認められない。ラウンドを壊さずに妥協する方法はミニマムアクセスを受け入れるしかなかったのだ。国内向けには政府は最大限の主張をしたが受け入れられず、やむなくガット事務局に調停を依頼する。そこで出てきたミニマムアクセス案を受け入れるという手順が重要視された。同時に進めていた政治改革法案成立のためにはコメ交渉の実態を明らかにして政治的な混乱を生み出すことはできなかったからだ。

    10月のスクープについて米側は認めているが日本政府はこの合意を認めていない。過去に国会で拘束力はないものの3度にわたってコメの完全自給体制維持が全会一致で決議されている。結局政府は原則的には関税化を受け入れながらも、特例措置という文言を盛り込むことで国内的には関税化の導入は交渉により回避できるという言い訳を作った。米国やガットは特例を認めたのではなく、あくまで関税化の実施を先延ばししたと解釈している。条約が英文と日本語で違う意味に取れるというのは日本の外交の得意技だ。

    ラウンド受け入れに伴い用意された対策費は6兆円、そのうち3兆円が農業農村整備事業に使われた。これはそれまで公共事業費で対策されたものと同じだ。1兆円の構造改革費もあるが構造が変わったとは思えない。

  • 1993年に日本はコメの自由化をしたのか。当時の日本にとっては大英断だったのではないだろうか。自民党にとっては票田なわけだ。
    そして、アメリカは民主党でクリントンだったから変化する必要があったのだろう。

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日米コメ交渉―市場開放の真相と再交渉への展望 (中公新書)の作品紹介

一九九三年十二月にウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)がまとまったが、この交渉は、コメの市場開放という問題を抱えていたため、それまでのどの国際交渉よりも日本で注目を集めていた。部分開放という形で一応の結着をみたコメ交渉だが、そのプロセスは、当時もその後も殆ど明かされていない。アメリカは何を求め、日本はどう応じたのか。この経緯を、直接取材とアメリカ政府の内部文書から探り、再交渉への視座を提供する。

日米コメ交渉―市場開放の真相と再交渉への展望 (中公新書)はこんな本です

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