聖書神話の解読: 世界を知るための豊かな物語 (中公新書 1446)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121014467

作品紹介・あらすじ

かつて、科学技術も情報処理も未発達だったころ、人々はどのようにして、自分の周囲の事象を受けとめ、その仕組みを理解しようとしたのだろうか。そんな時、最も有効で普及可能だったのは、神話という物語を利用することだった。そこで語られるさまざまな事蹟は、自らと森羅万象とをつなぐ手がかりとなったのである。本書は、「本の中の本」とも呼ばれる聖書に描かれた事柄を、古代人が世界を映した神話として再読する試みである。

感想・レビュー・書評

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  • ブックオフでたまたま見つけた本でしたが、面白く読めました。
    本書は「神話とは本来空虚な絵空事などではなく、れっきとした生存のリアリティーを生み出す物語である」とし、神話創造の観点から聖書の世界を読み解くことを主眼としています。
    新約聖書は旧約聖書の内容を成就するものとして捉えられるようです。これを「予型論」というのだそうですが、本書は聖書神話の構造を予型論の立場から考察しています。旧約聖書は天地創造からアダムの失楽で始まり、新約聖書はキリストの贖いを経て千年至福の到来で終わります。イエスは「わたしはモーゼの律法を破壊しにきたのではなく、成就するためにきた」とことあるごとに言っているそうですが、本書を読んで思ったのは、新約聖書は旧約聖書の続編であり、新約聖書はその伏線回収ではないかということ。例えば、イエスの復活は闇からの復活であり、天地創造の前の混沌とした闇に関連付けられます。

    著者の西山清さんの専門はイギリスロマン文学。クリスチャンではないし、聖書学の専門家でもありません。ただ、ロマン派の文学的特性を考えるうちに聖書や宗教一般について調べてみようと思い、調べてゆくうちにさまざまな宗教体系の母型となる神話に特有の思考パターンが見えてきたとあとがきにありました。それもあって、本書は余分なディテールにこだわることなく、壮大な聖書の神話世界を読み解く面白さが味わえる本となっています。
    ディテールといえば、聖書にはさまざまな特殊用語が登場し、ヘブライ語で書かれた聖書はギリシャ語、ラテン語など様々な言語で翻訳され伝播しました。英文学者である著者は、特殊用語を全て「インド・ヨーロッパ語族の特性を寄せ集めたような便利な性格を持っている」英語をベースに解説しています。例えば、犠牲”sacrifice”はラテン語の神聖な”sacer “と生じさせる”facere”ことであり、対象を神聖化することが語源であると説明します。英単語の語源が聖書で説明されているのは興味を持ちました。

    本書は学術書と物語が組み合わされたような新書で、娯楽性も高いと思います。お勧めの新書です。

  • ふむ

  • 一貫した科学的態度でもって構成された著作なのか、素人の当方には判断し兼ねるが、なかなか面白い考察であることに相違なく。
    こういう知識があると色んな見方も変わってくるんだろうとは十二分に自覚す。
    教会の形(方向含めて)にはちゃんと意味がある、というかどこも同じということ。これを明確に再認識できただけでも収穫あり。

  • キリスト教の旧約・新約聖書に出てくる主要な神話を,著者の英文学の知識を織り交ぜて解説しており,楽しく読めた.神学の専門家の解説は分かりにくいことが通例だが,著者が敢えてこの分野に挑んだことは素晴らしい.

  • 2009 1/14

  • 図像学等の知識よりも文学のほうに話を持っていきやすい。まあ、これが悪いわけではないが、少し、読みづらくはあった。しかし、それなりの刺激にはなった。で、著者自身語っているように曰く「聖書学の専門家ではない」との言葉の通りに、随所に?マークが出てくるところがある。で、この個所を覚えていないのが私の悪いところ。

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著者プロフィール

西山 清 (にしやま・きよし)
早稲田大学名誉教授
元イギリス・ロマン派学会会長

専攻 イギリス・ロマン派文学
著書 _Keats's Myth of the Fall_(北星堂書店)
『聖書神話の解読』(中公新書)
『イギリスに花開くヘレニズム』(丸善プラネット)
訳書 『妙なる調べ』(E・R・ワッサーマン著、桐原書店)
『エンディミオン』(J・キーツ作、鳳書房)
『アイルランドの怪奇民話』(W・B・イェイツ編、共訳、評論社)

「2022年 『キーツ: 断片の美学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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