数学は世界を解明できるか: カオスと予定調和 (中公新書 1475)

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  • 中央公論新社
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  • / ISBN・EAN: 9784121014757

感想・レビュー・書評

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  • 105円購入2013-03-15

  • ◆数式は用いられないが、高校物理の力学系を含む、自然システム工学における関係性を数学的に、また科学史的に解読しようとする。辿り着くのはカオス論のとば口◆


    1999年刊。
    著者は津田塾大学教授(力学系理論)。

     プトレマイオスの天動説に始まり、落体法則と力学から万有引力、あるいは振動など、高校レベルの物理学の初歩と、これを一般化・抽象化する数学手法を並列的に説明しつつ、さらに、近代的科学思想の功績と共に、それでは判然としない様々な事象(生態学、気象学、多体問題など)を提起して、カオス論のとば口に立ち至らせる。
     本書を概括すればそういうことになるだろう。


     確かに数式では叙述されないが、決して簡明な書ではない。
     その中で、自然現象を解読する数学的手法の史的変遷として、幾何学的⇒解析学的⇒統計学的という方向性を感じ取ることは許されよう。

     その上で、本書においては、カオスの意味が印象的だ。
     実はカオスと言われている現象も多義的ではないか。
     すなわち、①非常に単純な線形方程式を数限りなく繰り返すと、初期値の誤差から予測不可能な事態に陥るという意味(生態系)、②あるいは、初期値の変動やパラメータ値の変動で、安定周期解になったり、カオスになったりなど、構造自体の多様な分岐現象の意(多体運動?)、さらには、③影響を与えるパラメータが多すぎて、モデル化などパラメータ数減少によって近似解を得んとしても、それすら長期予測に親しまない意(気象学)なども含まれそう。

     さらに、本書の特徴、あるいは著者の専攻によるのだろうが、自然システム工学(力学系もシステムの一例なんだろうなぁ)、自然システム・シュミレーションに親近性がある、あるいはそこに重点を置きすぎている点だ。

     本書においては、多体問題を広く言及しながら、いわゆる複雑系が斬りこんでいった、経済現象、価格理論には全く言及されない(ただし悪い意味ではない。あくまでも特徴)。
     もとより、文科系の対象世界、すなわち経済社会や、より広義の人間関係・社会関係にも応用できるのだろうが、だとすると、その結論は、それらもまた自然システム工学と同様に、予測不可能となりそうなんだが、この点は果たして…。

  • 170723 中央図書館
    物理法則、カオスやフラクタルの概要が解説されているが、それほど変わるところがない。

  • 自分が今まで読んできた本の中では、固い感じの本。
    幅広に紹介されているのだが、読み物として面白いかというと、それぞれの紹介がさらっとしていて、教科書っぽい書きぶりに、のめり込めなかった。。 

  • 正直数学は苦手なので
    本のかなりの部分は理解することは
    かないませんでした。
    こう思うと、勉強をそれなりにこなすことって
    大事なことなんですよね。

    ですが、日常には
    結構数学がある、ということも
    この本で分かったように思えます。
    そう、食う食われるの関係も
    実はグラフで示すことができること…

    それとエントロピーは
    すごく身近に感じました。
    私の部屋のエントロピーは増大の一方ですね(笑)

  • 数学は世界を解明できるか。
    刺激的で好奇心をそそるタイトルであるが内容はいまいちです。

    まぁ、副題が「カオスと予定調和」ということからしても内容は推して知るべしといったところだろうか。

    ロジスティック方程式からカオスを導入し、三体問題へつなげ、基本的な3つの物体の問題すら解析的に解けないというのに、ましてや明日の天気なんか確実にわかるわけないだろう!

    という巷にこの手の本はゴマンとあります。。。

    中途半端すぎてコメントしにくい。

  • 数式を避けようとして返って記述が難しくなってしまったような印象を受けました。

    これだと  ちくま学芸文庫 『カオスとフラクタル』 山口 昌哉著の方が記述が簡明であるように思います。

    いつか同著者の別の本も読んでみたいものです。

  • 数学・科学の歴史とカオス・フラクタルとかについて記述されている本。
    この著者の専門分野が力学系理論らしいので、カオスをテーマに小洒落たタイトルで本を書いてみたかったのだろうか?と邪推してしまう。

  • 文系脳の自分ではやっぱりカオスが理解できなかった。タイトルに引かれて読み進めていくうちに、バタフライ効果って知ってる自分自身に数学は世界を解明できないじゃんと突っ込んでしまった。著者の言う通り、数値化された世界っていうのは、世界の一面しか表していないんですね。今後数学的アプローチでもっと深く世界を表して、普通の人にも分かるようになればと期待しております。カオス理論等は再度何かの本でチャレンジだ。

  • [ 内容 ]
    天動説は数理モデルを構成して数学的に天体運動を説明する試みである。
    ガリレイは地上運動にも数理構造があることを示し、ニュートンはそれらを土台に近代的力学を創った。
    数学の発展がそれを可能にした。
    現象の基礎にある法則とその数学的表現である微分方程式が示すのは単純さと美しさをもつ予定調和的世界である。
    しかし、コンピュータの出現は自然の内包する複雑さを明るみに出した―。
    現代科学思考の到達点を平易に叙述。

    [ 目次 ]
    1 未来を予測する―科学の始まり
    2 システムとモデル化
    3 単純な法則と美しい現象
    4 複雑さこそ単純さの源
    5 揺らぎから生じる新しい制度
    6 生態学モデル
    7 単純さから生じる複雑さ、カオス
    8 日はまた昇る?

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