脱藩大名の戊辰戦争: 上総請西藩主・林忠崇の生涯 (中公新書 1554)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121015549

作品紹介・あらすじ

戊辰の戦火は間近に迫っていた。徳川三百年の恩顧に報いるに、今をおいて時なし-佐幕一途の志に燃えて上総請西藩主の座を捨てた若き林忠崇は、旧幕臣の集う遊撃隊に参加し、人見勝太郎、伊庭八郎らの同志を得る。箱根、小田原で東上する官軍と激突。その後も奥州各地を転戦して抵抗を続けた。戦乱に死すべき命を長らえた忠崇は、官史、商家の番頭、神主など職を転々とし、昭和十六年、九十四年の生涯を閉じた。

感想・レビュー・書評

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  • 正しく「事実は小説よりも奇なり」である…大きな時代のうねりの中では、余りにも瑣末な活動だったかもしれない彼らの闘いかもしれないが、「こういう闘いをした人達が居た」ということ…「記憶したい」という気がした。或いは極最近登場した姉妹編の『ある幕臣の戊辰戦争』以上に強い余韻が残った作品だった…
    陣屋から整然と、領民達に見送られて出陣する場面…何故か涙が…

  • 唯一の脱藩大名かつ昭和まで生きた最後の大名 林忠崇について描いた作品。譜代大名かくあるべし、と思わされる徳川家への忠義、戊辰戦争での戦いの動きや心情の変化など丁寧に描かれていて面白かった。林家再興運動のくだりはちょっと冗長に感じたが、昭和に入り、臨終前に尋ねられた辞世の句のくだりは涙なしには読めなかった。

  • 幕末から明治にかけての戊辰戦争に,上総請西藩(現在の木更津付近)の藩主林忠崇が,なんと自ら脱藩して幕府側に参戦,小田原や磐城を転戦した.
    朝廷側は当然激怒するが,幸い死罪となることはなく,ただ,身一つで世の中に放り出される.旧大名は全て華族に叙せられた上で子爵以上の位を得るが,もちろん林一族のみは例外.
    その後,かつての家臣一族の奔走や親戚筋の小笠原一族の助けを借りて,甥がようやく男爵に叙せられる.本人は昭和16年に94歳の天寿を「最後の大名」として全うする.
    とある理由で忠崇は徳川家に大変な恩義を感じており,また,徳川家との関係を誇りに思っていたことが強烈な佐幕姿勢につながるのだが,若さ,および,育ちがいい(お殿様だから当然)ことが,脱藩という奇天烈な行動をとったことに,また転戦中に優柔不断に陥ったことにつながり,だからこそ命を落とさずに済んだとも言える.
    「琴となり下駄となるのも桐の運(忠崇の俳句)」
    なんと数奇な人生か.

  • 朝敵となった徳川家に殉ずるべくなんと大名自ら脱藩。戊辰戦争を戦い降伏、昭和16年94歳まで生きた上総請西藩主・林忠崇の生涯を描く。

    幕末、明治維新の頃。薩長の新政府側に立ったもの徳川家に従った者、それぞれ藩の数、志士の数だけドラマがあるが、本書の主役林忠崇ほどのドラマチックな生涯はないだろう。
    大政奉還、彰義隊の頃、藩主自らが脱藩したという史実。箱根、小田原から奥州各地を転戦し降伏。長い流転と窮乏の日々。

    NHKの「歴史秘話ヒストリア」でも取り上げられていた。

    最近、敗者の側から見た明治維新がマイブーム。とかく歴史の奥に埋もれそうな人物に光をあてた筆者、この作品も良くできています。

  • テレビで見た!
    テレビとおんなじ内容
    テレビは分かりやすい
    2019.8.12
    さて、この作品に触発して伊庭八郎を読んだ
    所詮お殿さんゆえの朝令暮改も感じつつ
    青年期の激情のため苦労もしたから許す
    (何様!)

  • 直木賞作家による歴史作品

  • 大名自ら脱藩とはどんな状況だろ?と読む前から楽しみだった一冊。凄まじい人生だなあと感動しました。あと、林忠崇が最後の大名だったんですね。

  • 前から書名は見かけていて気になってた本。上総請西藩の知名度は非常に低いけど、藩主自ら脱藩して新政府に抵抗し、戊辰戦争でただ一藩のみ改易された藩。その林忠崇は明治になっても一介の士族の身分で苦労をしたが、かつての藩士たちの奔走によりやっと華族の冷遇を得て、昭和の世まで生きた。この本が書かれなければきっと埋もれてしまったであろう史料を掘り起こされてるという印象。参考文献に「未翻刻」とかが多い。戊辰戦争やそれに続く時代のことが、違った切り口で見えてくる。

  • とてもかっこいい生き方をした、林忠崇という大名の物語。
    昭和16年に没したときには、生存する最後の大名だったそうだ。
    晩年の逸話にもグッとくるものがあります。老いてもこういう生き方をしたいものです。

    [09.11.12]

  • 分類=幕末維新期・戊辰戦争。00年9月。

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著者プロフィール

中村彰彦

1949年、栃木県栃木市生まれ。東北大学文学部卒業後、文藝春秋に勤務。87年に『明治新選組』で第10回エンタテインメント小説大賞を受賞。91年より執筆活動に専念し、93年に『五左衛門坂の敵討』で第1回中山義秀文学賞、94年に『二つの山河』で第111回直木賞、2005年に『落花は枝に還らずとも』で第24回新田次郎文学賞を受賞。また2015年には第4回歴史時代作家クラブ賞実績功労賞を受賞。小説に『鬼官兵衛烈風録』『名君の碑』『戦国はるかなれど』『疾風に折れぬ花あり』、評伝・歴史エッセイに『保科正之』『なぜ会津は希代の雄藩になったか』など多数。

「2020年 『その日なぜ信長は本能寺に泊まっていたのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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